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婚約破棄?どうぞご自由に。無能な王太子に捨てられた公爵令嬢ですが、父が王国を見限って独立したので私は優雅に旅に出ます  作者: 玉響すばる


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第26話 奪取未遂と、届かない距離



 山間の街道。


 視界は開けている。


 だが、人の気配は少ない。


「……静かですわね」


 私は何気なく呟いた。


「はい」


 アルヴェインの返答は短い。


 その視線は、周囲をなぞるように動いている。


 いつもより鋭い。


「……来ます」


 その一言で、空気が変わった。


「配置を」


「既に完了しております」


 カイルが低く答える。


 リシェルの護衛も、一斉に動いた。


 目に見えない陣形が、瞬時に形成される。


 次の瞬間。


 風が、裂けた。


 矢。


 正確に、馬車を狙った一撃。


 だが。


 弾かれる。


 アルヴェインの剣が、それを叩き落とした。


「……始まりましたわね」


 リシェルが静かに呟く。


 その声に、動揺はない。


 むしろ。


 どこか愉しげですらある。


 左右の林から、影が現れる。


 黒装束。


 統制された動き。


 数は十を超える。


「生け捕り指示です」


 カイルが冷静に分析する。


「殺意は低い」


「当然だ」


 アルヴェインが短く言う。


「目的は姉上だ」


 影が一斉に踏み込む。


 速い。


 だが。


 遅い。


 アルヴェインが一歩前に出る。


 その瞬間、距離が消えた。


 一人。


 次の瞬間には地に伏している。


 無駄がない。


 完全に無駄がない。


「……近づけませんわね」


 リシェルが楽しそうに言う。


「当然です」


 アルヴェインは振り返らない。


「姉上には触れさせません」


 別方向から三人。


 同時に踏み込む。


 連携。


 だが。


 意味を成さない。


 一閃。


 全員が同時に崩れる。


 呼吸すら乱れていない。


「……弱いですわね」


 私はぽつりと呟いた。


 正直な感想ですわ。


「姉上基準で判断しないでください」


 アルヴェインが即座に返す。


「十分に上位戦力です」


 ……そうなのですの?


 残った影が、一瞬だけ動きを止める。


 判断。


 撤退か、続行か。


 その迷い。


「遅い」


 アルヴェインが踏み込む。


 それで終わりだった。


 最後の一人が、地に沈む。


 静寂が戻る。


「……終わりました」


 カイルが周囲を確認する。


「生存者は確保」


「尋問可能です」


「……そう」


 私は軽く頷いた。


 特に何も感じない。


「……姉上」


 アルヴェインが振り返る。


「お怪我は」


「ありませんわ」


「そうですか」


 それだけで、空気が緩む。


「さすがですわ!」


 リシェルが満足げに言う。


「完璧です!」


「当然です」


 アルヴェインは淡々と答える。


「姉上ですので」


 ……そこ、理由になりますの?


「なります」


 即答だった。


 その後。


 拘束された者たちは、迅速に護送された。


 所属。


 目的。


 すべてが、やがて明らかになる。


 だが。


 それは今ではない。


「……では」


 私は何事もなかったかのように言う。


「進みましょうか」


「はい」


 即座に全員が応じる。


 誰も迷わない。


 ただ進む。


 その先で。


 さらに強い意思が動き出していることなど。


 気にも留めずに。


 少女は歩く。


 触れようとするすべてを拒絶する距離を保ったまま。

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