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【激痛茶館】  作者: 石田ヨネ
第二章 やわやわと調査する

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12 不潔とお洒落の絶妙な境界線




          (2)




 いっぽう、場面は変わって――

 黄色とピンクスーツに身を包んだ実業家、兼SPY探偵団のメンバー、“フラワーマン”ことドン・ヨンファのこと。

 ソウルから南に、日本とも近い都市、釜山に来ていた。

 高台にあり、ガラス張りに海を眺めるダイナミックなオフィスには、よくデザインされたインテリア――古い海岸の住居のような石積みと、石灰の粗い団粒を版築のように築いた構造、その隙間が金継ぎのように金色のパテで埋められているという、無骨ながらも斬新なオブジェのようなインテリアと、国内外の変わった植物が組み合わされ、コーディネートされていた。

 なお、その中にはアクアリウムもある。

 ただ、そこに泳ぐのはアロワナなどといった観賞用の熱帯魚などでなく、砂地に、イシモチといった地味な海水魚が泳いでいた。

 ちなみに、このイシモチだが、日本にも生息しているのだが、こちら韓国のほうでは割とメジャーだったりする。


 オフィスの様子はさておき、ドン・ヨンファは、ここを所有する、ノア・ネルソンという男に会いに来ていた。

 目の前にいる、不潔とお洒落の絶妙な境界線をついたような、無造作にクシャッとしたブロンド交じりのロン毛と無精ひげを伸ばした、なおかつ高級スーツに身を包んだ男。

 このノア・ネルソンだが、イギリスの隠れた貴族の家系であり、道楽的実業家とでもいうべき男である。

 海外の様々の植物、珍しい植物も扱う事業も、彼のビジネスのひとつである。

 なお、ドン・ヨンファの手がけるビジネスにも、韓国内でフラワーアレンジメントや芸術に関するものもあり、そこで彼とのつながりもあるのだ。


 そんな、クシャクシャ・ロン毛の英国人のノア・ネルソンだが、彼とは対照的に小綺麗に整ったマッシュルーム・ヘアの友人に、本場英国の紅茶をふるまいつつ、

「――やあ、久しぶりだな、ヨンファ。今日は、釜山のほうに遊びに来てくれたのかい? どうだい? 夜、美味いイシモチを肴に飲みに行ってさ? そのあと、クラブにでも、」

 などと、久しぶりの再会を喜びつつ、提案してきた。

 余談として、この英国人は、ここ韓国の食の中でも、この大衆魚を特に気に入っているという。 

「ごめんよ、ノア。僕も、君と遊びに行きたいのは山々なんだけどね、……ちょっと、急で、調べないといけないことがあってね」

「おいおい、残念だな。君のほうは、なかなか釜山に来てくれないというのに」

「いや、僕も、こっちでゆっくりしたいんだけどさ」

 言葉どおり残念がるノア・ネルソンに、ドン・ヨンファが詫びる。


「もしかして、例の、探偵団の活動かい?」

「……まあね」

 と、交わしたよ会話から、ノア・ネルソンはドン・ヨンファがSPY探偵団なる活動をしていることも認知しており、また、今回の事情も何となく察していた。

 ノア・ネルソンは続けて、

「――そいつは、例の、“茶会の招待状”のことかな?」

「ああ……、そのとおりさ」

 と、ドン・ヨンファも、意味深に間を置いて答えつつ、

「これは、まあ、推測の……、いや、想像の範囲の仮定なんだけどね、僕たちはこの“茶会”ってので、恐らくこの“主催者”がね……、何か、強烈な苦痛をもたらすものを、“茶”として招待客に振舞っている――って、考えていてね……」

 と、先日の、探偵団仲間のパク・ソユンに届いた、“例の招待状”の画像を見せた。

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