聖女召喚に……巻き込まれなかった? 4
乗ってた。間違いなく乗っていた。
朝から一緒に千葉の予約していた海辺の式場で二人だけの結婚式を挙げて昼食を食べた後に海辺を散策してゆっくりとこっちへ帰ってきたのだ。
そして俺のマンションに行く途中で。
玖路は口元に手を当てると
「……あの時……一緒にバスに乗ってマンションに戻る途中だった。けど、足元に変な円陣が出てすっげぇ眩しくなって俺は千穂を抱きしめて守ろうとしたけど……ふっっと……まるで空気に溶けるように消えて……」
と呟いた。
「その後、凄い衝撃があって一瞬意識を失って……気付いて救急に電話を入れている間に気を失った」
そうだ。
目の前で消え去ったのだ。
玖路は顔を歪め「くそっ」と顔を伏せて拳を握りしめかけてパッと手を広げると
「……なぁ、俺。もしかして軽症者か?」
と顔を上げて真司を見た。
真司は冷静に大きく頷いて
「神木、お前は気絶していただけだ。三日間な」
と答えた。
「ただ、お前の周囲や服は血塗れだったんだがな。お前の血であることは違いなかったらしい……血の量から考えればお前は既に死んでいる状態だったんだよな」
だが気絶しているだけだったのだ。
そう言うと椅子にトンの凭れて
「そういう意味では不可解なところが多い事故ではあった」
と告げた。
「そもそもお前の他の2名の軽症者が『異世界召喚に巻き込まれた』って言ったのは魔法陣が光ってサラリーマンの男性と女子学生がスゥと消えるのを見たかららしい」
そういう意味では玖路の高科千穂美が消えたという話にも通じるものがある。
真司はそう考えてチラリと玖路を見た。
「あのさ、普通はお前も一緒に消えるって流れだよな? 俺の妹のさやが読んでいる異世界恋愛召喚ファンタジーものならな」
一緒に召喚されて『巻き込まれました―――』と言いながら二人で異世界での苦難を乗り越えている。
今流行りのラノベ異世界召喚もののセオリーだ。
なのに。
なのに。
真司は鬱~と俯く玖路を目に
「……そういう間違い召喚すらされないほどの……モブだったんだな」
と思わず心で突っ込んだ。




