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最後の賢者 エレメニルの物語  作者: 山乃末子
風の国
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ウェルの力

「食後にも稽古をして欲しいとか? 正直少し疲れてるけど、他ならぬ賢者様の頼みならしかたないな」


 ウェルもさすがに今日はもう稽古はたくさんだ。空を飛んでいる時に・・・何て言えばいいのかウェルは言葉に詰まってしまった。フェイにはわかったようだ。


「フェイを怒らせたみたいだから・・・ごめんなさい。わざとじゃないです。というか覚えていません」


「・・・そうだなあ。許さないって言ったら」


「え」


「嘘々。じゃあ僕から一本取ったら許してあげるよ」


 じゃあまた明日。おやすみとフェイは去っていった。フェイから一本・・・ウェルは眠りにつくまでそのことを考えた。


 翌日は朝食後、さっそくウェルは稽古を求めてきた。サーラとエアリアも少し見学するようだ。あれ程叩いても突いても、挑発しても、ご褒美をつるしても反応しなかったウェルのモチベーションは格段に上がっていた。センスと技術は相変わらずだが、なかなか良い傾向だ。少し打たせてやろうかとフェイが考え始めた頃に、ウェルは言い放った。


「フェイから一本取ったら、何でも言うことを聞いてくれるんだったよね。な・ん・で・も。大サービス」


 やはりこのスケベなガキは油断がならないとフェイは考えを改めた。次に少し痛いのをいれてやろう。全力でぶつかってくるウェルの突きを横に避けてかわす。続け様に力任せに来る横なぎをすり上げ、ウェルの腹部に痛い突きを・・・入れたつもりが、ほうきの柄が手から消えていた。想定しない状況にフェイは気付くのも遅れ、からのこぶしをウェルに突き込んでいく形になった。ウェルはぶつかって体勢を崩したフェイの頭の上に、木剣をちょんと置いた。


「ね、これ一本、一本だよね。やったー」


 フェイは口を空けたまま言葉もない。ウェルが空魔法でフェイの得物を消してしまった、ということに気付くのにしばらくかかった。


「で、何が望みなのかな」


「これで許してくれるんだよね」


「それはもういいよ。許す許す。あーそれだけでいいのか。まあ魔法使ったし、ずるっぽいもんねぇ」


 フェイは手をひらひらさせているが、内心何を言われるかどぎまぎしていた。何にせよフェイは騎士だし、剣にはプライドを持っていた。


「ずるじゃないよ。僕の先生だったルマも、剣術は剣だけじゃなくて魔法も交えた方が良いって言ってたし」


「ぐ・・・正論だ。じ、じゃあウェルが変なことしたのを許してあげる。これで終わりだね」


「フェイはそれとこれとは別だと思ってたんでしょう。何してもらおうかなあ」


「こいつ。もう何発か入れてそんな口きけないようにしておこうか。さっきの手は食わないよ」


「あ、やっぱりまだ怒ってる。許してくれるっていったのに」


 得物を消すというウェルの攻撃というか防御方法は有効な戦術だった。フェイが風魔法を使ったとしても、本気でウェルに勝つのは実は難しかったのではないか。フェイはウェルの実力を甘く見ていたのかもしれない。ウェルはその気になれば、何だって消せる。その気になれば得物だけでなく、防具や服だって消し去れるのかも知れない。フェイはウェルを見る目が変わってきた。やはり空の賢者なんだ。


「わかった。な・ん・で・もウェルの言うことを一つ聞いてあげる。でも魔法はなしにしよう。これからはね。いくつほうきを用意したって、足らなくなりそうだからねぇ」


「わかった。うーん。何にしようかなあ。しばらく考えてからでもいい?」


「ん・・・まあいいでしょう」


 あまり考えさせない方が良いような気もしたが、ウェルに一本取られたことには違いない。約束を違えるのはフェイのポリシーではなかった。その後何度か打ち合った後、少し休憩していると、人の気配がする。


「やあ。トードにマイ。おひさしぶり」


 風の勇者トードと風の巫女マイが訪れたようだ。


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