4話 証人を掌握
「サブリナ……サブリナなのか!?」
「ええ、お父様。このサブリナ、周囲の人々の協力を得てただいま戻りましたわ。」
「サブリナ!しばらく私の私室にいなさい!今陛下にお前の処刑中止をかけあっているから!」
成功ですわ。この城での拠点は得ましたわね。
大事なのはここからですわ。
相手は殿下。宰相や大臣を引き入れても太刀打ちできませんわ。
味方にするなら殿下より権力を持った陛下か、フローラ暗殺の証拠を握ったフローラお付きのノアイユ伯夫人。
陛下にはお父様が掛け合っているみたいですし、ならもう一方と接触しますわ。
ですが、悠長にしてはいられませんわね。
殿下が動けば、証拠も人も消されますわ。
今夜仕掛けた方が良さそうですわね。
「では、フローラ様。失礼いたします。」
ノアイユ伯夫人が下がるタイミングを見計らって、フローラの部屋から離れたところで強引ですが空き部屋に引き込む。
「今度は何!?」
「私ですわ。」
「え?サ、サ、サブリナ嬢……。そ、そんなまさか……!」
ガタガタ震えてますわね。
「経緯は言えませんが、殿下に処刑に物申すべく馳せ参じましたわ。」
恭しくお辞儀で返す。
ノアイユ伯夫人はわあっと泣き出した。
「お許しください!お許しください!フローラ様の命とはいえこんな……!まさかフローラ様がサブリナ様の処刑まで殿下に進言するなんて!!」
なるほど。やはりというか、私を消そうとしたのはフローラでしたのね。
「ノアイユ伯夫人。私はあなたを恨んでなんていませんわ。私は、あなたの身が心配なのです。」
「は!?」
にこり、と微笑む。
「ここに入る時、あなたは今度は何?とおっしゃいましたわね。今度、ということは、今あなたの身に不可解なことが起こってるんじゃなくて?
例えば、曲者が入り込むとか、街中で襲われるとか。」
「あ……あ……。」
顔が真っ青ですわ。どうやら図星のようですわね。
「お助け下さいサブリナ様!!フローラ様は私の口を塞ごうと……!このままだと私は殺されてしまいます!!どうかご慈悲を!!」
「間接的とはいえ私を殺そうとしたあなたを私が救うとでも?」
「お許しください!!フローラ様には逆らえないんです!!殿下の前では花の女神のごとく微笑まれていますが裏ではわがまま放題!!侯爵令嬢だから誰も逆らえませんわ!!」
「やはり、そうでしたのね。」
「苦しかったですわね。ノアイユ伯夫人。」
「え?」
座り込んだノアイユ伯夫人に目線を合わせる。
「話してくれてありがとうございます。今まで誰にも言えず辛かったでしょう。もう大丈夫。あなたの身はお父様に話して手厚く保護いたしますわ……。」
「お……!サブリナ様!」
ノアイユ伯夫人の涙をハンカチで拭う。
「ただし。」
「私とフローラが近いうちに争った時、私の味方をしてくれますわね?」
「ええもちろんです!!もはやフローラ様にはついていけません!!この身を捧げます、サブリナ様!」
「……ええ。」
本来裏切り者の命乞いほど、聞き苦しいものはありませんわ。これは前世ではなく今世で覚えたこと。
ノアイユ伯夫人は我が身可愛さで寝返っただけ。フローラが強く出たらどう出るか分からない。
——使えるのは、一度きりですわね。
「ノアイユ伯夫人?」
「はい……。」
「ノアイユ伯のご息女は大層フローラ嬢と懇意にしてましたわね?」
「そう!そうなのです!王太子殿下と婚約してから我が家が不運に見舞われて、うちの娘はカンカンです!しかし、フローラ嬢は証拠がないと……。」
ノアイユ伯夫人はおいおいと泣く。
「ちょっと、ご本人からお話をいただきたいのですけど──────。」
サブリナ処刑まであと20日。




