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最後の賢者 エレメニルの物語  作者: 山乃末子
会議と別離
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空の魔法使い

 フェイとウェルは外へ出た。ベルゼフやカーミラ、チェイニはいないので、フェイは戦えなくはないと判断した。逃げるにしても、とりあえず行く先がない。王城に行っても、騎士団は風の巫女の捜索に出ており、ほとんど残っていないらしい。外は既に暗かったが、騎士たちは松明を持っていて、いつになく明るい。かなりの人数で包囲しているようだった。中央に指揮官らしき人物がいるが、ウェルやフェイとそう変わらない年の少女だ。銀の長髪に黒い瞳。軽鎧にマント、兜は装備していない。


「お前がウェルか。祖父のルマを殺したのもお前だな」


「リマ、違う。ルマは俺の唯一の・・・ルマを殺したのはベルゼフだ」


「ふん。ぬけぬけと。悪党め。私の手で始末してやる」


 騎士達が中から5人襲い掛かってきた。ウェルもフェイにもらった剣を抜くが、騎士5人は既にフェイに切られて果てていた。フェイの宝剣は風をまとい、騎士を鎧ごと真っ二つにしている。ウェルはフェイが本当に戦っているところを初めて見た。


「なかなかやるな。だが、これならどうかな」


 次の瞬間フェイの宝剣が消えていた・・・だけではない。フェイの軽鎧もなくなっていた。リマの空魔法で消されたようだ。フェイはウェルの手を握ると、おそらく最後の魔法を唱えた。フェイを中心として竜巻が発生する。それは包囲していた騎士達も、別荘も、周辺の森も、すべてを吹き上げて飛ばした。フェイはウェルを抱きしめて、落下からかばった。かろうじて安全に降りられる程度の風を起こせる魔力を残していたフェイだったが、最後の落下はそれなりの衝撃があった。


「小ざかしい真似を。だいぶやられてしまったな・・・まあウェルと風の騎士を仕留められれば、おとがめはなしかな」


 リマには効かなかったようだ。騎士も6人だけだが立ち上がれるようだ。


「リマ様、ウェルは殺すなとのことでしたが、風の騎士は私どもで好きにしてよろしいですか」


「うん。ウェルも風の騎士も生死は問わないと言われている。構わないがどうかしたのか」


「我々もこのような目にあわされて、あの者をただ捕らえて帰るつもりはありません。ここで仕置きの上で殺します」


「ふん。相手は騎士とはいえ、非力そうな若い女だぞ。魔力も、もはや感じない。程ほどにしておけよ」


 フェイはウェルから引き離されて騎士に囲まれている。囲みを抜けようとするが、隙はない。次第に輪を狭められ、騎士達に押さえつけられている。


「お、お願いだ。フェイは・・・風の騎士は見逃してくれ」


「こっちの手下をほとんどやったからね。あいつら私の言うことなんか聞かないよ」


 フェイの悲鳴がする。ウェルは落下の衝撃でふらふらだったが、剣を持って騎士にぶつかっていった。一人倒れる。二人目の顔面を貫く。三人目に蹴りを入れて転がす・・・が四人目のパンチがもろに顔面に入り、後ろへ倒れた。その隙にフェイは騎士の手から抜けた。衣服はぼろぼろになって下着が露出している。騎士達はウェルには見向きもせず、あられもない格好のフェイのほうへ向かっていく。


「フェイ、逃げろ」


「う、ウェル・・・」


 フェイはこの場を逃げる気がない。ウェルの敵の数を減らすために騎士を引きつけるつもりのようだ。レイド、レイドがいれば・・・ウェルが念じるが、レイドは影も形も現れない。


「ずいぶんお困りのようだね。いつもながら情けない。僕もフェイをあんな目にあわせて、ただ見ている気はない」


その声を聞いてからウェルの意識はなくなった。


「お前の相手は私だよ。さあどうやって殺してやろうか」


 近づいてくるリマへ振り向きもせず、ウェルが手を上げると、リマの両腕両足には魔力を封じる枷がついていた。


「な、こ、こんなことが」


 次にウェルは、フェイを再び捕まえて、なぐさみものにしようとしていた騎士をすべて切り倒した。フェイには手刀で切ったように見えたが、フェイが切ったのと同じように、鎧ごと真っ二つになっている。


「フェイ、大丈夫か」


「ああ、装備は取られたし、ぼろぼろだけどね。なんともないよ。魔力と体力も空っぽだけど」


 ウェルがフェイの肩に触れると、フェイのぼろぼろの服がきれいなドレスになっていた。あまりこの場にふさわしい格好ではないが。


「これも大切なものだろう」


「え・・・ああ、ありがとう」


 リマに消された宝剣が元通りになっていた。若干デザインが変わっているようで、フェイはおかしな顔をして剣を見ている。


「さて、尋問を始めようか」


「う・・・」


「チェイニはどこにいる」


「言えない」


「巫女たちはどこだ」


「知らない」


 ウェルは3人の屈強な騎士を造り出した。騎士はリマの両脇と後ろについて腕と腰を捕らえている。


「先ほどのフェイのような目にあいたいか。それとも、もっと本格的な拷問がいいか」


「ひぃ・・・」


「よせ、ウェル、どうしたんだ。これではまるで・・・」


 その瞬間ウェルは不自然に前のめりに倒れた。騎士達は消えた。


「ウェル、しっかりしろ。大丈夫か」


「う・・・フェイ、え、何て格好してるの。というか、俺は・・・襲われて、フェイが竜巻を出して、それで・・・あれ。リマはいるが・・・」


「しっかりしろ。君がやったんだぞ。残りの騎士を殺したのも、私にこの服を着せたのも。リマを拘束したのも。大丈夫か」


 ウェルは全く覚えていなかった。


「さ・・・さすがは空の隠者ウェル。潜在能力はチェイニ様にも匹敵するというのは本当だったか。だがチェイニ様には敵わない。今頃は地の巫女の力も手に入れているだろう」


「チェイニは地の国を襲ったのか」


「もう地の巫女はチェイニ様のもとにいるだろう。火の巫女も今頃は捕らえられているだろうな」


 もうすべては手遅れなのだろうか。


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