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婚約破棄?どうぞご自由に。無能な王太子に捨てられた公爵令嬢ですが、父が王国を見限って独立したので私は優雅に旅に出ます  作者: 玉響すばる


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第13話 最後の選択と、崩れる王都



 王都――。


 御前会議の混乱は、そのまま街へと流れ出ていた。


 市場では穀物の値がさらに跳ね上がり、商人たちは在庫を抱え込み、取引は停滞している。


 人々は不安げに顔を見合わせ、声を潜めて囁いた。


「……もう、終わりなのではないか」


 王城。


 再び開かれた御前会議。


 だが、もはや会議と呼べるものではなかった。


「決断の時です」


 一人の公爵が静かに言い放つ。


 その声には迷いがない。


「これ以上の先延ばしは、損失を拡大させるのみ」


「……では、どうしろというのだ」


 王がかすれた声で問う。


「二つに一つでございます」


 公爵は即答した。


「公王へと国を譲り、体制を維持するか」


 一拍。


「あるいは、各家が独自に判断し、生き残る道を選ぶか」


 沈黙が落ちる。


 それは、事実上の最終通告だった。


「ふざけるな!」


 王太子が立ち上がる。


「なぜ、我らが譲らねばならぬ! ここは王国だぞ!」


 その叫びは、誰にも届かない。


「殿下」


 宰相が静かに言う。


「すでに王国としての機能は崩壊しつつあります」


「黙れ!」


「現実でございます」


 揺らがない。


 一切揺らがない。


「……認めぬ」


 王太子は低く呟く。


「私は認めぬ……!」


 その姿は、もはや王太子ではなかった。


 ただ現実を拒絶する者に過ぎない。


「陛下」


 王妃が静かに口を開く。


「ご決断を」


 その声音には、もはや情はない。


「このままでは、すべてを失います」


 王は何も言えない。


 頭を抱えたまま動かない。


 決断できない。


 それが致命的だった。


「……時間切れですな」


 誰かがぽつりと呟いた。


「我が家は、公国へ合流する」


 一人の侯爵が静かに立ち上がる。


 ざわめきが走る。


 だが止まらない。


「同じく」


「我が家もだ」


「すでに手は打ってある」


 次々と声が上がる。


 それは雪崩だった。


「……やめろ」


 王がかすれた声を出す。


「やめてくれ……」


 だが誰も止まらない。


「失礼いたします、陛下」


 深く一礼する。


 その言葉には、もはや忠誠はない。


「我らは、生き残らねばなりません」


 それだけが、すべてだった。


 王城を出る貴族たち。


 その動きは瞬く間に王都へと広がる。


 屋敷の整理。


 資産の移動。


 人員の引き抜き。


 すべてが一斉に始まった。


 王都は静かに崩れ始めていた。


「……終わりだ」


 誰かが呟いた。


 その言葉を否定できる者は、もういない。


 その頃。


「この辺り、景色が綺麗ですわね」


 私はのんびりと馬車の窓から外を眺めていた。


「ええ、本当に」


 セレスティナが微笑む。


「次はあの街に寄りましょうか」


「いいですわね」


 穏やかな時間。


 変わらない会話。


 だがその裏で。


 ひとつの王国が、終わりを迎えようとしていた。


 そしてその中心にいる少女は。


 ただ旅を続けている。

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