38 少しお堅くもハードボイルドに
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場面は、変わって――
こんどは、すこし“お堅く”もハードボイルドに、ソウル市内の警察署にて。
「マーさん、すまない。大至急、協力してほしいことがある」
と、いつもとは違った様子で、カン・ロウンが、刑事のマー・ドンゴンたちに頼んだ。
「な、何だ? 大至急とは、いったい?」
「どうしたんです? 急に」
と、聞き返すマー・ドンゴンとチャク・シウに、
「私たちのメンバーの、パク・ソユンがな、恐らく、【茶会】に拉致された」
「な、何だって――!?」
「な、何ですと!?」
と、重い様子で答えたカン・ロウンに、ふたりはほぼ同時に驚きの声をあげた。
そこへ、カン・ロウンと同行していたキム・テヤンが、
「俺も、さっき、ちょっと調べてみたんだけどな……、恐らく、ソユンのヤツは【何者かに指示されて】動いている」
「ちょっと調べたって、どうせ、妙な調べ方したんだろ? キム」
「まあ、そこは多めに見てくれよ」
と、顔をしかめるマー・ドンゴンに、キム・テヤンが言う。
「まったく……」
マー・ドンゴンは呆れつつも、続きを聞いてやる。
「とりあえず、だ……、すまんが、俺の力だけでは、どこまで追跡できるか分からんでな……、アンタたちの協力で、監視カメラ網の情報から、ソユンを拉致したと思しきヤツを追えないか?」
「まあ、分かったよ。……ただ、あんまり俺たちをあてにしすぎるなよ」
と、マー・ドンゴンが答えているところ、
「マー部長!! 例の【茶会】に関して――、その、パク・ソユンに関して新しい情報が入りました!! パク・ソユンの、仕事仲間のふたりも、失踪したとの情報が、」
と、慌てた様子でやって来た捜査班たちの、女性刑事が報告してきた。
「何だと!?」
「「「――!?」」」
と、マー・ドンゴンの声とともに、カン・ロウンやチャク・シウたちにも衝撃が走る。
「何だ!? 【茶会】に招待されたってのは、パク・ソユンだけじゃねぇのか!?」
「いや、たぶん……、その仕事仲間のふたりは、何か【別の理由】で拉致されたのではないか? マーさん?」
と、声を大きくして疑問を口にするマー・ドンゴンに、カン・ロウンが答える。
「別の理由……、だと?」
怪訝な顔をするマー・ドンゴンと、
「もしかして……、【人質】、とかですか?」
と、チャク・シウが、横から何気なく言ったところと、
「ああ……、恐らくだ」
と、カン・ロウンが、また少々重い様子で答えた。
「【人質】……、だと?」
と、顔をしかめたままのマー・ドンゴンに、キム・テヤンが、
「まあ、そうすると、話が合うかもな。ソユンのヤツは、部屋にスマホを置いて――、まるで、俺たちからも逃げるようにして、姿を隠しているわけだが、」
「ああ? 単に、お前たちのことが嫌になっただけなんじゃねぇか?」
「けっ、うるせぇな……。まあ、前の夜に、ヨンファのヤツが余計なこと言いやがって、機嫌悪くさせちまったのは確かだけどよ」
と、キム・テヤンは、茶化してくるマー・ドンゴンに反応しつつ、
「まあ、それは置いておき……、ソユンのヤツも、調査を進めるうえでは、万が一、【何か】があったとしてもだ……、少なくとも、俺たちが追跡できるようにしておくはずだ。今回だと、最悪、【茶会の主催者】ってヤツに自分が拉致された場合でも……、それを逆手にとって、自分を【囮】にして、追跡調査できるようにするはずだろう」
と、パク・ソユンのことを信頼した様子で、そう説明した。
「ふ、む……」
「……」
と、マー・ドンゴンとチャク・シウは、続きを聞く。
「だた、今回は、な……? まるで、俺たちの追跡がいっさいできないように、姿をくらまそうとしているようにも見えるのだ」
「……」
と、無言で耳を傾けるマー・ドンゴンに、
「まあ、確証はできないのが、もし、アイツの仕事仲間が、人質に取られていたとすれば、だ――、恐らくは、【こんな風に】脅されているんじゃないか? 例えば、もし【妙な動き】を――、発信機とかを仕込むなどして、俺たち、SPY探偵団が追尾できるようにしたりすれば、だ――」
「まさ、か……、」
「……!」、
と、ふたりは次の言葉を待ちながらも、予想できる内容に戦慄しつつ、
「――人質にも、その、ギンピギンピで苦痛を与えると」
と、間を置いて言ったキム・テヤンの言葉に、場に沈黙が漂った。




