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第7話 共謀共同正犯。

「ハインツ」

「なんだい?オレリア」

「ここなんだけどさ……」


2年生に進級して、ハインツは宣言した通りAクラスに上がってきた。権力だの家名だのじゃなく、成績順でクラスわけが決まる割とシビアな学院。

ハインツは驚いたことに1年の後期の試験は首席だった。


私たちは打ち合わせ通り、お付き合いを始めた。(もちろん、振り、だけど)

2年生になると選択できる、領主経営コースも取った。

登校はハインツがうちの屋敷まで馬車を回してくれるし、お昼ご飯も一緒。放課後もハインツの屋敷に寄ってから家まで送り届けてくれる。


まあ……周りの反応は思った通りのものだった。1年生になったハインツの婚約者のリリアーヌ嬢が2年生の教室の前の廊下でおろおろしているから、

「まあ、お互い婚約者がいるというのに、はしたない」だの

「リリアーナ様がおかわいそう」だの…


思いもかけない誤算もあって、私の婚約者のクレマンが、ハインツの婚約者のリリアーヌ嬢を慰めて、親身に相談に乗っているらしい、と、エルザが教えてくれた。


お二人はなかなかお似合いだと思う。これは、ヒョウタンから駒?かもしれない。クレマンはいい人だもの、リリアーヌ嬢を幸せにしてくれるかも。そんなことを思う。


「あんたたち、何企んでるの?」

と聞かれたが、親友であるエルザにもさすがに秘密である。



今日も私とハインツは頭をくっつけんばかりに…甘く囁き合う…のではなくて、

「は?こんなこともわからないのか?」

と、領主経営コースの帳簿を教えてもらっている。教え方もなかなかうまい。そもそも私にこのコースは必要じゃないと思うんだが、

「よく考えろ?オレリア。引き出しが広い方が生きていく上で便利だぞ?」

ハインツにそう言われてしまうと、そうかもなあ、と思って。


本来の貴族令嬢の教育と言ったら、嫁ぎ先で旦那様に頂くお金をやりくりして屋敷を整える、というものだ。先行きが不透明な私は、学べるものは学んでいこうと思う。

ハインツの言う通り、どこかで役に立つかもしれない。



***


朝、俺がオレリアを迎えにセレスト伯爵家の屋敷に着くと決まったように彼女の弟が出てきて、品定めのように俺を見る。何か言いたそうだな。

「なんだ?ぼくちゃん。俺がいい男だから見惚れてんのか?ん?」

と、あおっておく。弟の舌打ち。いつもの光景になってきた。


彼女は両親には俺のことは、友人で、お勉強を見ていただいているの、と伝えてあるらしい。俺の学年首席も役に立った。


今日もみっちり化粧をしたオレリアを隣に乗せて、彼女の苦手なフール語のおさらいをしながら学園に向かう。

学院の正門の前で馬車からオレリアの手を取って降ろす。彼女のカバンも持ってやる。そこまでしなくてもよくない?と彼女は言うが、まあ、ギャラリーの皆様に熱烈アピールだと思っていただいて差し支えない。


放課後は俺の家の屋敷に寄る。

父親がいたりすると、じろじろ見られるが、オレリアはへっちゃららしい。

「あらまあ、おじさま、お邪魔します。私、ハインツにお勉強を見ていただいていますの」

と、堂々としたものである。


父親が入れ違いのように出て行ってから、秘書と俺とオレリアの3人で父親の執務室に入って帳簿を漁る。俺の秘書官も初めはけばけばしい化粧のオレリアに引き気味だったが、慣れたらしい。そう、人間て慣れる生き物なんだ。俺もケバイ女は苦手だったが、慣れた。


領地の二重帳簿を見つけたのはオレリアだ。本棚で自分好みの本を探していた彼女が引き出した植物図鑑の外箱、その中に父親が隠した帳簿が入っていた。


「二重帳簿か。やっぱりな」

「しかも坊ちゃま…税率が…」


領民に課せられていた税率が、国で定めた最高税率を上回っていた。俺に届いていた帳簿はまともなものだったが、もしかしたら、とは思っていた。まじめな領地の事務官も<領主>には逆らえなかったか。


俺は…頭を抱えることになった。法定を超える税率違反は大罪だ。

俺が18歳になるまで、と思っていたが、領地自体が国に取り上げになる可能性がでてきてしまった。


秘書と2人で隠し帳簿を見ていたら、今度は父親の寝室をながめていたオレリアが、額縁の絵画の裏から何やら見つけてきた。

「見て見て!ハインツのお父様、投資に成功しているんじゃない?ものすごく儲かっているみたいよ?」

ノートを破ったようなメモ書き。

日にちと、金額が書き込まれている。

最初のうちは小さな金額だが、プラスになったりマイナスになったりしながら、金額が増えていく。

9月は2000万ガルド→マイナス1800万ガルド。

先月の、10月4日は1000万ガルド→プラス2300万ガルド。

今月、11月5日は…3000万ガルド?なんのことだ?


「あれ、じゃない?エルザが言ってたわ、違法賭博が流行っているんですって。それ?」

「……」

「なんでも儲けさせながら掛け金を上げていくんでしょう?しまいには家屋敷や娘まで掛けちゃうらしいよね?」

「な…なんで?エルザさんが?そんなことを?」

「あら、だってあの子は新聞記者希望なの。彼女の婚約者も<あれ>だし、父親の仕事が仕事なんで、家じゅうに反対されてんのよ?情報漏洩だと思われるといけないから。この前遊びに行った時ももめてたわ」

「……」

「ハインツ?エルザのことはエルザさん、なのね?」


(いや…そこじゃないぞ、オレリア。違法賭博も大罪なんだ!まあ、まだ憶測だが…あまりいい予感はない)


「オレリア…俺にエルザさんの父上を紹介してくれないか?」


「え?いいわよ」


なんてことなくオレリアは言ってのけた。






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