第十話 バトル
第十話 バトル
お昼ご飯を軽く済ませ、午後の配信の準備を進めた。
あと10分ほどで始まるという所で、廊下から騒がしい声が聞こえてくる。
「なんだか、盛り上がってるね」
みこ先輩は落ち込んでいるのを必死に隠しているようだが、声色がいつもと少しだけ違った。
廊下の騒がしい声は、どうやら隣の教室のせいらしい。あの牛王ってやつが配信を始めたのだろう。
「わたし、ちょっと見てきますね」
まだ少しだけ時間がある。ほんのちょっとだけ覗き見るくらいなら大丈夫だろう。
隣の教室には、かなりの人だかりができていた。教室内に入れない人達が、廊下に溢れているほどだ。
それでもなんとか、隙間から教室内にモニターがあるのが見える。
そこには、一人の男が映っていた。水色とピンク色のグラデーションが入った髪型で、首元にはたくさんのネックレスがある。黒のコートを羽織りワンポイントが入った黒のシャツと黒のズボンを履いていた。
耳にはピアスをつけているし、ここでもチャラそうな印象だ。
名前はこの距離では、見えなかったがカタカナ三文字のようだ。
かなり盛り上がっていて、少し怖気付いてしまった。
配信してすぐこんなに盛り上がるなんて……わたしに勝ち目はあるのだろうか……
いや、勝てるか勝てないかの問題じゃない。
勝つんだ。
よし、配信しよう!
「先輩、始めましょう!」
自分に喝を入れ、virtual部の教室へと戻り、扉を開けると同時に言い放った。
「う、うん!全力で支えるね!」
そうして、午後の配信を迎えた。
配信は、絶好調!……とは言えなかった。
隣の教室で、配信されているおかげでみんなそちらに流れているのだ。
このままではまずい……どうにかしなければ……
悩んでいると、配信部屋の扉が突如として開く。
驚いて振り向くと、みこ先輩がいた。
みこ先輩は、手に持った紙をわたしに差し出し、頷いてから部屋を去った。
なんだろう?
見てみるとそこには、一つの企画案が書かれていた。
それには、『セリフ』が書かれていた。
来てくれた方が考えて書いてくれたセリフが、ずらーっと記されている。
これだ!
『とても名残惜しくはありますが、今日の配信はこれまで!アンケート用紙を用意しておりますので、よかったらご記入ください♪明日も配信するのでぜひ見に来てね♪元気勇気つづりをあなたへ♪』
こうして、配信は無事に終わった。あとは結果を待つのみだ。
しかし、どれだけ盛り上がったか分からない。配信自体は大盛り上がりしていたが、あちらの配信がどんなものだったかにもよる。
けれど、自分の力を精一杯出し切れたはず。これで負けたとなったら、本当にあの牛王とかいうやつの言う通り、面白くないと認めざるを得ない……
絶対に負けたくなんかない……!
教室内の人が全員居なくなったところで、わたしは配信部屋の扉を開けた。
「つづりんお疲れ様!」
「先輩達もお疲れ様です。どうですか?」
紫苑先輩もみこ先輩も、なにやら大量の紙を仕分けしていた。恐らく、アンケートの投票結果を集計しているのだろう。
「もうちょっとだから待ってね」
「はい」
少し経ってから教室の扉が開いた。入ってきたのは牛王だった。
無言で入ってきて適当な椅子に腰掛け、頬杖をついている。その表情は読み取れなかった。
待っている間はとても緊張で、地に足がついていないような感覚だった。
牛王も一言も口にしない。それどころかそっぽを向いている。
結果は目に見えている、とでも言いたげに。
「結果が出ました」
静寂の中しばらく待っていると、紫苑先輩が眼鏡をクイッとあげてそう告げた。
わたしは、固唾を飲んで結果発表を待つ。
「牛王さん、217票」
うわっ……それはそうか……
あれだけの人が見ていたんだもん。それだけの票が入って当然だよ。
「悠希さん……」
緊張が走る。この時間がとても長く感じた。
お願い……!
「527票」
「やっっったぁぁぁあああ!」
教室中に歓喜の声が響いた。
「つづりん!やったね♪」
「はい!」
みこ先輩と、両手でハイタッチをする。
さて、私が勝ったって言うことはつまり……
わたしは、とある人物に黙ったまましたり顔を向ける。
「……わーったよ!俺の完敗だ」
「それで?」
全てを語らずして、目だけで尚も訴えかける。
勝敗は決した。約束はちゃんと守ってもらおうじゃないか。
「……あーもう!分かった分かった!……約束だもんな」
牛王は頭をくしゃくしゃとやったあと、なにやら決心したような顔を向け、ゆっくりと話し始めた。
読んでくださりありがとうございます!
勝敗は決しました。でもまだ学園祭は終わりませんっ
次回もお楽しみに♪




