表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄?どうぞご自由に。無能な王太子に捨てられた公爵令嬢ですが、父が王国を見限って独立したので私は優雅に旅に出ます  作者: 翡翠


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

41/44

第41話 争う意味の消失



 静かだった。


 あれほど揺れていた世界が。


 あれほど動いていた力が。


 嘘のように、止まっている。


 理由は明確だった。


 誰もが理解してしまったからだ。


 ◇


 帝国――皇城。


「……報告を」


 皇帝の声は、かつてよりも低い。


「はい」


 側近が一礼する。


「各国、軍事行動を停止」


「経済制裁も縮小傾向」


「全面的に緊張が緩和しております」


 沈黙。


「……なぜだ」


「理由は一つでございます」


 一拍。


「アリアベル様の存在です」


 ◇


 西方連合国家。


「……気づいたか」


 老宰相が静かに言う。


「何をですか」


「争う意味がないことをだ」


 一拍。


「勝っても、負けても」


「最終的にあの存在に依存する」


 それが結論だった。


「ならば」


「争う理由が消える」


 ◇


 北方王国。


「……無駄だ」


 王が呟く。


「何をしても、覆らない」


「力でも」


「経済でも」


「信仰でも」


 一拍。


「すべて、あの方に収束する」


 ならば。


 抗う理由はない。


 ◇


 東方神聖圏。


「……確定しました」


 高位司祭が静かに言う。


「神々の加護が重複」


「干渉が統合されております」


「結果として」


 一拍。


「単一の存在として安定」


 それは。


 定義される。


「……神格保持者」


 人でありながら。


 神として機能する存在。


 ◇


「加えて」


 司祭は続ける。


「時間的変化が停止しております」


「……何?」


「老化が確認されません」


 沈黙。


「……つまり」


「不老です」


 一拍。


「現時点で、死の兆候も確認されておりません」


 それは。


「不死に限りなく近い状態です」


 ◇


 その頃。


「……少し、静かですわね」


 私は空を見上げていた。


 風が穏やか。


 人も落ち着いている。


「はい」


 アルヴェインが答える。


「世界が安定しました」


「……そうなのですの?」


「はい」


 一拍。


「姉上の存在により」


 ◇


「……よく分かりませんわね」


 私は小さく首を傾げる。


「何もしていませんのに」


「それがすべてです」


 アルヴェインが即答する。


 ◇


「……姉上」


 一瞬、言葉を選ぶ。


「変化があります」


「何ですの?」


「時間です」


「……時間?」


「はい」


 一拍。


「姉上の外見、状態」


「変化が停止しています」


 ◇


「……そうですの?」


 私は自分の手を見る。


 いつも通り。


 何も変わらない。


 だが。


 確かに。


「……変わりませんわね」


 ◇


「老化が停止しています」


 アルヴェインが静かに言う。


「加えて」


「致命的な損傷に対する耐性も確認されています」


 それは。


 人ではない。


 ◇


「……まあ」


 私は小さく頷いた。


「不便ではありませんし」


 特に問題はない。


 ◇


「……受け入れるのですか」


 アルヴェインがわずかに驚く。


「何をですの?」


「その状態を」


「ええ」


 一拍。


「変えられませんもの」


 合理的だった。


 ◇


 その日。


 世界は理解した。


 争う意味がないことを。


 勝者も。


 敗者も。


 すべてが同じ場所へ収束する。


 ならば。


 争う必要はない。


 そして。


 その中心にいる少女は。


 変わらない。


 時間にすら縛られず。


 ただ。


 そこに在り続ける。


 ――終わりのない存在として。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ