空の封印
「まってウェル。そんなもったいないじゃないか」
「その力のおかげで俺たちも助かったしなあ」
フェイとランドには、ウェルのやろうとしていることが理解できなかった。
「フェイ、ランド、空の魔法は便利だが、術者が自分の欲のために使えば、世界が無茶苦茶になってしまう」
「だけど・・・ウェルはそんなことはしない」
ウェルは苦笑して首を振った。
「フェイは見ていたはずだ。リマを拷問にかけようとしていたウェルを。フェイ。俺の中にはチェイニよりずっとたちの悪い奴もいるんだ」
フェイは言い返すことはできなかった。
「これが空の賢者達の遺志、わが師ルマの遺志でもある」
ウェル、エアリア、レイドは空の魔法の封印を始めた。ウェルの前の左手にエアリア、右手にレイドが立っている。儀式のようなもので、ウェルが何か呪文のようなものを唱えた。その後、エアリア、レイドがそれぞれ一言ずつ言った。一瞬辺りが光に包まれたような、強烈な衝撃があった。おそらくウェルの魔力に何か起こったのだろう。フェイ達が目を開けても、本当に閃光を見た時とは違い、普通に周りを見ることが出来た。トードやサーラには、ウェルの魔力が深く封じられて使えなくなったことがわかった。
ウェルはもう一人のウェルに呼びかけてみる。
『聞こえるか。約束だ。俺と入れ替わっていいぞ』
もう一人のウェルは返事をしなかった。おそらくウェルの魔力と一緒に封印されてしまったのだろう。ウェルはその場にいた人達に簡単に説明した。もう一人のウェルのことを。ウェルが力に近づいたことによって現れた、チェイニ以上に危険な人物を。
その日はもう遅かったので、トードは風の国へ行きませんか、と提案した。サーラは自分も風の国へついて行こうか少し迷っていたが、結局マチと転送の魔石でフレドのもとへ戻った。エアリアとレイドは、偽の巫女達を王達に見せるわけにはいかないということで、エアリアの家へチェイニの4人の巫女達を連れて行くことになった。トードが送ってくれるらしい。
「ウェル、あなたはどうしますか。とりあえず私の家に滞在してはどうでしょうか」
「ウェル、私のところでも構わないよ」
本来はエアリアに世話になるべきなのかもしれないが、姉の家とは言っても、一度も行ったことはない。巫女の世話もしなければならないし、エアリアも客が多いと大変なのではないだろうか。ウェルは、フェイのところに厄介になることにした。
「そうですか・・・また遊びに来て下さいね」
ウェルは大事なことを忘れていた。
「エアリア、俺はもう空の魔法は使えません。空の賢者としてふさわしい力がありません。エアリア、あなたを次の空の賢者に任じます」
ウェルは空の書をエアリアに渡した。
「エアリア、次の空の巫女はあなたとレイドの娘が継ぐでしょう。私にはそれが見えていました」
エアリアは少し驚いたようだ。そして少し笑って言った。
「ウェル。チェイニを倒した功績を称えて、あなたに空の勇者の称号を送ります」
「ウェル、これはベルゼフが使っていた空の剣だ。敵の攻撃魔法をかき消すこともできる。きっと君を守ってくれるだろう」
エアリアを賢者に任じたら、逆にウェルは勇者にされてしまった。レイドはウェルには少し大きいかもしれない長剣をくれた。柄のところにきれいな透明の宝玉がはめ込まれている。腰につけると引きずるので背負わないといけないだろう。ウェルは魔法が使えなくなったので、魔法を使う者と戦う時の護身用としてありがたい。
エアリアとレイド、巫女達はトードに送られていった。フェイは寝ているマイを預かり、ウェル達とトードを待った。グレイドやクレフ達も風の城に泊まることにしたので、一緒に待っている。
「ウェルはこれからどうするの」
フェイが尋ねる。エアリアのところならずっと置いてくれるかもしれない。フェイのところでもしばらくは滞在できるだろう。俺は・・・どうしたいんだろう。空の勇者、で思い出した父ジロの事。父はエレメニルの外の世界で戦った。故郷の隠れ里から出たことのなかったウェルだったが、里を出てから短い間にウェルはいろいろな物を見て、何人もの人に出会い、さまざまな経験をした。ジロの様に、エレメニルの外の世界へ出てみるのも面白いのではないだろうか。
「旅に出ようかな・・・と思ってる」




