聖女召喚に……巻き込まれなかった? 3
高科千穂美は玖路の住んでいた文京駅の近くにある愛らしい洋菓子店のパティシエであった。
こぢんまりとした店はスタッフも少なくパティシエであっても昼時には販売に回ることがある。
そこで玖路は千穂美と出会ったのだ。
「高校出てお巡りさんになるの? 地域を守る人ね! 頑張って!」
木漏れ日のような明るく鮮やかな笑顔に一目ぼれをした。
2年付き合って彼女の両親や兄の反対を押し切って結婚式を挙げた。
明日には二人で区役所へ行く予定だった。
二人の愛の結晶の千玖と三人で幸せに暮らす……はずだった。
玖路はフワリと目を覚ますと視線を動かしてぼんやりとした人影で止めた。
「千穂……ここ、は?」
「あー、悪いな。俺は高科さんじゃねぇし、女でもない。ここは文京中央警察病院だ。お前、マジ良く生きてたな」
警察官の制服に身を包んだ文京中央署東都大西交番の相方、浅草真司が応えた。
何で浅草が? というか、ここは何処だ? と玖路は目を瞬かせてはっきりした視界の中にいる浅草真司を驚いた表情で見つめた。
「な、んでお前が?」
真司は大きく安堵の息を吐き出し
「そりゃ、相方がバス事故の当事者で救急で運ばれたって言ったらなぁ……本当は休暇だったのに出になってた俺は当番の神崎さんにペコペコ頭を下げて事情聴取がてら来させてもらったって訳だ」
と言い、ポケットから手帳を出すと
「お前が乗ってたバスだがな。運転手が1名で15名が乗車していて、運転手は死亡、お前を含めて3名が軽傷、4名が重症で、残りの8名が死亡だった」
と言い、少し思案する表情を浮かべた。
「その生存した中の軽症者の2名が『異世界召喚に巻き込まれた』と錯乱しているんだが……車内で何があった?」
正に事情聴取だ。
だが、それよりも聞きたいことがある。
玖路は身体を起こすと
「それより! 千穂は? いや、千穂美さんは? 今どこに?」
と聞いた。
真司は襲い掛かってきそうな勢いの玖路に思わず両手で押さえて
「いや、反対に高科さん、乗っていたのか?」
と聞いた。
玖路は目を見開いて真司を見つめた。




