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完璧なクラスメイトに、腋毛と世界が生えていた  作者: 佐竹大地
第二章 伊達と不自由な空
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第四話 てだ


「しかし屋上解放って言ってもなにするんだ?」

 行く場所もないのでそのまま廊下で、俺たちは話し合う。


「私に案がある」

 言い出しっぺの草壁が先陣を切る。


「生徒たちに訴える。屋上の素晴らしさを説いて、数の力で学校を変える」

「委員長みたいなこと言ってるな」

「委員長だから」

 そういやそうだった。


「生徒たちにと言っても、彼らは屋上の存在すら知らないよ」


「なら知らせましょう。ポスターを作りませんか? 廊下の掲示板とかに貼って、みんなを屋上へ行きたいと思わせるんです」

 草壁は宣言した。俺たちのやることが決定された。


「じゃあおいおいやってくってことで」

「今から作りましょう。こういうのはすぐ始めないとダレます」

 見抜かれていた。草壁が先導して俺たちを引っ張っていく。


 目的地はPCルームだった。パソコンが並んで自由に使える部屋。人はほとんどいない。そこに三人で並んで座る。


「ポスターってどうやって作るんだい?」

「なんかパソコンでカタカタやってたらいけるんじゃないですか?」

「無理」

 草壁はキーボードとかマウスをカタカタやってソフトをインストールする。画面上に真っ白な下書きと、よくわからないアイコンが浮かぶ。


「こんな感じです。中学で生徒会に入ってたから作り方はわかります」

「草壁君は頼りになるなあ」

「というか俺と先輩はずっとなにもしてないですよね」

「大丈夫です。ここから活躍してもらいます」

 草壁が俺たちの方を向き直って言う。


「ポスターの中身を考えましょう。アイデアはありませんか?」


 沈黙が流れた。俺も先輩も下を向いて積極的に発言しない。


「アイデアはちょっと浮かぶけど、センス悪いとか言われると嫌なんだよな」

「正直だね。ボクもそうだ」

 草壁の呆れた目線が突き刺さる。


「ぼんやり考えていても進まない。デザイン、文章、名前。この三つに分けて考えます」

 結局草壁が引っ張っている。だがなるほど、分割されるとできる気がしてきたぞ。


「じゃあまず、デザインから決めようじゃないか」

「とりあえず背景は屋上の写真だよな。青空と屋上で、それで充分なんじゃないか?」

「うーん、それだけだと味気ないね。周りのフェンスを鉄格子にするなんてどうかな? ボクたちは檻の中に閉じ込められてる的なメッセージを含ませるのさ」

 ちょっと本気の厨二病感あってコメントしづらいな。

 草壁がフリー素材の青空と屋上の写真を貼る。真っ白の紙から少し進化した。


「よし、デザインはひとまず後回しにしよう」


 次は文章だ。キャッチコピーみたいな感じで、通りすがりの生徒を惹きつけたい。


「こういうのは先輩、普段からごちゃごちゃ言ってるんだから得意ですよね」

「言い方が引っかかるが……まあボクに任せたまえ」

 先輩は少しじっとして考え、そして言った。


「屋上は自由、まずそれだね」

 この人それしか言わんな。

「あとは……うん……そうだね。自由とは尊いもので……その、文明を進歩させてきたもので……」

 早々にガス欠してるし。


「屋上に行けばイチャイチャし放題とかどうですか?」

 草壁が言った。意外な提案だ。


「そんな下賤な……リア充には来てほしくないね」

「言っておいて後から取り締まればいいんです。一旦多くの人間から賛同を得ることが大事」

 ちょっと黒いところ出たな。


「まあ文章はいくらでも考えられるし、後回しにしようじゃないか」


「じゃあ名前ですね」

「そもそも名乗るのか? 匿名でよくないか?」

 教師に怒られると嫌だし、他の生徒にへーこういうのやってんだあとか思われるのも嫌だ。


「でもそれとなくアピールもしたいじゃないか」

 先輩の自己顕示欲が出てきた。


「だから、アナグラムはどうだい?」

「なんすかそれ」

「文字を入れ替えて別の言葉にするやつだよ。かっこいいじゃないか。ミステリーとかで、実はこの名前はこういう意味があったんだよみたいな」

 なるほど、確かに俺たちだけわかってる優越感も持てるし、遊び心もあっていいな。


「じゃあ……だてのアナグラムで、てだ、ってのはどうですか?」


「そんなのアナグラムでもなんでもないからね。てだになんの意味があるんだい?」


「でも先輩だとそれくらいしか入れ替えるところなくて」

「そもそもどうしてボクの名字でやろうとするのかな」


「個人的に実はアナグラムでしたとか言われても、そうですかって思う。海外の映画で英語でやられたりするとわからなすぎてさらに腹が立つ。意味があると思えない」

 草壁が急にめっちゃ喋り始めたと思ったら、アナグラムのアンチだった。


「そ、そうかい。じゃあ名前も後回しにしようじゃないか」

「となると、デザインか……」

「一周してるから。どんどん後回しにするのやめて」

 バレたか。


「だってなにかを決定するのって勇気いるじゃん」

「すごいのを考えようとするから完成しないパターンになる。なんでもまず実際に作ってみればそれなりに見えるもの」

 草壁はそう言って、パソコンをガチャガチャ動かして今まで出た案で作っていく。


 背景は青空に屋上の写真、周囲に牢屋の檻が自然に重なっている。

 文章。屋上とは自由。イチャイチャもできる。

 byてだ


「だからてだってなんなんだい!?」

「確かにこうしてみると、意外とできてる気がするな」

「どこがだい!? ほとんどボクのアイデアじゃないか! 名前も晒してるし!」

 興奮していた。収めねばならない。


「そりゃ、先輩がリーダーですから」

「え、そうなのかい?」

「もちろんです」

 草壁も乗ってきた。俺たち二人を見て、先輩は言う。


「そ、そうかい。うん。じゃあ、これにしようか」

 ちょろかった。

 

 こうして、ポスターの案が完成した。

 俺たちは屋上開放への第一歩を踏み出した。

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