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静まり返った部屋で、彼が発した言葉は意外なものだった。
「俺を仲間にしてくれないか……」
「……」
メンバー全員を見渡した──まるで時間が止まったみたいに固まっている。確かに彼は、一時代を築いたドラマーである事は知っているが、あまりに唐突過ぎて思考が停止した。
「何言ってんすか? あんたが昔凄かった事は知ってるよ。でも、あんたのせいで幸太は死んだんやっ!」
「けっ健太郎さんっ!」
殴りかかろうとした健太郎を、身体ごとぶつけて止めた。
「駿っ! 止めるな! 幸太はいつもあんたの事を心配してたわっ! 酒なんかに溺れやがって! ふざけんなよっ!」
「健太郎さん! お父さんのせいじゃないよ。一番苦しんでる人だよ。それは言っちゃだめだ」
勇気も身体を張って健太郎を止めにいった。
「健太郎さん! お父さんも自分を責めない日はなかったはずだよ!」
幸太を抱きしめたまま動かなかった心が、涙を拭いながら幸太の親父さんにゆっくりと近づいた。
「おっちゃん、 昔メジャーにおったらしいね。正直どれぐらいのスキルなん? 全盛期のおっちゃんと幸太やとどっちが上なん?」
「……幸太の方が上だ。技術では」
「技術を補う何かはあるみたいな言い方やね」
「……曲は全て入っている。今すぐにでも演奏は可能な状態に仕上げてある」
幸太のパソコンに、ワンマン用の曲順と、各パートの練習用データを見つけて練習していたらしい。幸太の為に、幸太が愛したバンドの為に、お酒を断ち、練習に取り組んだと言った。しばらく沈黙が続き、心が親父さんの手を握った。
「……豆だらけ。幸太と一緒」
「たっ頼む! 幸太の代わりに叩かせてくれ!」
この部屋を訪れた時から、この間とは雰囲気がまるで違っていた。憑き物が堕ちたような清々しさを感じた。ただ髭を剃り、短髪にしたという単純なものではない変化が確実にあった。
「幸太は喜ぶだろうな……」
シンプルにそう思った──きっと幸太は、親父さんが叩く姿を見たいに違いない。
「……メンバーに入ってもらおうと思うが、みんなはどうだ? 幸太がどんな顔するか想像してみてくれ」
「幸太は絶対かじりついて見ると思うよ。私は」
「親父さんのプレイを生で見たいって言ってたしね。幸太君」
「……」
健太郎だけ俯いたままだった。複雑な思いでいるんだろう。だが、バンドにとってもこれ以上ないドラマーである事は間違いない。
「健太郎さん、どうすか?」
「……わかったよっ! 幸太が喜んでる顔しか思い浮かばんっ! 駿っ! なんかムカつくっ!」
「あっありがとう! 皆さん、本当にありがとう!」




