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最後の賢者 エレメニルの物語  作者: 山乃末子
風の国
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地の戦士

 ランドは軽鎧と剣で武装していた。兜は置いてきたようだ。髪の毛は茶色で、濃い茶色の瞳をしている。背はフェイよりは少し高い。ウェルより年上だと思うが、童顔で年より幼く見られるらしい。フェイとも顔見知りのようだった。地の賢者ガルドは存命だったが、瀕死の重傷でまだ完治しておらず、会議には出られない。地の騎士グレイドと、騎士見習いのランドと、あと数名の騎士と従者が風の国に来た。


 火の国は騎士も賢者も不在の状態だ。火の賢者マチが実質火の国の王も兼ねていた。マチが囚われて、フレドも療養中の今、火の巫女サーラが若年ながら、代表して会議に参加するふさわしい立場にある。マチの祖父でもある火の国の王は、高齢でもあり出かけることができる状態ではないらしい。


 こうしてエレメニルの4国の代表者と空の一族の代表がそろう形になった。地の国の一行の到着をもって会議を開催するということだ。さすがに地の騎士グレイドたちは到着したばかりなので、明日の朝から始めるらしい。各国の状況の確認と、今後の方針を決めることになる。だがウェルの思うに、会議などせずとも、それぞれ必要なことは既にしているのだ。寄って情報交換し、協力し、良い策がないかを探り可能な連携をとろう、ということだろう。


 ランドはフェイに手合わせ願いたいと申し出た。フェイは受けた。ウェルやサーラにエアリア、クレフとフォーゲル卿も見学することにした。


 ランドは長い木剣を右側に両手持ちで持って構えた。フェイは少し短めの木剣を、ランドの顔へ突きつける形で片手で構えている。ウェルと稽古する時は、ほうきの柄でやっているが、ウェルの攻撃はそれでもしのげるし、木剣で突かれたり殴られたりすると大怪我をするからだろう。


「今日は治療のできるクレフがいるからね。遠慮なくきていいよ。僕も遠慮しないから」


「フェイが加減なんか考えているとは知らなかったね。ならお言葉に甘えて思いっきりいかせてもらおうか」


 ランドの強さは相当なものだった。力も強いし、動きも速い。だが、フェイの動きは捉えられないようだ。鎧に突きや打撃を受けているが、こけても倒されてもすぐ立ち上がってくる。フェイはランドの頭部は狙わなかった。でもずっと後でウェルにもわかったが、フェイがこの時木剣でランドの頭を殴ったとしても、壊れたのは木剣の方だっただろう。フェイの攻撃ばかり入っているのはウェルの時と同じだが、今度は息切れをはじめたのはフェイの方だった。


「あいかわらずタフだねえ」


「あいかわらず身軽なことで。やっぱり一本も入らなかったな」


 ランドは木剣を肩に乗せて苦笑した。稽古は終わりのようだ。フェイから一本取るのは大変なことのようだ。ウェルは魔法を使ったとはいえラッキーだったのだろう。ランドの強さもすごい。こういう強さもあるのかとウェルは思った。ウェルが感想を言うと、ランドは言った。


「俺なんかたいしたことはないさ。魔力も知れているからね。頑丈なのだけが取り柄だよ」


 いざとなれば君らの盾にもなるよ、と言ったランドに、フェイがウェルは強いんだよ、僕からも一本取ったんだと言った。


「本当かい。さすがは空の賢者様は違うなあ。剣術もできるのか」


 ランドは驚いたようで、ウェルさんにも教えてもらおうかとかぶつぶつ言っている。ウェルは例の手をまた使うことになるのかと思ったが、やらずにすんだ。


 ランドは騎士の修行中で、いずれは地の騎士に、と見込まれているらしい。フェイと比べれば魔力は劣るが、その実力は相当なものだろう。ランドとクレフは一緒に王城へ帰っていった。明るくて話もできるランドなら、クレフとも打ち解けてくれるだろう。気は合うようだった。サーラはクレフが帰っていくので少し寂しそうだった。


「そういえば思い出したけど、僕にやって欲しいこと決めたの」


「うん。まだ言ってなかったね」


「あんまり変なことじゃないのを祈るよ」


「・・・変かもしれない」


「・・・聞くのが怖くなってきたね。もう早く言ってしまいなよ」


「僕の騎士になってくれないかな」


 僕に頼むようなことなのかい、とフェイは苦笑している。風の騎士をやめてウェルの騎士か、とか首を振りながら困ったような顔をしているが、半分冗談だろう。


「別にずっとじゃなくてもいいし、チェイニを倒すまででもいい。それに女の人に男がそんなことを言うのがおかしいっていうなら、僕はそんな風には思ってないし」


 そんな風には思っていない、というのは僕を女とは思っていないという意味かい、と言ったフェイは笑っていたが、ウェルはこれは返答によっては怒らせそうだとなぜか思った。


「そんなことは・・・フェイだって、女だって思われたくないって思ってたんでしょ」


「そうかい。どうしてそう思うの」


「僕とかいってるし・・・」


「なるほど。そうかもしれない。でも僕って男の言葉なのかな。ウェルが使ってるのを聞くと子供っぽいけどね」


「な・・・じゃあなんて言うのさ」


「プライベートじゃ俺で、公式な場所では私とかじゃないの」


「じゃあ、やめるよ。その僕っての」


 フェイも僕というのをやめると言った。もしウェルかフェイがその言葉を使ってしまった時は、何かひとつ相手の言うことをきくことになった。


 エアリアは二人のやり取りを離れたところで見ていた。そして少し笑い、ふと夕日を眺めた。やや悲しそうな顔をしているように見えるエアリアの前の空は、燃えるように赤い夕焼けになっていた。明日はようやく会議が開かれる。エアリアには不安と希望の入り混じった未来があった。


 次回から章が変わります。


 蛇足ですが、ランドが石頭という設定が生かされる話は、残念ながらありません。


 「僕」が子供っぽいというイメージは、ある知人の意見ですが、本当のところどうなんでしょうか・・・

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