3-5:さびしさは鳴る
――ばぁん!
「よぉーし、有象無象ども! 刮目しろ!」
「俺様は転校生、朝倉新月。令和最強のロックスターとして、歴史にその名を残す男ッ!」
「好きなものは勿論音楽。趣味であり生き様は歌うこと!」
「一言アピールなんてしゃらくせえもんはねえが、代わりに一個予告しといてやる」
「手始めに、六月の萩月祭のバンドステージ」
「俺様はそこにトリで出て、伝説として語り継がれるような最高のライヴを演ってやる!」
「お前たちは俺様がこれから紡ぐ伝説――その偉大なる一歩の目撃者となるだろうっ!」
「サインと写真なら今のうちだ。将来大いに自慢しろ」
「この俺様と同じ時代を生きたことをなぁ!」
「あ――――――――――――――っはっはっはっはっ!」
× × ×
死んでほしいんだけど、いい?
『もう死んでるよ?』
そうだったなあチクショウ!!! この無敵女が!!!
おまえは死んでるからいいかもしんないけど、おまえが散らかすだけ散らかした後の現実をぼくは生きてかなきゃなんないんだぞ!?
どうするんだよマジで!? ぼく滅茶苦茶やべー奴じゃんか!?
『別にいーじゃーん。ロックスターなんだからあれぐらいカマさないとねー?』
ぼくはロックスターじゃないッ! ていうかロックスターだとしても社会性は大事でしょ!?
二度とやらないでよ!? こんなこと!
『はぁーい。反省してまぁーす』
くそっ、絶対口だけだ。顔に出てる。
しかしルミナに任せちゃったぼくがそもそも一番悪いから、自業自得ではあるのか……。
ぼくは深いため息をついて、午前中の休み時間はずーっと机に突っ伏して音楽を聴いて過ごしていた。
『おっ♪ 新月、お客さんだよー?』
……お客さん?
ぼくはイヤホンを外して、机に突っ伏していた顔を上げる。
いつの間にかぼくの机に肘と顔を置いていた竜胆さんと、またもやド近で目が合った。
「よっ」
「うおっ……!?」
「……なーんよその声? バケモンでも見たみたいに」
むっ、と竜胆さんが唇を尖らせる。
「言うとくけど、あんたがいっちゃんバケモンやで?」
「それは本当にそう」と、首がもげそうなぐらい頷く。
「やらかしちゃったよ、本当に……」
気を抜くとため息が止まらず、リアルに頭を抱えてしまう。
そんなぼくを見て、竜胆さんは目をまん丸にした。
「な、なんや……? さっきとは別人みたいやん」
本当に別人なんだよ。ぼくはやってない!
……なんて言っても、もっとヤバい奴認定されちゃうだけなのが難儀だなあ。
「こ、これが素だから。さっきのはその……勢い余ったというか」
「勢い余った……?」
「こ、心の中の虎が暴れたっていうか、好きなことだとつい熱くなっちゃうみたいなね? ほら、人間誰しもそういうことってあるじゃない!?」
言い訳があまりにも苦しい。
こんなんで納得する奴なんて、
「分っかるわぁ……!」
「えええ……」
「あるでなぁ、そういう瞬間。うちも若い頃はそうやったわ」
「いや……同い年でしょ?」
「せやったわ」
あっはっは、と笑う竜胆さん。
どうもノリでボケてくれたみたいだ。笑いに昇華してくれてめちゃくちゃ助かる。
「でもちょーっとハリキリすぎやね。転校初日であんだけカマしたらぼっち確定やで?」
「まあ……ねえ」
でもよくよく考えたら、今までカマさなくてもぼっちだったんだよな。
正直ノーダメージかも、なんて考えてたら、
「そこでや」
竜胆さんが咳払いをする。
「しゃーないから、うちが友達なったろか?」
「えっ?」
「しゃーなしやで? ほんましゃーなし。だってこのまま放っといたらあんた、寂しゅうて孤独死してまうやん?」
だったら今頃もう死んでるわ。舐めるなよぼくの人生を。
ただ、申し出は素直にありがたい。
「いいの? じゃあ、ぜひお願いします」
ぼくが頭を下げると、
「……!」
竜胆さんの表情が、散歩前の犬みたいにぱーっと明るくなった。
「うち、竜胆花音。花音でええで?」
「いや流石にそれはハードルが……。竜胆さんで」
「えぇー。せめて『さん』はとってよ」
「……り、竜胆?」
「ん。それでええ。うちも朝倉って呼ぶわ」
やり取りを交わしていると、周囲から視線をひしひしと感じた。
最初はてっきり、竜胆が美人だから嫉妬されてるのかなと思ってたんだけど……、
(な……何だ? 何でみんな、うんうん頷いてるんだ?)
そりゃあそことそこだよね、みたいな空気感は一体なに?
「朝倉、せっかくやしお昼食べに行けへん?」
「あ……う、うん。もちろん」
「よっしゃっ! ほんなら学食行こ!? うちが案内したる! オススメもあるし!」
何だか竜胆も妙にぐいぐい来るし。このハイテンションは何なんだろう。
違和感の正体が掴めないまま、ぼくは竜胆に連れられて食堂に向かう。
……そこでまたしても、ぼくは色々とおかしなことに遭遇するのだった。




