22 ちょっと、【月並みな動機】
まあ、この神経伝達というか脳内物質の名前は、世の多くの人は、おおよそどこかで、聞いたことがあるだろう。
頻繁でないにしろ、日常的にも、耳にしないことはなくもない言葉である。
続けて、ドン・ヨンファが聞く。
「何だい? すると、“痛みに耐性がありそうな人”っていうのを、“客人”として“招待”している――、“ターゲット”として“拉致”している、ってことかな?」
「おっと……? “そいつ”の確信を、僕に求めないでくれよ。まあ、あくまで、そんな仮説ができるんじゃないか――? 程度の話だよ」
ノア・ネルソンは、「そんな、迫るように聞かないでくれ」とのポーズをしつつも、そう答える。
それで、仮説ということを踏まえ、ドン・ヨンファが、
「――で? そうすると、さ? この“茶会”の“主催者”は――、犯人ってのは、さ? “痛みに耐性のある人間”を、拉致しているのだとすると……、何て、言ったらいいのかな? その……、客人が痛みに悶える姿などを、鑑賞しているんだろうとは思うけど……、その……、対象が、普通の人じゃ満足しない、ってことなのかな?」
と、たどたどしくも想像しながら、言葉にしてみた。
こういうとき、もし、猟奇モノ愛好家のパク・ソユンであれば、“具体的なグロい内容”というのを、サラッと思い浮かぶのだろう。
そのように、考えていると、
「まあ、そういうこと、なんじゃないか? しかし、“痛みに悶える姿を鑑賞”する――、とは、ね? ちょっと、【月並みな動機】な、気がするね」
などと、ノア・ネルソンが言った。
「月並み、だって……?」
ドン・ヨンファはキョトンとしながらも、まあ、そんな気もしなくもない、と思った。
まるで、“あまり深く作りこまれていない猟奇モノ作品の犯人の動機”のように、聞こえなくもない。
また、そこへ、
「その……、何か、無いのかい? せっかく、君たちの――、君のソユンにら招待状が届いたんだからさ」
「き、君のって――!? べ、別に、僕らはそんな関係じゃ……!!」
と、イタズラっぽく言ったノア・ネルソンに、ドン・ヨンファが赤くなって反応する。
まあ、ベタな反応であるが……
別に、仲が良くも悪くもないのだが……、ただ、もし、パク・ソユン本人がこの場にいたら、ジトッ……とした目で「は? 何、言っている?」などと言って、自分たちふたりを殴っているところだろうか――?
また、ノア・ネルソンが言う。
「まあ、それは、良いとして……、その、招待状か何かってのを、見せてごらんよ」
「あ、ああ……、分かったよ」
ドン・ヨンファは、しぶしぶとノートパソコンを開き、招待状の画像を表示させる。
そのまま、ふたりは一緒に見てみる。
「ほうほう……、『断るという選択肢は、貴殿には一切ございませんこと、どうぞ御了承くださいませ』だって……、ずいぶんと、厳しいこと言う主催者様だねぇ」
ノア・ネルソンが、感心した様子で目を通す。
「厳しいというよりも、身勝手だよな」
と、ドン・ヨンファが答える。
それをよそに、
「心躍る春の陽気と……、【痛覚の饗宴】、ねぇ……」
と、ノア・ネルソンは、ナニカが気に留まったように、最後の締めの文を口にしていた。




