第九話 波乱の幕開け
そうして迎えた、水縹学園学園祭。
今日から三日間、学園はお祭り騒ぎだ。
そして今日は、その一日目である。
「よし、二人とも準備はいい?」
「「はい!」」
みこ先輩、紫苑先輩、そしてわたしは三人で円陣を組む。三人の手を合わせ、みこ先輩の掛け声を待つ。
「今回は、この間のイベントとは全然違うけど、立派な私たちvirtual部のイベントです。きっとたくさんの人が来てくれます。何が起こるか分からないけど、何があってもこれだけは約束してね。……三人で精一杯盛り上げ、精一杯楽しもう!!」
「「おー!!」」
三人の手は高々と挙げられた。成功を祈るように。
そうして花火の音で、始まった学園祭。
それは、わたしが想像していたよりも遥かに騒々しく、たくさんの人で溢れ返り、瞬く間にvirtual部の教室は人だかりができた。
役割的にはこうだ。
まず、みこ先輩は配信部屋で配信をする。紫苑先輩が、企画を募り配信を盛り上げる。そしてわたしがその補佐をする。
という具合だ。
三人だけで、この人数を相手するのでとても手が回らず大変だ。
それでも来る人皆、楽しんで貰えているようでなによりである。
昼休憩の時まで、なんの問題もなく円滑に進んだ。
のだが……
『みんなー!一旦休憩を挟むよ♪次は1時に再開するからまた来てね!』
モニターの中の『閑みこ』の掛け声で、溢れんばかりにいた学生たちは徐々に引いて行った。
「ふぅ二人とも、まずはお疲れさまぁ」
教室に紫苑先輩とわたしだけになったところで、みこ先輩が配信部屋から顔を出した。
まだ一日目の午前だというのに、既にへとへとだ。
「みこ先輩もお疲れ様です。ずっと配信は大変ですよね」
「すっごく楽しいけどね♪」
三人で休憩をしていると、突然教室の扉が開いた。
「ふーん。ここがvirtual部ね」
入ってきたのは、一人の男子学生だった。
髪は黒髪で耳にかかる程度の長さを、耳上あたりでヘアピンによってとめられている。
どうやら水縹学園の生徒のようで黒の制服を着ていたが、前のボタンは閉めていないし、中に白のパーカーを着てフードは出している。ピアスもしているし、校則は思いっきり違反していた。
顔はかなりイケメンな部類だろう。ただ、チャラさが印象的である。
「あの、今は休憩中で……」
「さっきの配信見てたけど、すっごいおもんない」
……は?突然来て何を言い出すのかと思えば……
面白くない?確かに、中にはそう思う人だっているかもしれない。けど、面と向かってそんなこと言わなくてもいいじゃん!
「あ……」
みこ先輩は、その目に涙を浮かべた。
あんなに頑張っていたのに、そんな心無い言葉を掛けられれば誰だって悲しい。泣きたくなるのも当然だ。
「ぅ……ごめんね……わたし……」
紫苑先輩は、そんなみこ先輩を慰めていた。
わたしは、この男に怒りを覚えた。殴れるなら殴ってやりたい。
「先輩、こんなやつに謝る必要ないです。おい、その言葉撤回しろ」
わたしは、人差し指を男子学生に突きつけた。
「撤回?なぜ?俺は事実を言っただけ」
この男子学生は、態度を改めようとしない。腹が煮えくりかえるほどに腹が立つ。
「先輩は、精一杯やってました。少なくとも楽しんでいた方もいます。それなのにそんな言われる道理はない!」
「ふーん。けど、それはそちらの主観だろ?事実、面白くないものは面白くない」
なんだこいつっ!ムカつく!
「先輩に謝れ」
「いやだね」
なぜわざわざそんなことを言いに来たんだ。わたしには全く意味がわからない。
「先輩に謝れ!」
わたしはもう一度、同じ言葉を繰り返した。それもさっきより声を荒らげて。
どうしても許せない。みこ先輩をあんな風に傷つけるだなんて……!
「だったらこうしないか?どっちが一番観客を盛り上がらせられたか。もちろん勝敗は観客。公平だろ」
どういうことだ?私たちは配信があるが、この男は何で盛り上がらせるというのだろう。
黙っていると、男子学生は言葉を続けた。
「これでも俺、Vライバーでね。一応機材もあるんだ。確か、隣空き教室だよな?そこでやらせてもらうよ」
なるほど。お互い配信で勝負するということか。
「勝敗はどうやって決めるの」
「うーんそうだなぁ。配信を終えた後に観客にアンケートを取る、でどうだ?」
「……わかった」
この男を返り討ちにしてやる。
「俺の名は、牛王蓮だ」
牛王はそう名乗り、後ろをむく。
「それじゃ、俺は準備してくるよ。virtual仲良しごっこさん達」
牛王は、最後にそれだけ言って去っていった。
最後までムカつくやつ!
「良かったのですか?」
紫苑先輩が心配そうにしている。
「はい!先輩、あいつを負かしましょう!そして絶対に謝らせるんです」
未だ泣く先輩に、早く元気になって欲しくてそんなことを言った。
「でも……」
「先輩、今の状態じゃ、午後の配信はわたしに任せていただけませんか?」
「え……?でも……いいの?」
「はい!絶対負けません!あいつに吠え面かかせてやりましょう」
正直みこ先輩の方が、実力は上だ。自分と変わったところで、勝てるかどうかなんて分からない。
ただ、今のみこ先輩が午後も続けられるか分からないから、きっと変わってあげた方がいいのかもしれないと判断したのだ。それに先走って喧嘩を買ったのは私の方だし。
必ず勝ちたい。あんなやつに負けてなるものか。
わたしは、午後の配信に向けて準備を始めた。
読んでくださりありがとうございます!
牛王とは一体何者なのか……!?
次回に続きます。




