第6話 共謀共同正犯のススメ。
「私の婚約者のクレマンはねえ、いい人なんだけど、いい人過ぎて私の弟にはかなわないと思うのよね。弟は自分より身分の低い家をバカにしている節があるし」
「へえ。じゃあ、歴史のある格上の伯爵家なんてどうかな?」
「うーん、どうかなあ。腕っぷしと、策士の能力も上じゃないとね。なに仕掛けてくるかわかんないし。やっぱり私が就職して家を出るのがベストよね」
いつものように時計台の下で座った自分の膝で頬杖をついているオレリアが遠い目をする。俺の話聞いてる??
「バカだなあ、お前、よく考えろよ?どこまで行っても姉弟だろう?王城に就職して寮に入ったって、家族は申請したら部屋まで入れるぞ?」
「……あ……」
「離れて住んでいると、親が病気だとか呼び出しやすくなるしな。思うつぼだろう?」
「……」
どんな想像をしているのかわかりやすく、オレリアが眉間にしわを寄せている。
「とりあえず、俺と付き合うってのはどうだ?」
「は?」
心底あきれるような顔でオレリアが俺の顔を見る。その後…本当に嫌そうに目を細めた。失礼な奴だ。
「いいか、良く聞け。振りで良いんだ。振りで。いい男に悪女。付き合ったら無敵だろう?」
「……どこが?しかも、悪女って……私のこと言ってる?」
「いいか、よく考えろ。お前はクレマンを安全に婚約破棄させたい。どうして婚約破棄したいのかの理由は親に言えない。俺は諸事情あってリリアーヌと婚約破棄したい。俺はお前の弟の策略ぐらいならかわせる自信があるし、お前はこんなふうにこそこそしなくてもよくなる。堂々としていればいいんだ。俺が18歳になって爵位を継いだら正式に婚約して、俺の領地にこもっていればいい。働いた分は給金も払おう」
「…それから先はどうするのよ?」
「ま、ほとぼりが過ぎたら婚約解消して…3年ぐらい?好きな男でも見つけて結婚したらどうかな?俺が探してやってもいい。その頃にはお前の弟だって大人になっていて、お姉ちゃん子じゃなくなっているだろ?」
どうだ。って感じで俺が理論を展開してみせると、しばらく考え込んでいたオレリアが、
「うーん。その策略を受け入れるには、問題が一つある」
「なんだ?」
「私はAクラスから落ちるつもりはないから、あなたがBクラスから上がってきてもらわないとね?私の身の安全、守ってくれるんでしょう?クレマンもBクラスにいるって言うのにさすがに堂々とは振りでも付き合えないわよ?」
「はん。いいよ。Aクラスになればいいんでしょ?父親に出来の悪い息子、って思われたくて成績下げてただけだから」
「……ホントウニ?」
目を細めて俺を見ていたオレリアの目が、一層細くなる。
「え?なに?俺、疑われてる?」
「じゃあ、まずあなたがAクラスに上がって来てヨ。そしたら考えるわ」
「はいはい」
リリアーヌとの婚約解消は両家の父親がうんと言わないだろうから…娘に弱そうなあのタヌキ父親に直接娘に泣きついてもらおう。あの子には何の落ち度もないが、だからこそ、俺はあの子に恨まれたい。あんな男と結婚しなくて良かったと思うくらい。すっきりさっぱり忘れられるぐらい。
俺が領主になった頃は、領地経営は何ともならなくなっているかもしれない。なにせ、あの手この手で父親が金を引き出している。王都の屋敷も抵当に入った。
権力…って曲者だ。
そして今それを使えるのは俺の父親だ。
じりじりと焦りながら…それでもできる限りの証拠を集めながら…俺はやっと17歳になる。




