20 異能力を以って、悪事を働く個人や組織、ネットワークっていうのは
(2)
時は、遡って――
場面は、釜山へと変わる。
ドン・ヨンファと、その友人こと、ノア・ネルソンは、ギンピギンピのような“ヤバい植物”の、闇の取引・流通について、もう少し具体的に話をしていた。
「まあ、それで……、ソユンの事は置いておき……、話を、裏の――、闇の取引について戻そうか」
と、ノア・ネルソンが前置きして言うと、
「そう……、だね」
と、ドン・ヨンファが、ひと呼吸おきながら頷いて、
「まあ……、ソユンが、ターゲットになっていることは、僕たちにとって、大きな衝撃ではあるけど……、そういった、私情のようなものは挟まずに、いきたいからね……」
「それは、そうだ……」
と、あくまで、冷静かつ粛々と調べたいとの旨に、ノア・ネルソンは同意してやりながらも、
「まあ、とは言え……、君は、少し、熱を入れようとしているように見えるけどね」
と、何か面白ろがるように、ドン・ヨンファに茶々を入れてやった。
「ま、まあ……、いちおう、僕たちは、同じ探偵団メンバーだからね。そ、それに、ソユンも……、彼女自身も、ああいう性格だから、さ? 『受けて立つ――』みたいなこと言って、熱くなってるし、」
「へぇ……」
ノア・ネルソンが、愉しそうに相槌しながらも、
「とりあえず、話を、本題に移そうか?」
「ああ……」
とここで、頭のモードを切り替えた。
ノア・ネルソンが、改めて、
「さっきも話したように、以前からね……、確かに、僕たち、【花好き】の間では、闇のルートというか、取引みたいなことが行われているという噂や、情報というのは……、存在、していてね」
「……」
ドン・ヨンファは沈黙し、友人が続きを話すのを待つ。
「まあ……、違法植物絡みだったり、希少植物の、密輸されたものが大半なんだけどさ……中には、ギンピギンピやマンチニールか知らないけど……、そんな、犯罪や拷問、ちょっとしたテロ行為にも用いることができるようなものも、やはり、この韓国内に入ってきているみたいでね――」
「何だい? そんなに、ザルなのかい? 僕たちの国の警察やら、海洋警備、税関ってのは――? そうだとすると、しっかりしてほしいけどな」
ノア・ネルソンの話す内容を聞いて、ドン・ヨンファが憤ってみせる。
「いや、まあ……、君の、この国に限ったことでは、ないけどね」
と、ノア・ネルソンが、「まあ、そう言ってやるな」と、ドン・ヨンファを宥めつつも、
「――まあ、“いる”んだよ。君たちみたいな人間が“いる”みたいに、異能力を以って、悪事を働く個人や組織、ネットワークっていうのは」
と、雰囲気をすこし豹変させ、そう言った。
「……」
ドン・ヨンファは、沈黙する。
沈黙しつつも、実際に、「そうだな――」とは思う。
時に、モノ好きの同好会のノリのような自分たちなのだが、そんな自分たちですら、映画や漫画顔負けの異能力を持つこと――
また、そのような、“敵というべき存在”を相手にしたことも少なくなかった。
すなわち、ハリウッドや韓国の映画、およびジャパニーズ漫画で描かれるような、特殊な能力やガジェットを持った悪役を想像すればよろしい、かと……
話を再開して、
「……まあ、その、ネットワークがあるのは分かったよ、ネルソン。けど……、そんな、おっかない植物ってのを、誰が―「――おっとぉ! 君も、だいたい想像はついているのに、僕に喋ってくれってかい?」
とここで、ドン・ヨンファが最後まで言いかける前に、ノア・ネルソンが言葉を被せた。
「いや、まあ……、それは、ネルソンの言うとおりなんだけど……、あくまで、“僕の”は、想像の範囲内だからさ……。いちおう、“これ”に関しては、君のほうが詳しい情報を持っているだろ?」
と、ドン・ヨンファは弁解しつつ、続けて、
「――というか、さっき話してた中で、『拷問に――』って言ってたように、その、何か、犯罪組織とか、かな? マフィアや、半グレだったり」
「まあ、“それ”も、あるようだけどね……。ただ、わざわざ、“そんなもの”を拷問に使うってのも……、ちょっと、微妙なところがあるんだよね」




