勇者の旅立ち
港についたが、ウェルたちの乗る船はまだ着いていなかったので、フェイと食堂で休憩していた。昼ごはんには早いので、飲み物を頼んだ。港の近くということもあり、変わったお茶や、見たことのないものを食べている人がいる。ウェルは辺りを見ているだけでも退屈しない。フェイが色々と教えてくれた。
すると、クレフがやってきた。サーラも一緒にいる。
「やあ。ウェル。僕らも連れて行ってくれないか。旅に出るにしても、もう少し人数がいたほうが心強いだろう」
願ってもないことだが、ウェルは、クレフは水の国の賢者になるものだと思っていた。クレフはそんなつもりはないと笑っている。サーラも両親の許可はもらえたのか。サーラは一応ことわって出てきてはいるらしい。以前から遊びに行くと言っては家を何日も空けていたとか。大丈夫なんだろうか。転送の魔石も持っているので、いつでも帰れるのは帰れる。
すると、今度はランドがウェルたちを見つけてやってきた。
「ウェル。俺も連れて行ってくれ」
ランドは地の騎士の修行は一旦保留して、ウェルと旅に出るつもりらしい。地の騎士になる気はあまりないとか。
「ウェルに助けてもらわなければ、騎士も引退するところだったしな。それにこちらの方が面白そうだし、修行にもなるんじゃないかな」
ウェル一人で旅するつもりだったのが、フェイにサーラ、クレフにランドとずいぶん増えてしまった。このメンバーなら戦力としても相当なものだろう。そんな危険な旅は想定していなかったけれど、これなら道中盗賊や魔獣に襲われても心配なさそうだ。
「ウェル。私も連れて行かないか」
皆の視線がウェルの後ろに集まっているのを変だと思った瞬間に声をかけられた。銀髪の空の魔法使いリマだ。実はウェルが魔力を失ったことも、旅に出ることも知っていた。どうして知っているのかと聞くと、魔法で作った動物を使って、ウェルの周辺を探っていたという。チェイニのもとへは帰っていなかったようだ。・・・というかウェルが村を訪れた時もタイミングよく現れたし、ずっとウェルをつけていたのではないだろうか。
「チェイニはいなくなってしまったし、里に帰ってもつまらない。命を助けられたからという訳でもないけど、いろいろと役に立てると思うから」
これで6人。だんだん大所帯になってきてしまった。まさかトードやマイまで来たりしないよな、と冗談でフェイに言った。
「まあないだろうけど。ただ・・・トードの能力だと、私たちが外国にいても、飛んですぐに会いに来れるだろうけどね」
先のことだが、結局トードやマイとも外国で会うことになった。しかも1度や2度ではない。
しばらくすると、今度はクレフの横に誰か来ている。あれは・・・
「クレフ様。私もお供させて頂いてよいでしょうか」
「な・・・ミーシャ、何を言ってるんだ。君は水の国の王女じゃないか」
「いえ。私はミーシャ様ではありません。ミーシャ様のご依頼により、エアリア様に作られたミーシャ様の複製です。クレフ様のお供をして、お世話をするようにとミーシャ様から命を受けております」
しばらくクレフとミーシャで言い合いをしていたが、クレフも根負けしたようだ。
「え・・・と何て呼んだらいいんだ」
「何でも結構です」
「じゃあミーシャでいいだろう。ウェル、同行させても構わないか」
もちろんもう一人二人増えても構わないが、ミーシャの複製とやらが言っていることは嘘だろう。エアリアとはさっき別れたばかりだが、そんな話はなかったし、大体エアリアがそんなことをする訳がない。魔力のポテンシャルだってどうせ本物並みなんだろう。残念ながら魔力のなくなってしまったウェルにはもう分からないが。サーラはじっとミーシャをにらむように見つめている。フェイを見ると首を振って笑っている。リマがウェルに耳打ちする。やはり本物のミーシャらしい。クレフも、もちろん気がついているだろう。ランドは・・・どっちでもいいのかもしれない。どうやって説得したのか分からないが、水の国の王に許可を得たのだろう。でなければ今頃大騒ぎになっている。
こうして総勢7名となったウェル一行は、船に乗った。あまりにも人数が増えたため、一度に乗れない可能性もあったのだが、幸い船は空いていた。
ミーシャとリマの船酔いが酷かったが、無事ルーンの港に着いた。ここからウェル達の新たな旅が始まる。
どんな出来事が待っているのか、ウェル達は何を成すのか。エレメニルにその記録はまだないが、いずれ語られる日も来るかもしれない。
最後までお読み頂きありがとうございます。
楽しんで頂いて、どこか面白いところがあれば幸いです。
またこちらへ書かせて頂く事もあると思いますので、また見ていただけたらと思います。




