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完璧なクラスメイトに、腋毛と世界が生えていた  作者: 佐竹大地
第三章 等々力と不純な戦い
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第一話 開戦

「じゃあ草壁、この英文を訳してくれ」


「はい。『トムは沢山の社会問題を解決しようと試みましたが全て失敗に終わりました』です」


「よし。訳もそうだが、トムの悲哀さが伝わってくる読み方が完璧だな」

 英語の文章訳すのに感情まで伝わってくんのか? てかその文章なんやねん。

 などと心中でつっこみを入れていると草壁と目が合った。そしてそっと手を腋にやった。そのサインを俺は見逃さない。

 授業が終わって屋上前へ。すぐに草壁も来た。


「やろう」

 それだけ言って、ブレザーを脱ぐ。腋毛契約の時間だ。もはや完璧の反動なのかもよくわからないが、構わない。

 今日も腋毛を頂いた。契約完了。

 六時間目だったのでもう放課後だ。そのまま草壁と一緒に校内を降りる。


「どっか寄ってくか?」


「……えっ?」

 そういや帰りに遊んだこととかないなと思って言っただけだったのだが、なんか神妙なリアクションが来た。


「いや、暇だし。そうだ、フレンドリィショップでも寄ってくか」

「それ現実にないから……あっ」

 しょーもないギャグで誤魔化しながら上履きを履き替えていると、草壁が下駄箱を開けて声をあげていた。

 見ると、手に四角い封筒を握っている。

「なんだそれ。ラブレターか?」


「……さあ」

 言葉を濁している。既に何枚かもらってそうな反応だ。そういや完璧で人気のある人だった。

 草壁の手元を覗き込むが、外側の封筒にはなにも書かれていない。中に便箋が入っているようだ。


「あまりじろじろ見ないで」

「俺、人のラブレターとか見ても気にならないタイプだから大丈夫だ」

「気にするの私だから。あなたが大丈夫な意味がわからない」

 そう言いつつ封を開けようとする。中身が気になるのだろう。


「剃刀とか入ってないか?」

「怖いこと言わないで……え?」


 中には剃刀などはなく、一枚の紙が入っていた。草壁はそれを見て、固まっている。

 俺も覗き込む。紙には文章が書いてあった。文字が飛び込んでくる。


『拝啓、草壁さん。いつもお世話になっております。お伺いしたいのですが、どうして腋毛を生やしているのですか? ご検討のほどよろしくお願いいたします』


 剃刀のような鋭い言葉。


 新たな戦いの幕開けだった。



「作戦会議の時間」

 草壁が宣言する。

 手紙を見た後、俺たちは駅の近くの喫茶店に駆け込んだ。一番安い飲み物を購入して席に直行。作戦会議が必要という思いがシンクロしていた。

 草壁が改めて、問題の文面に目を落とす。そしてじっと考えて、顔を上げて言う。


「舐められてる?」

 キレていた。

「なにこの丁寧さを装った滅茶苦茶な文章。お世話もご検討も意味がわからない」

 そうだよな。むしろ逆に煽ってるみたいだ。

「ただ一つわかること、腋毛がバレている」


 それだけが重要だ。どうすべきか。俺は提案する。

「とりあえず返事を書くか」

「書かない。これは脅迫。そんな悠長な対応はしていられない」

 草壁の反応、苛立ちと同時に焦りが感じられる。なら、やることは一つ。


「犯人を見つけよう」


 草壁は頷いた。目的が一致した。あとは方法だ。


「返事の手紙を入れて下駄箱の前を見張れば、回収しに現れると思う」

 良さげな提案だ。疑問文だし返事を期待して、犯人がノコノコ現れるかもしれない。


「でもただ巡回している郵便局員の可能性もあるからな」

「皆無」

 俺は考える。わざわざ手紙で聞いてくる意味。返事を期待してない脅しともとれる。しかし要求はない。なぜだ? こいつはなにがしたい?


「より良い策を思いついたぞ」

「はあ、なに?」

 どうせ俺がロクでもない案を出すと思ってる態度の草壁に、俺は言ってやる。


「服を脱いでくれ」



 翌日の学校。脅迫も不審なことも起こらず放課後を迎えた。手紙の主を見つけるための作戦の時間がやってきた。

 ホームルームで礼をして、急いで教室を出る。そして廊下の角に隠れる。ひっそりと教室の中を確認できる位置だ。すぐに草壁も来た。


「セッティングはどうだ?」

「……できたけれど」

 草壁は微妙な表情を浮かべている。問題ない。準備は整った。

 教室では今、掃除が行われている。日替わりで席の列ごとの生徒がやるというシステムだ。その様子をじっと伺う。


「成功するとは思えない」

 不安というより不信な様子で草壁が言う。


「安心しろ。作戦に不備はない」

「どこが……」

「しっ」

 草壁の声を遮る。状況が動いた。

 目を凝らす。掃除中の一人の生徒に不自然な動作があった。

 そいつは周囲の様子をきょろきょろと伺いながら草壁の席に近づく。

 そしてさっと机の上に手をやって、自分のブレザーのポケットに手を突っ込んだ。


「よし」

 決定的な瞬間を見た。

 掃除が終わり教室から出てきたそいつが一人で歩いてくる。俺は後ろから声をかける。


「犯人はお前だったんだな」


「……え?」


 振り向く。目を丸くしている。視線が交差する。

 そいつはおどおどした副委員長、等々力だった。

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