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02 【激痛茶館】  作者: 非常口どん八
第三章 やわやわと調査する

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13 バナナのように有用なものか、単に珍しいものか、あるいはギンピ・ギンピのように危険なものか

「ふ~ん……」

 と、ノア・ネルソンは、しばし眺めてみる。

 そして、

「――これは、神経伝達物質の、化学式かな?」

 と、ピンときた。

「ああ……。君のほうが詳しいだろうけど、ギンピギンピって、オーストラリアにヤバい植物があるよね?」

「ああ……、あの、熱した酸でもかけられて、グラスファイバーで突き刺さされるような、地獄のような激痛が、数か月続くっていう――、触っただけでも“ヤバい子”でしょ?」

 と、陽気に話すノア・ネルソンに、

「……」

 と、ドン・ヨンファはすこし戦慄し、沈黙する。

 また、ノア・ネルソンは続けて、

「ウチや、ウチの商売敵もね……、モノ好きの客のために、たまに、扱うこともある――」

「モノ好きな客、ねぇ……」

「俺の母国イギリスにも、そんな、モノ好きの侯爵がさ? 毒草を集めたガーデンを、造っただろ?」

「ああ、聞いたことあるよ。その話題は――」

 と、ドン・ヨンファは相づちした。

 その英国の伯爵のガーデンに、ギンピギンピなどのヤバい植物があること――

 まあ、これが関係するかは定かでないが、数千キロ離れた南半球の原産地から、植物を移動させる業者やビジネスというのは、存在する。

 まあ、その植物というのが、バナナのように有用なものか、単に珍しいものか……、あるいはギンピ・ギンピのように危険なものかは、置いておき。


 ノア・ネルソンのように正当な、表の商売として行っている事業者がいるということは、当然として、

「まあ、それで……、いちおう法律に基づいた取引はさておいて……、違法の、闇の取引というものについては? 実際、どうなんだい?」

 と、ドン・ヨンファは、その辺の事情が気になった。

「ああ……。ヨンファの想像するとおり、“ある”よ……」

 ティーカップを手にしながら、ノア・ネルソンが、意味深そうに答える。

「……」

「……」

 ふたりはともに、沈黙する。

 後ろでは、沈黙の間、水槽の流水の音とともに、イシモチが気ままに泳いでいながら。


 沈黙を破って、ノア・ネルソンが、

「話を、先に進めようか? ヨンファ、君は――、君たちは、その、ギンピギンピやジャイアントホグウィードといった、触っただけでもアウトな植物の“裏でのやり取り”っていうのが……、例の“茶会”に関して、何か、ヒントになると考えているんだね?」

「ああ。そのとおりだ……。まあ、その他の毒や劇物も、恐らく“茶会”でふるまわれているんだろうけど……、とりあえず、植物に絞ってね」

「分かった。この件に関して、知っている限りの情報は、君に教えるようにするよ」

「ありがとう。助かるよ」

 ドン・ヨンファは、礼を言う。

「まあ、こんど釜山に遊びに来たときは、夜飲み行くのに付き合ってくれよ」

「OK」

 と、ふたりは言葉を交わしつつ、

「ところで? また? 何で、君たちは、こんな事件に興味を持って……、力を入れて調べようと思ったんだい?」

 と、ノア・ネルソンは、改めて興味を持ったように聞いた。

「ま、あ……、変わったことを調べるのが、好きなんだろうね……。ウチの、集まりは」

 ドン・ヨンファは、パク・ソユンに招待状のことは、まだ隠す。

「へぇ……」

 と、相づちしながら、ノア・ネルソンは空になったティーカップを置いた。

 また、ドン・ヨンファはスマホを取り出して、画面見せる。

「ん? 何を、視てんだい?」

「ああ、いま、ソユンが動画配信しててね」

 と、そこには、エレガントな春のファッションで、可愛くもイカしたDJプレイをする、DJ・SAWこと、パク・ソユンの姿があった。

「ああ、ソユンか。相変わらず、イカした子だね」

 ノア・ネルソンが、言った。

 彼も、パク・ソユンとは面識があった。

「彼女も、メンバーだったよね? その、君たちの探偵団の」

「うん。そうだよ」

「彼女、ポーカーとか、好きなんでしょ? こんど、三人で、いっしょにカジノに行こうよ」

「ああ、いいね」

 と、軽い会話を挟みつつ、

「それで? 彼女が、ソユンが……、どうしたんだい?」

 とここで、何か察したように、ノア・ネルソンがドン・ヨンファに聞いた。

「ああ……。ノア、たぶん、君は、察しっちゃたよね」

「……」

 と、ひと呼吸おいて、

「そう……、ソユンに、例の、招待状が届いてね」

 と、ドン・ヨンファは、おそるおそる打ち明け、

「……ん、ふ」

 と、ノア・ネルソンが、それを受けとるように、相づちした。


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