同盟会議
その日の朝から対「神帝」チェイニの同盟会議が開かれた。会議室に置かれた矩形のテーブルの中央、戸口に近い短辺に風の国の王が座った。議長を兼ねている。窓側の長辺には、王側から水の騎士ティーナ、水の魔法使いクレフ、地の騎士グレイド、地の戦士ランド、あと数名の地の国の騎士が座っている。反対側には空の巫女エアリア、空の賢者ウェル、火の巫女サーラ、風の巫女マイ、風の騎士フェイ、風の国の騎士団長ヴィルベルが座った。
まずはエアリアから順に、自分の身分と名前を簡単に自己紹介した。そして次に、到着順に国ごとの状況を簡単に説明した。
エアリアによる空の一族の現状説明は長くなった。どの国の者も空の一族のことは知らなかったからだ。そしてチェイニが空の隠者であること、ベルゼフが空の騎士だったことが語られる。そしてジロこそ勇者として知られているが、空の勇者でもあったこと。ジロが四賢者とチェイニに挑み、敗れて死んだことは皆知っている。
「そしてここにいる当代空の賢者ウェルは、先代空の巫女ミクが母、勇者ジロが父にあたります」
意外な内容に会議の参加者は皆驚いているようだ。ウェル自身もあまり実感のない話ではある。さすがにウェルも自分が空の一族で、空の魔法使いなのは自覚しているが。いろいろと質問をしたそうな空気を察して、風の国の王が、質問は現状説明がすべての国で終わってから、と釘を刺した。空の一族はほぼチェイニに従うか滅ぼされたこと、現在チェイニに対抗する空の一族はウェルとエアリア、そこでエアリアはレイドを出した。
「この空の戦士レイドです」
さすがにこれも皆驚き、思わず声を上げた。レイドに関しても簡単に説明がなされた。
次に火の国について説明がされる。火の巫女サーラは普段は子供っぽいしゃべり方をしているが、公式の場できちんと話すこともできるようだ。火の賢者マチはチェイニに囚われていること、火の騎士ジャック(火竜フレド)が病気であること、それもおそらくカーミラの毒によると思われること、などが述べられた。火の国の騎士団は、現状副団長の指揮下で国の守りにあたっている。もし必要なら火の国の騎士団はフレドの指令で動かすことはできるらしい。後、とサーラは少し笑って、私自身戦力としてこの場に来ています、と言った。
次に水の国について水の騎士ティーナから説明があった。水の国はチェイニ達の武力に屈服する形で占領され、水の巫女ミーシャを人質にとられた。チェイニの拠点もどうやら水の国にあること、チェイニに逆らうものは、投獄されるか、追放されるか、殺されたこと。水の国の勢力は水の騎士ティーナと水の魔法使いクレフのみだ。
地の国については地の騎士グレイドが説明した。グレイドは壮年の騎士で、白髪で長い髭を生やしていた。顔にも左側に長い刀傷があり、いかにも歴戦の騎士らしい。地の国は、地の賢者ガルドが瀕死の重傷を負って戻ってきたが存命だ。地の国はガルドが王も兼ねている。地の巫女レラはガルドの娘で、ガルドの元にいるらしい。戦力としてはあまり期待できない。チェイニは次に地の国を狙っているらしく、チェイニから降伏するように使者が送られてきているらしい。グレイドが国を出た時点ではまだ攻め込まれてはいない。旅の間も動きを知らせる使者は来なかった。現状戦力としてはグレイド以下の騎士団がある。他の国の騎士団と同様に、魔法使いも騎士団に組み込まれている形だ。
最後に風の国について、王から説明があった。最大戦力である風の勇者トードは、亡き風の賢者セトの密命により旅に出ていること。内容については極秘のため言えないが、チェイニへの対抗策と関係している、と王は言った。トードが帰り次第必要な情報を伝えたいとのことだ。現状戦力としては風の騎士フェイ、風の国の騎士団がある。風の巫女マイは戦力として期待できる程ではない。
その後は各国の参加者の間で質疑応答がなされた。ウェルとしても痛い質問は、空の賢者の実力がどの程度のものか、ということだ。魔力というのは強力な魔力を持つ者ほど、相手の強力な潜在能力もわかりやすい、という特性があるらしい。エアリアや風の勇者トード、火竜フレドは、初見でウェルの潜在能力について何の疑問も持たずに認めた。ウェルは会議に出てわかったが、会議に参加している騎士達の魔力では、ウェルが強力なポテンシャルを持っているとは感じないらしい。会議の参加者達の多くが出した結論は、おそらくウェルと同様のもので、空の賢者の実力については何とも言えない、というところだろう。フェイだってウェルの実力など当てにしていないのかもしれない。
エアリアは、ウェルが今後の戦いのほぼ唯一の勝機と見ていた。フレドやトードも、エアリアとウェルこそ主力、任せておいて良いと考えていた。だが会議はもちろんそういう方向にいかなかった。
トードの密命についていくつか質問が出た。しかし風の国の王も、トードから師の密命で旅に出ます、としか聞いていなかった。答えようもない。いつごろ帰るのかも、もちろん知らない。
現状の戦力でチェイニに敵う訳もない、と参加者のほとんどが思っているようだ。
質問も一通り終わったところで、エアリアが発言した。チェイニ達が邪法を使用している可能性についてだ。根拠は空の騎士ベルゼフの年齢からはとても考えられない程の魔力の増加だ。邪法については、サーラ以外の参加者達は知らなかった。ベルゼフが火の賢者マチの魔力を吸収している可能性も高い。火竜フレドもそう推測しているとサーラが付け加えた。
「邪法は巫女やその候補者など、若くて潜在能力の高い者を生贄にすることが多いとか。各国の巫女は邪法に使うため狙われるでしょう」
水の巫女ミーシャが囚われたのは、邪法に使うためかもしれないと気付いたのだろう。ティーナは目を少し開き、クレフはうめいていた。もちろん地の巫女レラや風の巫女マイも狙われることになる。彼女らを守るための対策が必要になってきそうだ。
あとは国同士の連絡の方法などが相談された。フェイの飛行能力やサーラの持つ転送の魔石が重要になってきそうだ。話がそこまでいって休憩となった。休憩は隣の部屋で飲み物などが出た。ウェルが飲み物をもらっていると、クレフがやってきた。
「ウェル・・・少し良いだろうか」
二人でベランダへ出た。




