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第4話 ハインツの発見。

ハインツがオレリア嬢の秘密の場所を見つけたのは偶然だった。


昼休みになってしまうと他の女子生徒が群がって来て面倒くさいので、保健室の先生にほんの少しお願いをして、授業中に呼び出してもらった。今までの様にあんまり堂々とサボっていると学院の出席単位が足りなくなりそうだったので。


保健室に向かって廊下を歩いていると、前を歩いている亜麻色の髪の乙女を発見。

(おやおや、噂のオレリア嬢もサボりかな?)

後姿を目で追っていると…不意に見失った。

(へえ)


見失ったあたり、並んだ柱の裏をちらりと覗く。

(こんなところで男と待ち合わせかよ?)


学院内での情事の真っただ中を覗く趣味はないが、どんな男と遊んでいるのか人並みに興味はある。その道では有名な子らしい。

(廊下の柱の裏とか…すげえスリルがありそう)


はっきりとした目鼻立ちに、厚化粧。キツイ物言い。成績は優秀だが、教官に色仕掛けだとか、テスト問題を横流ししてもらったと聞いたこともある。


(まあ、噂だが)


その噂を裏付けるような、制服のブラウスがきつそうな豊かな胸と、キュッとくびれたウエスト。よく手入れされた亜麻色の髪は何時も綺麗に巻いてある。そして…俺も他人のことは言えないが……サボリ魔。それが許されているのは俺と違って成績優秀故らしい。一度だけ、俺が保健の先生と保健室でイチャイチャしている時に入ってきたあの子に、呆れられるような蔑むような目で眺められたことがある。すぐ出て行ったが。


(さて、今度はそのお返しかな…)

ハインツはほんのいたずら心で、柱の裏を覗き込んだ。

「え?」


オレリア嬢はずい分先を歩いていたが、何本目の柱かは数えていた。間違いなくここだったが…どこにもいなかった。ふっと消えてしまったような…キツネにつままれたような感覚で思わず二度見する。

「ん?」


ハインツは壁の後ろの柱に隠れるように、保護色の扉を見つけた。



***


「私は何もしてないわよ?外野が騒いでいるだけで」

「うーん。君にはその外野を騒がしくしてしまう自覚はあるのかな?」


二人でかろうじて日陰になっている出口の段差に腰かけて、切り取られた青空をぼーっと眺める。

脱いだジャケットに腰を下ろしているオレリア嬢はブラウス姿。胸が相変わらず大きくて、誘惑してんのかと思ったこともあるが……話しているとどうも、思ったより無防備なだけ、のようだ。自覚がないって恐ろしい。しかも噂と違って、いつも暇さえあれば勉強している。化粧の派手さとアンバランスだ。


(…まあ、胸の大きさや化粧の濃さと、真面目な性格は必ずしも反比例するわけではないか)


俺は選択として、このよく読み切れない女を遊び相手ではなく、話し相手に選んだ。

最初は警戒されたが…まあ確かに、この秘密の場所で襲われたら、助けは来ないよな。

「俺、めんどくさそうな女とは遊ばないから、安心して?」

そう言って笑った。オレリアはうんうんと頷いて納得してくれたようだ。でも、なんだかこいつの考えは、明後日の方向をみているような?


「でもな、お前、よく考えろ?こんな場所ほかの男に見つかったら、助けも呼べないぞ?危険すぎないか?」

「あら。ご心配ありがとう。護身術は人並み以上の訓練を受けているのよ?なんだか小さいころから襲われそうになることが多くって」

もぐもぐとサンドウィッチを食べながら、なんてことないようにオレリアが言う。


(あ…俺、冗談でも手を出さなくてよかった)

ハインツは笑顔を崩さずに、心底ほっとした。


「それよりあなた、もう少し真面目に勉強したら?歴史あるレオニー伯爵家の跡継ぎがお粗末なものであっては良くない気がするけど?」





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