水の騎士
水の騎士ティーナはとても美しい女性だった。エアリアも美人だし、フェイやサーラも容姿は整っているのだが、彼女らはほぼノーメイクだ。ティーナはばっちりきめており、赤いリップが印象的だ。青いショートカットに青い瞳、鋼の軽鎧を身に着けていた。帯剣もしている。比較的大柄なティーナとはいえ、結構な大きさの長剣だ。宿泊場所の王城には寄った後なので、荷物等は置いてきているのだから、敢えて鎧などの装備もそのままなのだろう。臨戦態勢ということか。
お供はたった一人で、魔法使いのようだ。青が基調の魔法衣の上にローブを被っていた。ティーナよりも薄い青の髪のショートカット、黒とみまがう濃い紺の瞳をした少年だった。年齢もウェルと同じくらいだろう。ティーナの装備も物々しいが、二人から発せられる緊張感はウェルも感じた。ただならないものだ。
「水の国の状況は深刻です。既に国はチェイニに乗っ取られたようなものです」
水の国は裏切り者の賢者カーミラの国だ。水の巫女もカーミラに捕らえられ、水の国の王もカーミラの言いなりだという。カーミラに従わないティーナは国王から追い出される形で国を出て、さらにはカーミラに追っ手を向けられて、道中襲われたという。お供も全部で5人いた騎士と従者が殺されたらしい。
「カーミラにしてみれば、軽い嫌がらせのつもりだったのかもしれませんが、こちらは同志をほとんど失ってしまいました。今では水の国の勢力は、私とクレフ以外残っていないのです」
クレフはティーナのお供の魔法使いの少年で、以前はカーミラの弟子だった。カーミラのやり方に疑問を持っており、水の巫女を救い出して、カーミラの手から水の国を解放したいという。後でフェイはカーミラのスパイかもしれないよ、と言っていたが、ウェルはそうは思わなかった。うさんくささよりも、緊張感や殺気のようなものを強く感じた。少年は自分でカーミラを殺すつもりなのかもしれない。
ティーナは風の国の王と約束があるらしく、フォーゲル邸で少し話した後、城へ戻っていったが、その前にクレフに言った。
「ところでクレフ、空の賢者様を始めとして、ここには近い年の方々が何人も居られます。息抜きといっては何ですが、少しこちらにお邪魔してはどうですか」
「なんなら泊まっていただいても構いませんぞ。ティーナ様も」
フォーゲル卿が口をはさむ。クレフはティーナについていくつもりだったようで、はっきりしない。
「サーラ水の魔法見てみたいな」
「治癒の魔法ができるんでしょう。剣術の特訓でケガばかりしてる人がいるから、ちょうど助かるかもねぇ」
「王宮について来てもつまらないでしょう。ああ言って下さっているから残りなさい。きっと得るものも多いでしょう」
こうしてクレフは例のフェイとウェルの剣術特訓を、サーラと一緒に見学することになった。エアリアも少し見学していた。剣術の稽古、もといフェイのしごきは大体ウェルがやられている。たまにフェイは一本打たせてくれているようだ。ウェルの一撃も力だけはあるので、うまく防具の箇所に当てている。
少し休憩した時、打ち身や転倒時のすり傷を、クレフは一瞬で治してくれた。とても便利な能力だ。サーラは感心している。少しうらやましそうでもある。
フェイの稽古に満足した様子のエアリアは、フェイに礼を言っていた。
「ね、クレフ、お父さんの病気治せたりするのかな」
「・・・お父さんとは」
エアリアも、そうでした、と思い出して、クレフに事情を説明した。カーミラの弟子だったクレフなら、もし火竜フレドがカーミラに毒を盛られたとすると、その治療法も知っているかもしれない。
「そのようなことが。申し訳ありません。見てみなければなんとも言えません。会議がなければ、すぐにでも伺った方がよさそうですが・・・」
「転送の魔石があるからすぐ行けるよ。帰りはフェイに乗せてもらえばすぐ」
そこで、フェイとサーラとクレフで、フレドのところへ行ってもらうことになった。エアリアとウェルは、フェイが大変そうなので遠慮した。フェイは平気だと主張していたが。ウェルはあまり飛ぶのは好きでない、というのもある。フェイのことを信用していない訳ではないけれど。
フェイ達が去った後、エアリアと二人になったウェルは話しながら部屋へ戻った。ウェルは疑問に思っていたことを口にした。ここへ来てから剣術の稽古しかしていない気がするが、これでいいのだろうか。魔法の訓練もした方がいいような気がするが、エアリアは自分の魔力をウェルに注ぎ込んで以来、特に指導らしいこともしなかった。もちろんウェルもルマに教えられたり、自分で勉強したりして知識だけはあったが。
「私の部屋へ来て下さい。少しお話することがあります。前にフレド様のところで私がレイドを戻して見せたことがありましたね。私の魔力を注ぎ込んでから、あなたの使える魔力量は飛躍的に増えているのです。今ではレイドを一時的には戻せる程に」




