2話 婚約者
お父様ったら、あれから1週間もたたぬうちにもう相手が決まったって。
そう簡単に見つかるものかしら?このポリニャック家に相応しいものが。
お父様に呼ばれた部屋に入る。
「おお、サブリナ。待っていたぞ。」
お父様の対面にいるのは、凛々しい殿方。私が目をやると、ぺこりとお辞儀をする。
その動きは妙に正確で、まるで訓練された兵の礼のよう。仕官されてる方かしら?
きめ細やかな肌に整えられたミドルロングヘアー。清潔感は合格。ですが——少々、軍人気質が出すぎていますわね。
切れ長の目からはきりっと光を感じられますし、しっかりと閉じられた唇からは知性を感じますわ。
上等ですわね。さすがお父様が後継に選んだお方。
「ハンス・グザヴィエ・ド・ギーシュ様だ。殿下の親戚で、公爵家のご出身だ。軍に仕官しておられ、最近遠征から帰ってきたそうだ。」
「まあ。初めまして。サブリナ・ド・ポリニャックと申しますわ。」
スカートの裾を持ち上げて挨拶すると、お父様がくすっと笑うのが聞こえる。
「初めましても何も、お前……。」
「コホン。」
ハンス様が咳払いでお父様を遮る。
あら、以前お会いしたことがあったかしら?
一拍置いた後、ハンス様はにこりと微笑む。
「初めまして。サブリナ様。噂はかねがね。あなたのような聡明で美しい方と結婚できるなんて光栄です。」
会話も悪くありませんわね。特にこの方に不満はありませんわ。
私もにこりと笑みを返す。
「私もあなたのような凛々しく、知性のあふれる方とポリニャック家を守っていけること、嬉しく思いますわ。」
「まあまあ、サブリナ。とりあえず座りなさい。」
お父様に促され、席に座る。
それから3人でなんてことない談笑に花を咲かせた。
それにしても、こんな出来た殿方、お会いしたことがあれば覚えていそうなものですけど。
うーんと記憶の糸をたどっても、ハンス様につながるものは出てこなかった。
「ポリニャック公!どうかサブリナ様には私の過去は内密に!」
「おお、そうであったな。ハンス様。」
「あの方には嫌われたくないんです。思い出されない方がいい……。あの頃の私を……。」




