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5コイチ  作者: 稲田心楽
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3ページ目

 

 『Rocket Rock』──収容人数100人。近畿で5本の指に入る老舗ライブハウス。



「ぶっつけ本番だけど、俺達なら余裕だろ?」



 ステージの脇で、メンバーと右手を重ねた。満員御礼の中、初めてのワンマンライブが幕を開けようとしていた。



「何やねん。緊張してんか? 駿」


「するわけない。余裕だよ。ていうかすでに暑い」


「駿、もうずっと馬マスクの可能性あるよね」


「心? タイミングがわからない。素顔をさらけ出すタイミング」


「私以外、全員被ったら?」


「心ちゃん、ボーカルは?」


「勇気はいい。駿、健ちゃん、幸太パパはこれからマスク!」


「いやいや、健ちゃんに呼び方変わってるやん」


「とりあえず幸太に届くように! ファンに届くように! みんなっ!  頼みますっ!」



 右手を突き上げて、メンバー全員で叫んだ。幸太の親父さんは胸元のネックレスを握りしめていた。



「この中に幸太を入れてきた……」



 銀色の小さな小瓶を見せてくれた。アンティークな感じのお洒落な小瓶だ。



「いいすね! 俺も今度欲しいす!」


「是非! 幸太に下手な演奏を見せられないから、肌身離さず持つことにしました……」


「私も欲しい! 6人で5コイチや!」


「おやっさん! 俺にも頼んますわ」


「僕にも後でよろしくお願いします!」


「はい! 今日は何十年ぶりか忘れたぐらい久々のライブですが、1曲目から飛ばしていくんでどうぞよろしくお願いします!」


「行きますかっ!」



 客席から声援と手拍子が大きく鳴り響いた。



 心が言った──『6人で5コイチ』だと。幸太はいつでもそばにいる。いつものように、ベースボールキャップを斜めに被って。







「駿さん! 頼みますねん!」



 メンバーがステージに向かい、一瞬一人になったステージ脇で、後ろから声が聞こえた気がした。





「いつもどおりやるだけさ。ていうか、相変わらず関西弁下手だな」





 後ろは振り返らず、ファンの待つステージへ向かった。








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