表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5コイチ  作者: 稲田心楽
121/123

2ページ目

 

 静まり返った部屋で、彼が発した言葉は意外なものだった。



「俺を仲間にしてくれないか……」


「……」



 メンバー全員を見渡した──まるで時間が止まったみたいに固まっている。確かに彼は、一時代を築いたドラマーである事は知っているが、あまりに唐突過ぎて思考が停止した。



「何言ってんすか? あんたが昔凄かった事は知ってるよ。でも、あんたのせいで幸太は死んだんやっ!」


「けっ健太郎さんっ!」



 殴りかかろうとした健太郎を、身体ごとぶつけて止めた。



「駿っ! 止めるな! 幸太はいつもあんたの事を心配してたわっ! 酒なんかに溺れやがって! ふざけんなよっ!」


「健太郎さん! お父さんのせいじゃないよ。一番苦しんでる人だよ。それは言っちゃだめだ」



 勇気も身体を張って健太郎を止めにいった。



「健太郎さん! お父さんも自分を責めない日はなかったはずだよ!」



 幸太を抱きしめたまま動かなかった心が、涙を拭いながら幸太の親父さんにゆっくりと近づいた。



「おっちゃん、 昔メジャーにおったらしいね。正直どれぐらいのスキルなん? 全盛期のおっちゃんと幸太やとどっちが上なん?」



「……幸太の方が上だ。技術では」


「技術を補う何かはあるみたいな言い方やね」


「……曲は全て入っている。今すぐにでも演奏は可能な状態に仕上げてある」



 幸太のパソコンに、ワンマン用の曲順と、各パートの練習用データを見つけて練習していたらしい。幸太の為に、幸太が愛したバンドの為に、お酒を断ち、練習に取り組んだと言った。しばらく沈黙が続き、心が親父さんの手を握った。



「……豆だらけ。幸太と一緒」


「たっ頼む! 幸太の代わりに叩かせてくれ!」



 この部屋を訪れた時から、この間とは雰囲気がまるで違っていた。憑き物が堕ちたような清々しさを感じた。ただ髭を剃り、短髪にしたという単純なものではない変化が確実にあった。



「幸太は喜ぶだろうな……」



 シンプルにそう思った──きっと幸太は、親父さんが叩く姿を見たいに違いない。



「……メンバーに入ってもらおうと思うが、みんなはどうだ? 幸太がどんな顔するか想像してみてくれ」


「幸太は絶対かじりついて見ると思うよ。私は」


「親父さんのプレイを生で見たいって言ってたしね。幸太君」


「……」



 健太郎だけ俯いたままだった。複雑な思いでいるんだろう。だが、バンドにとってもこれ以上ないドラマーである事は間違いない。



「健太郎さん、どうすか?」


「……わかったよっ! 幸太が喜んでる顔しか思い浮かばんっ! 駿っ! なんかムカつくっ!」


「あっありがとう! 皆さん、本当にありがとう!」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ