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婚約破棄?どうぞご自由に。無能な王太子に捨てられた公爵令嬢ですが、父が王国を見限って独立したので私は優雅に旅に出ます  作者: 翡翠


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第11話 選ばれる家

 海沿いの街を発った私たちは、そのまま街道を進んでいた。


 帝国皇女リシェルの護衛騎士団が加わったことで、隊列はもはや“旅”とは呼べない規模になっている。


 行き交う人々が道を譲り、遠巻きに視線を向けるのも無理はない。


「……やりすぎではなくて?」


 私は軽くため息をついた。


「適正ですわ」


 即答。


 リシェルが一切の迷いなく言い切る。


「アリアベル様の安全を考えれば、むしろ最低限です」


 基準が狂っていますわね。


「……姉上」


 アルヴェインも口を開く。


「本来であれば、さらに増やすべきかと」


「増やさなくて結構ですわ」


 きっぱりと断る。


 これ以上増えたら、本当に軍ですわよ。


「お嬢様」


 カイルが一歩前に出る。


「伝令が到着しております」


「伝令?」


 差し出された封書を受け取る。


 見覚えのある紋章。


 ……まあ。


「どうかしましたの?」


 セレスティナが覗き込む。


「実家からですわ」


 封を切り、目を通す。


 そして。


「……あら」


「何が書いてあるの?」


 少しだけ間を置いて、私は答えた。


「公国へ合流するそうです」


 一瞬、空気が止まる。


「……え?」


 セレスティナが目を瞬かせる。


「合流って……どういう意味で?」


「そのままの意味ですわ」


 私はさらりと言った。


「王国を離れ、公国側へ移ると」


「……は?」


 ルシアンが固まる。


「いや、ちょっと待て。それはつまり――」


「家ごと移るということですわね」


 イシュレルが静かに補足する。


 全員が沈黙した。


「……決断、早すぎない?」


 セレスティナが引きつった笑みを浮かべる。


「合理的ですわ」


 私は軽く肩をすくめた。


「現状を見れば、どちらに付くべきかは明白ですもの」


「……こちらもです」


 カイルがもう一通の書簡を差し出す。


 ルシアンがそれを受け取る。


「……うちもか」


 短く呟いた。


「どうやら、同じ判断のようです」


 イシュレルも静かに言う。


 それぞれの家から、同様の連絡が届いていた。


「……なるほど」


 ルシアンが息を吐く。


「貴族たちは、もう“選び終わっている”わけか」


「ええ」


 イシュレルが頷く。


「王家ではなく、“勝つ側”を」


「……それ、普通にやばくない?」


 セレスティナが小声で言う。


「貴族って、そんな簡単に動いていいものなの?」


「簡単ではありません」


 イシュレルが静かに否定する。


「だからこそ、この速さです」


 決断には時間がかかる。


 だが。


 動くと決めた瞬間は、速い。


「……つまり」


 アルヴェインが淡々と整理する。


「王国の中枢から、すでに支持基盤が崩れている」


「そういうことですわね」


 私はあっさり頷いた。


「……ねえ、アリアベル」


 セレスティナがじっとこちらを見る。


「これ、あなたのせいよね?」


「心外ですわね」


 即答する。


「私はただ旅をしているだけですわ」


「絶対違うでしょ」


「違いません」


 きっぱりと言い切る。


「しかし」


 ルシアンが腕を組む。


「これで流れは確定だな」


「ええ」


 イシュレルも同意する。


「人と資金が動いた時点で、国家の趨勢は決まります」


「……怖いこと言うわね」


 セレスティナが肩をすくめる。


「問題ありませんわ」


 リシェルが当然のように言う。


「アリアベル様がいらっしゃる側が、正しいのですから」


 即断。


 迷いゼロ。


「……極論だな」


 アルヴェインが冷静に返す。


「ですが否定はしません」


 一拍。


「結果としては、同じことになりますので」


 兄妹で同レベルですわね。


「では」


 私は軽く手を叩く。


「行きましょうか」


「え?」


 セレスティナが驚く。


「いや、この話のあとでそれ?」


「それはそれ、これはこれですわ」


 にっこりと微笑む。


「旅は旅ですもの」


 どれだけ状況が変わろうと。


 やることは変わらない。


 王都では。


 貴族たちが次々と決断を下していた。


 残るか。


 離れるか。


 そして。


 どちらに“選ばれる側”となるかを。


 だが。


 そのすべての中心にいる少女は。


 今日も変わらず、旅を続けている。


 何も知らないままに。

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