エアリアの家
エアリアの家は、風の国の外れの森の中にある。ちょっとした田舎の屋敷で、結構な広さだった。戸をたたくと、エアリアが出てきた。巫女達にエレメニルの歴史を教えているところだった。エアリアが作ったおそろいのワンピースを着ていて可愛らしい。巫女達は言葉は話せるが、一般常識や歴史、魔法のことなどあまりよく分かっていなかったらしい。エアリアはうちで引き取って正解だったと首を振っている。チェイニは何をしていたのだろうか。レイドは狩に出かけているらしい。夕食には帰ってくるので一緒にどうかと誘われた。
ウェルたちはエアリアの家に泊めてもらう事になった。外国と交易の盛んな水の国で準備してから船に乗るつもりで、船の到着より早めに出たのだが、結局その前に二泊してしまった。水の国で買い物する時間はあまりないだろう。
ウェルは故郷の隠れ里を訪れたことをエアリアに報告した。エアリアはそうですかと微笑み、また今度一緒に行きましょうと言った。リマが現れたことも話すと興味を持ったようだった。以前にウェルとフェイを襲ったリマのことはエアリアもウェルから聞いている。ルマの孫娘の存在はウェルに聞く前から知っていたが、直接面識はなく、強力な魔力を持っていることも知らなかった。エアリアは一度会ってみたいらしい。
夕飯はエアリアが作ったシチューと朝に焼いたパンを頂いた。ウェルはフェイの屋敷の料理がお気に入りだったが、エアリアの料理もなかなかすばらしいと思った。レイドはエアリアのところで狩をしたり、力仕事をしたりしているらしい。意外に家の仕事も好きで、料理も時折する。本もよく読むらしく、外の世界のことも知っていた。
「どこかの国に傭兵や警備で雇ってもらうというのもあるし、冒険者でも腕があれば生活できるらしいね。ジロもそうしていたらしいから・・・」
「魔力も失ったのに、冒険者なんて・・・少し心配ですね。フェイ、どうかウェルのことをよろしくお願いします」
レイドは世界地図をウェルにくれた。以前にレイドの里に滞在した旅人に写させてもらったらしい。レイドはウェルが旅に出ると知って一部写してくれていたのだった。
楽しい晩餐の後、ウェルは二階の客間で床に就いた。ウェルは少し疲れていたようで、すぐにうとうとしてしまった。ウェルが妙な感触に目を覚ますと、ウェルのベッドに4人の巫女が入り込んでいた。ウェルは驚いて大きな声を上げてしまった。隣の部屋にいたフェイは起きていたようで、ノックもせずに駆け込んできた。
「これは・・・ウェル。どういうことかな」
「・・・いや・・・寝てたら知らないうちに・・・」
「・・・まあエアリアには黙っておいてあげるよ。ウェルもなかなか・・・(こういう奴だったのか・・・)」
「いや、違うんだ、待って」
フェイは冷たい視線と、どちらかというとあきれた感じのため息を残して戻っていった。一階で寝ていたエアリアとレイドもやってきたが、巫女達には布団を被せておいて戸口で対応した。寝ぼけて悪夢を見ただけだとごまかしたが、エアリア達には本気で心配されてしまった。
「君達どういうつもりだ」
「ウェル様には命を助けて頂きました。せめてものお礼にと、今晩安らかに眠れるように添い寝を」
リーダ格の偽ミーシャが答える。
「いや。かえって眠れないからいいよ。部屋に戻ってくれ」
まさかレイドも襲ったりしていないだろうね、と聞くと、エアリア様に消されますと笑っている。ウェルも呆れて首を振るしかなかった。次からお客の寝ている部屋に勝手に入ったりしたら駄目だよと釘を刺しておいた。その後ウェルはなかなか眠れなくなってしまった。
翌日、若干寝不足気味のウェルは目をこすっていたが、フェイもあまり眠れなかったようで、同じような顔をしている。朝食にエアリアの焼いたパンと、レイドの料理を頂いた。レイドの料理は卵焼きなのだが、表面は軽く焦げ目があるのに、中はやわらかい。味付けした具材が入っていて、とてもおいしかった。近くの牧場からもらっているミルクもよかった。
エアリアは今朝焼いてくれたパンをたくさんくれた。レイドは昨晩蔵書を探してくれたようで、船の中で読んでおくといいよと、貴重な外国のことを書いた本をくれた。こうしてエアリア達に見送られて、またフェイと飛んで水の国の港へと向かった。
「・・・で、いつの間に巫女達に手を出していたのかな。ここに来てからおかしな様子はなかったし・・・まさかチェイニを倒した時に・・・」
ウェルはフェイに胴を持たれて飛んでいる。
「いや!? 何もしてないよ。昨日寝てたら、勝手に入ってきていたんだ」
「・・・とても信じられないね。まさかチェイニのところで寝ていた本物の巫女達にも、変な事してないだろうね・・・」
「してない。してない。いや、本当です」
フェイのウェルを持つ手が緩んできている。
「ちょっ、ちょっとまって。落とすつもりじゃないよね」
「さあ。どうかな。ウェルが本当のことを言えば落とさないであげよう」
「本当です。嘘なんかついていません。や、やめてぇ」
ウェルはフェイの腕に思わず両手でしがみついていた。みっともないが、どうしようもない。フェイが本気で落とす気はないのはわかっていても。空を飛んでいる間ずっとこんな調子だった。ウェルが本気で怖がるのがだんだん面白くなってしまったようで、フェイは調子に乗ってふざけている。宙返り、急降下、わざと手を離した後キャッチ、一通りやられた。偽巫女達のせいで大変な目にあったウェルだった。港はもう目の前に見えている。




