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番外編 バレンタインデー①


「今度のバレンタイン、好きな人に告白しようと思ってるのー!」

 

 とある日の放課後、わたし悠希つづりはvirtual部の配信部屋へと向かうため、廊下を飛び跳ねるように歩いていた。

 昨日の配信も、とっても楽しかったなぁ。今日の配信も楽しみだ!と心踊っていたところに、そんな声が聞こえたのだ。

 

「そっか。もうすぐでバレンタインなのか」

 バレンタインは、好きな人へチョコをプレゼントする日、というが、わたしは全く好きな人へチョコを渡した経験がない。好きな人がいなかった訳では無いのだが……

 

 しかし、チョコを全く用意していなかった訳では無い。

 念の為言うが、()()()()()()()()()()とかでは決してない。

 当然、友達にあげるためだ。所謂(いわゆる)、友チョコというやつで、本命チョコなどという大それたものでは全くない。

 

 今年は誰にあげようか。クラスの友達に渡すのはもちろんだが...

「みこ先輩と紫苑先輩にもあげたいな...」

 いつも大変お世話になっている方々だし、こういうイベント事を利用して、ぜひ渡したい...!

 

 しかし...

「何を用意しよう?」

 そんなことを考えていると、virtual部の教室までたどり着いてしまった。

 考えるのは後にしよう。まずは配信だ!

 今日は、みこ先輩とのコラボ配信。少し緊張はするが、すごく楽しみである。




「コラボ配信ありがとう!とっても楽しかったぁ」

 配信が終わって、みこ先輩は満面な笑顔で微笑んだ。

「楽しかったですね!バレンタインネタが多かったですが」

 この時期は、仕方ないのだろう。きっと全国の学校で学生たちが、誰が誰に用意するのかなど話題にしている頃だろうから。

 男子学生は、今年はどれだけ貰えるか誰に貰えるかと気にしている者も少なくないと思う。

 

「チョコ欲しいって言うリスナーさん多かったよね。リスナーさんにも、チョコを用意してあげなくちゃ♪」

 と、イタズラっぽく笑うみこ先輩。

 そうは言いつつ、チョコでは無いなにかをみこ先輩は用意するのだろう。

 もし、チョコを用意したとしてもみこ先輩のことだ。とても可愛い物を用意するのだろう。例えば手作りとか……

 手作り……なるほど、それもいいかもしれない。

 今年は、手作りチョコに挑戦してみよう!


 

「それじゃまた明日ね!」

「はい!お疲れ様でした!」

 寮へとたどり着いたわたしとみこ先輩は、それぞれの部屋へと入っていった。

 荷物を起き、早速パソコンを立ち上げる。

 

「どれがいいかなぁ……」

 ネットで『バレンタイン 手作り』と検索する。

 すると画面には検索結果が表示され、チョコを使ったたくさんのレシピが掲載されていた。

「うーんいちばん簡単そうなのは生チョコだけど……」

 やはり、もう少し凝ったものがいい。

 

 しばらくスクロールして見ていくと、とあるレシピが目に付いた。中を開いてみると作り方も時間はかかるが簡単そうだった。

「これ…いいかも……!」

 これなら私にも作れるかもしれない!


 

 次の日、学園は休みだったので買い物に行った。当然、材料を買うためだ。

 失敗してしまった時のために、食材は余分に用意しよう。あとは道具を買って……



 

 こうして迎えたバレンタイン当日。

 友達には、綺麗に包装されたクッキーを手渡した。喜んでもらえていたが、皆から貰うのはほとんどが手作り……しかも見た目が綺麗……

 自分の実力が不甲斐なく思う。


 放課後、肩を落としたままvirtual部の教室へと向かった。

 近づくにつれ、胃がキリキリと痛む。今日はこのまま帰ってしまおうか……

 扉の前まで来てそんなことを考えていると、扉がガラッと開いた。

「あ!つづりん!何してるの?ほら入って♪」

「あ、ちょ先輩っ」

 そう言ってみこ先輩は、わたしの腕を引っ張って中に連れ出した。

 

「どうしたんですか?先輩」

 教室には、紫苑先輩もいた。珍しい。一体どうしたのだろうか。

 いや、居てくれた方が本当は助かる。だって紫苑先輩にもバレンタインを用意しているのだから。

「見てよこれ!紫苑がね、わたしたちにバレンタインチョコを用意してくれたの♪」

 

 それは、『閑みこ』と『悠希つづり』のそれぞれの絵だった。正確には、チョコレートで書かれた板チョコサイズのアートだった。

 色まで鮮明に色付けされているが、一体どうやったのだろう?

「すごい……」

 これは食べられなくないか?

 

「大した菓子作りも出来ないので……」

 紫苑先輩は、黒縁の眼鏡を人差し指でクイッとあげた。

「いやいや、これほど立派なチョコはないよ!ありがとう紫苑♪」

 こんな立派な物を貰ったらわたしの用意したチョコなど渡すのが恥ずかしい……

 何も言えず黙り込んでいると、みこ先輩が何やら紙袋を取り出してきた。

「よし、じゃーわたしからも二人に……ハッピーバレンタイン♪」

 

 そう言って、袋詰めされた手のひらサイズのチョコレートを紙袋から取り出し、手渡してくれた。

 中には、ハートやくまなどの形をしている様々なチョコレートが入っていた。

 袋事態もピンク色の装飾が施されていてとても可愛い。

「これはまた可愛いですね。みこありがとう」

「うん!どういたしまして♪」

 

 どうしよう……お二人の凄さに、わたしは自信をなくしていた。このまま何も用意していない事にしてやり過ごすか……

 けれどお二人からこんな素晴らしい物を頂いて、なにもお返しをしないのも……

「つづりん?黙っちゃってどうしたの?」

「あ、いえ!なんでも……」

 

 心配そうに見つめるみこ先輩に、なんだか引け目を感じる。

 いや、よく考えてみれば、お二人は人を馬鹿にするような先輩たちじゃない。

 もういいや。悩んでるのも馬鹿らしくなってきた。

 わたしは勇気をだして、二人に手のひらサイズの箱を手渡した。リボンすら着いていない箱だが、この際もうどうにでもなれ!

 

「ハッピー……バレンタイン……」

「え!ありがとう!まさか手作り!?」

「驚きました。料理は苦手と聞いていたので」

 心底驚いた表情のみこ先輩に、また眼鏡をクイッとあげて興味深そうに箱を見つめる紫苑先輩。

 

「ねぇねぇ二人とも。いいこと思いついた♪」

「どうしたんですか?」

「今日はこの後二人でコラボ配信して、お互いのチョコを食べあいっこしようよ♪」

 とても楽しそうに話す、みこ先輩。

「いいですね!でも、わたしの美味しくなかったらどうしよう……」

「何言ってるの?大丈夫だよ♪ほら、行こ!」

 またもや、わたしの腕を掴むみこ先輩。

 

 いってらっしゃいと言いたげにわたしたちを送り出す紫苑先輩。

 配信部屋には、コラボ用にマイクとパソコンが二つに増えている。もちろんハウリングしないようにも作り替えた。

 

 わたしもみこ先輩も配信の準備を整え、二人見合わせる。

 

 そして同時に頷き合い、配信ボタンを押した。

 

読んでくださりありがとうございます!


バレンタインデーが近い為、ふと思い立った作品です。

全部で4話投稿します!

ぜひ、お楽しみください♪


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