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婚約破棄?どうぞご自由に。無能な王太子に捨てられた公爵令嬢ですが、父が王国を見限って独立したので私は優雅に旅に出ます  作者: 翡翠


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第18話 帰還要請と建国の祝宴


 海沿いの街道を進んでいたある日のことだった。


「お嬢様」


 カイルが静かに歩み寄る。


「公国より、正式な使者が到着しております」


「まあ」


 私は足を止めた。


 視線を向けると、整然とした装いの騎士が一歩前に出る。


 公国紋章。


 間違いなく、正式な使者ですわね。


「アリアベル様」


 騎士は膝をつき、深く頭を下げる。


「エーヴェルハルト公王陛下より、正式な帰還要請でございます」


「帰還要請?」


 少しだけ首を傾げる。


「どのような理由で?」


「建国記念の催しを執り行う運びとなりました」


 一拍。


「その中心として、アリアベル様のご臨席を賜りたく」


 ……まあ。


「建国記念、ですの?」


「はい」


 騎士は顔を上げる。


「公国成立を内外に示す重要な式典となります」


 なるほど。


 確かに、それは重要ですわね。


「アリアベル様がいらっしゃらなければ、意味を成しません」


 リシェルが即座に言った。


「当然、戻るべきですわ」


 断言。


 迷いがない。


「……決めるのは姉上だ」


 アルヴェインが冷静に補足する。


「もちろんですわ」


 リシェルは頷く。


「ですが答えは明白でしょう?」


 視線が集まる。


 私は少しだけ考えた。


 旅。


 まだ見たい景色。


 行きたい場所。


 けれど。


「……そうですわね」


 軽く頷く。


「一度戻りましょうか」


 それだけだった。


「ありがとうございます」


 騎士が深く頭を下げる。


 その動きには、わずかな安堵が滲んでいた。


「日程は?」


 アルヴェインが即座に確認する。


「最短で三日後には本城到着可能な行程を用意しております」


「問題ない」


 短く答える。


 完全に護衛としての思考ですわね。


「では、準備を」


「はい」


 騎士が再び一礼する。


 こうして。


 私たちの旅は、一時的に終わりを迎えることになった。


「少し残念ですわね」


 セレスティナがぽつりと言う。


「せっかく良いところでしたのに」


「また来ればよろしいのではなくて?」


 私は軽く笑った。


「旅は逃げませんもの」


「それもそうね」


 すぐに表情が明るくなる。


「……姉上」


 アルヴェインが静かに言う。


「戻れば、状況は大きく変わっているはずです」


「そうでしょうね」


 私はあっさりと答えた。


 あまり興味はありませんけれど。


「公国はすでに、ただの一国ではありません」


「ええ」


「その中心に、姉上が置かれることになります」


 真剣な声音。


「それでも、よろしいのですか」


「構いませんわ」


 即答する。


 特に迷いもない。


「だって」


 一拍。


「やることは変わりませんもの」


 旅をする。


 見たいものを見る。


 それだけですわ。


「……そうですか」


 アルヴェインは小さく息をついた。


「問題ありません」


 それ以上は言わない。


「さあ」


 私は振り返る。


「帰りましょうか」


「はい!」


 リシェルが即座に応じる。


「全力でご案内いたします!」


 やる気がすごいですわね。


 こうして。


 私たちは再び、公国へと向かうことになった。


 その先に待つものが何であれ。


 ただ。


 少し賑やかな帰り道になりそうですわね。

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