四人の巫女
ウェルは四人の偽者の巫女に聞いた。
「本物の巫女達はどこだ」
偽の水の巫女らしき少女が答えた。
「この奥です」
奥の部屋にはとんでもないオブジェがあった。ウェルも驚いている。丸い水槽につかっている少女。台の上で固まって微動もせず、人形かと見紛う少女。空中に浮いているマイ。皆一糸もまとわない産まれたままの姿だ。ウェルは内心どぎまぎしていたが、今はそれどころではないし、平静を装っていた。牢のような物の内部には、火の杖が転がったままだった。そこにサーラが入るはずだったのだろう。
「どうすれば助けることが出来るんだ」
偽の巫女達は知らないようだった。ウェルはマイの周りを覆っているいくつかの半透明の三角形に気がついた。それを魔法で消し去ると、マイは落ちてきた。
ウェルは受け止め、チェイニの部屋にあったベッドにのせてから、偽の巫女達に、服を着せてやって欲しいと言った。次に水槽と水を消し去って水の巫女らしき少女を、台座を消して地の巫女らしき少女を助けた。水槽の中の水は生きているようで、今のウェルには問題ないが、危険な代物だった。
動かない少女はどうしたものかと思ったが、巫女のものとは違う魔力を台座に感じたウェルは台座を消し去った。受け止めた少女は意外に軽く、硬かったが、次第に元の姿へ戻っていった。
この部屋にあったオブジェクトはそれぞれの魔法の属性に対応している。そこに合った属性の魔法使いを入れて、意識と魔力を奪って、対象者へ奪った魔力を転送する仕組みになっていたらしい。生きたまま魔法使いの魔力を食う装置だ。強力な魔法使いを入れれば、それだけ強い魔力を手に入れることができるだろう。チェイニはエレメニル大陸一の力を既に持っていたのに、これ以上どうするつもりだったのだろう。大陸外へも進出するつもりだったのか。エレメニル出身の魔王になっていたのかもしれない。
火の賢者マチはチェイニの部屋には居なかった。ベルゼフの部屋に囚われているのかもしれない。ベルゼフも持っていたであろう邪法のオブジェも破壊しておくべきだろう。ウェルに助け出された3人の巫女達は、偽者達に服を着せられてチェイニのベッドに寝かされている。そのうち目覚めるだろう。
階段を降りると、一階の正門を入ったすぐのところにある広間に、エアリア達がいた。火の賢者マチは既に自力で牢から抜け出して、合流していた。サーラと一緒にいる。ウェルはサーラに火の杖を渡した。
「チェイニは消し去って、3人の巫女も助けました。トード、クレフ、グレイド、巫女は3人とも二階のチェイニの部屋のベッドで寝ています。こんなところで寝かせておくわけにもいかないでしょうから、連れてきてもらえませんか」
あと、チェイニが造った偽者の巫女が4人いるので、驚かないで、と付け加えたが、もちろん驚いていた。
「エアリア、チェイニが造ってしまった4人の巫女・・・どうしたものでしょうか」
エアリアは首を振っている。どうしていいか判断に困るようだ。とりあえず私が預かりましょう、と言った。エアリアが造りだしたサーラと同じように、大きく魔力を奪われたりしない限り消えることはないらしい。各国に引き渡したら重宝がられるかもしれないが、危険な気もするし、偽者たちもかわいそうかもしれない。
「火の賢者マチ様ですね。初めまして。空の賢者のウェルです。どこに居られたのですか」
「ベルゼフの部屋です」
牢を消しておきたいとマチに言って案内してもらった。ベルゼフの部屋は階段より奥の右手にあった。死んだカーミラの部屋もあるかもしれない。カーミラの持ち物については、牢以外はクレフに任せておけばいいだろう。この後ウェルは、カーミラが邪法の牢を持っていなかったかクレフと一緒に確認したが、そのようなものはなかった。邪法の牢とは空の一族のものだったのだろうか
ベルゼフの部屋のカーテンの奥に、チェイニの部屋にあったような牢がある。こちらの方がかなり広い。だが、チェイニの部屋にあった台座や丸い水槽、宙に浮かぶ透明なオブジェなどはない。ウェルは牢を消し去って広間へ戻った。
ウェルはやり残したことがないかよく考えた。そういえばリマはどうなったのだろう。もしかするとチェイニに消されたかもしれない。最後に聞いておけばよかった。
『リマは消されたのだろうか』
『・・・戻そうとしてみた。できないから消されてはいない』
リマは結局チェイニの元へは戻らなかったのかもしれない。また会うこともあるのだろうか。
ウェルは目をつぶって、やり忘れたことがないか考えている。フェイやエアリアを始め、みんな固唾を呑んでウェルを見守っていた。よし、大丈夫、と確信したウェルは目をあけて言った。
「エアリア、レイド、最後にやっておくことがあるんだ。さっきの紙は読んでくれたよね」
「ええ」 「ああ」
「今より空の賢者ウェルの魔力を封印します。エアリア、レイド、頼みます」
ウェルたちは空の魔法の封印の儀を始めた。




