2-4
その頃、オルロはアラニ・カラミッドに使う薬を作成する準備をしていた。大き目なフラスコや鍋、加える薬品などを取りそろえていた。まずは、久々に使う大きな鍋を洗うところからだ。腕をまくり取りかかろうと力を込めた時、研究所の入り口で大きな爆発音がした。
「ひゃううっ!」
突然のことに、鍋を盛大に落とす。落ちた時の音にも驚きオルロの心臓は撥ね続けた。
「な……なにが起きたのですかぁ?」
鍋を洗うのを後回しにして大きな音がした場所へと向かう。扉を開けると、ちょっと前に見た二人がそこにいた。
「す、スーミンさんとニクスさん……?」
「ん……よかった。成功したようだ」
事情をかいつまんで話すとオルロは急いで気付け薬を取りに行った。その間にニクスはシエ・スーミンを抱えながら研究所に入る。広い机の上で申し訳ないと心で謝罪をし、オルロの気付け薬を待った。
「お、お待たせしました。これを使ってください」
小さな瓶に入ったそれは薄い桃色をした液体だった。蓋をはずし、シエ・スーミンの鼻に近づける。
「ぐっ!」
激臭がシエ・スーミン、ニクスはたまたオルロの鼻を貫く。思わず顔をしかめる三人。
「なんだこの臭いは!」
その激臭のおかげで目を覚ましたシエ・スーミン。はたと気づくとそこはあの草木のない大地ではなく、薬品臭い研究所だった。
「……ここは……ガルディラはどうした……」
「スーミン様、落ち着いてください。これからお話します」
混乱するシエ・スーミンをなだめ、ニクスは経緯を説明する。すると少しずつ落ち着いたシエ・スーミンは今の状況に合点がいったといわんばかりに頷いた。
「……そうか。私が……」
ガルディラを斬ったのは確かなのだが、その時の記憶がすっぽりと抜け落ちてしまったかのように、その部分だけがどうも思い出せない。
「スーミン様……?」
不安に感じたニクスがシエ・スーミンの顔を覗く。気づいて首を横に振るシエ・スーミン。
「すまない。変な心配をさせてしまったな……」
いつもより元気のない顔で答える。なんでだろう……自分でも中々理解が追い付かない。シエ・スーミンは心の中で燻っていた。なんでこんなにも弱々しいのだろう。その理由が分からないことも手伝って、更に自分に嫌気がさす。ふうとため息をつき、オルロに水をお願いする。
「……どうか、気にしないでください。なんて無責任な言葉だと私もわかってま
す。だけど、わからないことはわからないのです。これは時が解決することも
あります。なので、今は体と心を落ち着かせることにしましょう」
オルロが水を置きながら言った。さっきまで頼りないと思ってしまった自分があまりにも惨めで、今ではまるで逆になってしまっているではないか……。シエ・スーミン小さく頷き水を一口含む。冷たい液体が気持ちまでもゆっくりと冷やしてくれる。
「それと、これを」
ニクスが懐から出した物。それは、二人が苦労して採取したガルディラの鱗。それも大量。
「こ、こんなにたっくさん! あ、ありがとうございますぅー!」
嬉しそうに鱗に頬ずりをするオルロ。何度もお礼をしたあと、オルロは奥へと消えていった。
「うちらが苦労して採取したんです。大いに活用してもらわないと……ですよ
ね」
「……ああ」
魔術師であるニクスはあの鱗にどれほどの効果があるかまではわからない。もしかしたら、あのオルロならほかの可能性を見出してくれるのではないか……そんな期待をしている。
「ところで、龍麗はまだ戻ってきていないのか……」
「ええ。俺たちが戻ってきた時はまだいなかったですが……苦戦してるのか」
シエ・スーミン達が戦っている間、龍麗はどんな方法で素材を手に入れているのか……。
それでも時間がかかっているということには変わりなく、心配である。
シエ・スーミン達が研究所に戻ってきて数時間後、研究所の扉が重々しく開く音が聞こえた。そこにはくたびれた様子の龍麗と、付き添いっているのは見かけない少女だった。
「お初にお目にかかります。わたし、レイファと申します。龍麗と共に大事な薬
を作るという案件で参りました。よろしくお願いします」
異国情緒のある服装に身を包み、左右には髪を纏める装飾が付けられている。はきはきと話す彼女は丁寧に挨拶をし、ぐったりとした龍麗を中へと運ぶ。特に目立った外傷は見当たらないのだが……。
「特に大きな傷は見当たらないのになんでこんなにもぐったりしてるんだ?」
ニクスがレイファに問いかける。すると、レイファは一瞬躊躇ったのだが、口を開いた。
「わたしと龍麗は、まずランドタイラントの爪を取りに行きました。場所もある
程度見当はついていたので、容易だと思っていました。いざ、ランドタイラン
トから爪切りをするという名目で声をかけると最初は協力してくれたのでが、
切り終わった後は眠くなってしまったのかぐずってしまったのです。それをな
だめようと必死になっているうちに……慣れない事をしたせいでぐったり……
というわけです」
「……それは中々だったな……それとハイサラマンダーの尾は……もしかし
て?」
「はい! わたしが一刀両断してきました」
といって見せてくれたのは、片方の袋にはランドタイラントの爪、もう片方にはハイサラマンダーの尾が入っているであろう袋。袋からは血がじわりと滲んでおり、その生々しさが伺える。
「あ……ありがとう。これで素材はあと一つだけになったってことか」
「あと一つ? もしかして、レジェの角ですか?」
「そうだが……」
「わたしのでよければ、これを使ってください。はい、どうぞ」
そういってレイファはポケットの中から角らしき物を二つ取り出すと、ニクスに手渡した。なんで持っているかは聞かなかったが、これで全部の素材が集まった。
「オルロ。全部の素材が集まったみたいだ。調合をお願いできるか?」
「え、ほ、本当ですかぁ?」
また慌ただしく走ってくるオルロ。そして裾を踏んづけて盛大に転ぶ。もうお決まりになっていてレイファを覗く二人は驚かなくなっていた。
「ふぎゅぅ……ま、またコケました……あ、え、えっと……?」
「ご挨拶が遅れました。わたし、レイファと申します。以後、お見知りおきを」
深々とオルロにお辞儀し、挨拶をする。それに続いてオルロもお辞儀をする。挨拶を交わしあったところで、龍麗が小さく唸った。
「あ、気付きましたか」
「あ、あれ。レイファ。ここは……」
「ここは研究室です。龍麗がここまでの道をメモしてくれたお陰で助かりまし
た」
「そ、そっか……。って、ランドタイラントは? ハイサラマンダーは?」
「まぁまぁ、落ち着いてください。全部無事に採取できたから問題ないです」
「はぁ……よかった……」
ほっとした龍麗は肩を撫でおろし、はぁと溜息をついた。そして、他の素材を探しに行っていたシエ・スーミンの安否を確認する。
「私は無事だ。なんとかな」
「す、スーミン様。無事でよかったです……なんとかと申しますと?何かあった
のですか」
「ちょっとな……まぁ、無事なことには変わりはないんだけどな」
「? ……はい」
ニクスはガルディラと戦っていた時の様子をかいつまんで説明をした。すると龍麗も眉間にしわを寄せて悩みだした。
「うーん……なんでしょうか……ぼくはそういったことがないからなんとも申し
上げられなくて……すみません」
「いや、構わない。とにかく、それがあったおかげで今こうしていられるのだか
ら」
自らの身に起きたことなのだがそれが自身でも理解ができないのが非常に悔しいのだが、今はその不思議な出来事に感謝をすることにした。
「で、では。調合してきますので、ここでしばらく休んでいてください。できた
ら報告します」
また深々とお辞儀をして調合室に入るオルロ。あの臭いはできるだけ今後も遠慮はしたいのだが、残念な事に最低でもあと一回は登場することとなる。それだけ……それだけは我慢しようと心に誓ったニクス。そんな顔を不思議そうにみるレイファに、オルロが調合している薬の効果と、これから使う薬の内容を簡単に説明した。
「なるほど。脱力を上回るやる気で無効化させるということですね」
「まぁ、ざっくり言えばそんな感じだ。相手は邪竜と呼ばれる相手だ。あれだっ
たら……」
「わたしも参加させてくれませんか?」
「……はい? 今、帰ってもって言おうと思ったんだが……」
「そんな強そうなのを相手にできるなんて……素敵な修行になりそうです」
「しゅ……修行ねぇ……。熱心なのはいいが、その前にうちらも脱力してしまう
可能性もあるからな。そこの辺、頭に入れておいてくれな」
「はい! 一緒に頑張りましょう!」
にこっと笑い感謝されてもなぁと困るニクスだが、ここは一人でも戦力が増えるのはいいことだと考えシエ・スーミンの許可なく参加させてしまった。
「別に許可などいらん。加勢に感謝する。レイファ殿」
「こちらこそ! 参加させていただき、有難うございます。シエ・スーミン様」
シエ・スーミンもレイファの加勢に賛成し、一緒に封印することに。がっちりと握手をする二人だが、端の方でまだ気分が優れていない龍麗の手当をするニクスだった。
研究所で過ごすこと一日。オルロは調合室から出てきたのだが、寝ずに調合していたのかふらふらになりながら報告に来た。
「み、皆さん……お待たせしました……。調合、完了しましたぁ……」
ふらっと倒れるオルロをニクスが抱きかかえる。オルロの呼吸は浅く不規則だった。
「……ちょっと無理しすぎじゃないのか?」
「で……でも、これができないと……アラニ・カラミッドの封印が不可能……」
「だからといって、ここまで無理するとはないだろ?」
「……すみません」
「とにかく、今は休め。それが最優先だ。報告の詳細はオルロの体調が回復して
らだ」
「……」
ニクスが優しく諭すも、オルロは悔しいのか唇を噛み締めていた。
「……すみません」
「……こういう場合は、『ありがとう』だろ?」
「そう……ですね。ありがとうございます」
ニクスは抱きかかえたままオルロを休ませるため、寝室へと運んだ。寝かしつけ、静かに扉を閉めて、うちらも休みましょうと提案。それぞれ過ごしやすい場所を見つけ、オルロの回復を待つ間、体力の回復に努めた。
オルロが体を休めて半日が経過した。シエ・スーミン、ニクス、龍麗は寝息を立てているのだが、力が有り余っているレイファは自分を落ち着かせるためか、静かに稽古をしていた。
その時、オルロの寝室からきいという小さな音がした。レイファは音のする方へと歩むと、杖をつきながら歩いているオルロがいた。
「お、オルロさんっ!」
つい大きな声が出てしまい慌てて口を塞ぐも手遅れで、その声で起きた三人は何事かと廊下へと走ってきた。廊下で立っているオルロを見てニクスは一歩前へ出る。
「オルロ! まだ体調は万全じゃないんだろう。もう少し休んでいるんだ」
「そ……そんなことありません。だ、大丈夫です」
強がりを言ってみせるも、足は小刻みに震えその振動が杖にも伝わり歩くのがやっとの状態に見える。無理して歩くオルロにニクスは次第に口調が荒くなる。
「オルロっ! いいからもう少し休むんだ。でないと、本当に倒れてしまうぞ」
「い……いいんです。これくらい、大したことないです……説明を始めるので……」
パァン
廊下に乾いた音が響く。何かが割れた音でも敗れた音でもない。そこにあるのは、オルロの頬を叩いた音だけだった。
「……え……?」
「……いい加減にしろっ! なんでわからねぇんだ! 自分のことは自分が一番
わかってるんじゃねえのかよ。今、体が悲鳴をあげてんのがわかんねぇのか
よ!」
普段、滅多に怒りを表に出さないニクスがここまで怒る姿を見たことがなかった他の二人は呆気にとられ、言葉が出なかった。ニクスは今、猛烈に怒っている。
「てめぇ……これ以上無理してみろ……俺はぜってぇにお前を許さねぇからな」
「おいニクス……そこまでだ」
さすがに止めに入る。そこで正気に戻るニクス。自分の言ったことに少しばつが悪そうに俯いた。オルロは熱のこもった頬に触れたまま動かずにいた。
「……オルロ。私の監督不行き届きだ……すまない。手当をしよう」
「……」
未だに何が起きたかがわからず、オルロに話しかけても返事がなく焦点が定まっていない瞳にはなにが映し出されているのか……。シエ・スーミンに付き添われ寝室へと向かうシエ・スーミンとオルロ。叩いた本人も「叩いてしまった」事実という呪縛からその場から動けずにいた。こちらも龍麗に付き添われながらゆっくりと休んでいた場所まで戻る。
先に気持ちの整理がついたのはオルロだった。杖をつきながらの戻りではなく、しっかりとした足取りで研究室の中央に現れた。
「みなさん、ご心配をおかけして申し訳ありませんでした。本当にもう大丈夫で
す」
口調もしっかりとしていて、これならもう大丈夫だろうと思える程に回復していた。その頃、ニクスはむすっとした表情のままどこか遠くへと移していた。
「それなら良いが……ニクス。お前からも何か言うことがあるだろう」
「……オルロ。すまなかった」
「い、いえ」
「……それだけか? 他になにか無いと聞いているんだ」
「……ないです。今のところ」
「そうか……」
段々と険悪な雰囲気になってきているのを察知した龍麗は、疑問に思っていた事を聞いてみた。
「あ、あの! ニクス様はなんであそこまでお怒りになったのですか……」
その問いかけに場は一瞬しんとなるが、ニクスのため息に続いてこう紡がれた。
「……前に同じようなことがあったんだ。それも……こういった感じだったか
な」
「前にも……」
「あぁ。あれはまだ俺がガキの頃だったかな。今、俺が雷の魔術を使えるように
なったのは一人の師匠のおかげなんだ。それも人の話を聞かない爺さんでな。
俺が何か意見しようものならげんこつが飛んでくるような人だった。おっかな
くてそれ以来はなるべく意見しないように決めてたんだけど……ある日、そう
も言ってられない事が起きたんだ」
どこか憂いを含んだ語気に、周りは思わず息を飲む。一呼吸おいてニクスは話し始めた。
「あれはとある魔族の討伐の時だった。師匠は雷を使った魔術が得意だったんだ
が、それ以外にも、見た目に似合わず調薬もできたんだ。擦り傷を治す薬から
はたまた疲れた身体を瞬間に元気にしちまう位の強力な薬も調薬できる人だっ
たんだ。そこで、魔術と調薬を組み合わせたらどうなるかって実験をしていた
んだ。それは俺が知る限り一週間以上続いていた。材料が無くなっては自分で
採取して調薬して結果を調べて……それを寝ずにだ。その魔族には魔術だけで
も十分だったんだが、師匠はそれだけじゃ飽き足らなくてな……それも持って
いこうとしていたんだ。魔術にはもちろん、自分の持っている魔力を使うし調
薬には体力のほかにも集中力もいる。いろんなものが必要になると、それを休
ませる時間も必要なんだけど、師匠はそれを一切しなかった。俺はげんこつ覚
悟で師匠を止めた。そしたら、案の定げんこつが飛んできた。すごく痛くて星
が見えたのを覚えてる。それでも俺は師匠に止めてほしく何度もしがみついた
けど、何度も引きはがされてほっぽり出された。そして、ある日の朝。やけに
静かになった師匠の部屋を覗くと……珍しく寝てると思って耳をすませてみた
んだけど……寝息が聞こえなかった。今度は顔の近くでもう一回確認しても結
果は同じだった……もう……死んじまってた」
後半、ニクスは涙を浮かべながら話していた。レイファの瞳にもうっすらと涙が滲み、指で拭っていた。
「……もう、犠牲が出るなんてごめんだ。そんな思いが急に出てきて……叩いて
しまったってことさ」
「ニクス……」
「俺は確かにオルロを叩きました……その事実は変わりません」
「……ニクスさん。ありがとうございます」
予想外の返事に驚いたニクスは一瞬、顔をぎょっとさせる。
「あ……え、あ、ありがとう?」
「はい。私の事を気遣ってくださって、ありがとうございます。私、焦っていた
んです。ほかのみんなよりも作業は遅いし、失敗ばかりして周りに迷惑ばかり
かけています……。そんな時、皇帝から邪竜の封印依頼を頂いたときは頑張ら
なきゃってずっと思っていました。私の調薬品で役に立つことがあるのな
ら……そんな思いが突っ走ってしまって、あそこまでふらふらになってしまっ
たのだと……あそこでニクスさんが叩いてくれなかったら、私はあのままずっ
と調合室で倒れていたかもしれません。なので、重ねてお礼を……」
オルロはニクスに深々とお辞儀をし、感謝を表した。それを目の当たりにしたニクスは急に狼狽えだし、周りに助けを求めたが誰も助け船は出さなかった。
「さっき、素直にならなかった罰だ。少しは懲りたか?」
「……すみませんでした。取り乱したりして」
「でも、ニクス様の思いがあっての行動だと思います」
「何事も経験ってことですね」
「あ、あ、えっと……そろそろ報告をしてもいいでしょうか?」
オルロは戸惑いながらも、今回生成した薬品についての注意点と前回使った薬品の改良点をいくつか挙げてくれた。
「注意事項は、前回と同様でこの薬品は一定時間の間、歩くことも困難になる位
体が動かなくなります。それに対抗するのが、この薬品です。これは一定時間
やる気を出す薬です。体が重くなる薬は、今回重要な素材をたくさん採取して
いただいたので、こちら側にかかる負担は前作のものよりも軽減はされていま
すが、それでも注意は必要です。それと、いくつか体力、魔力を回復させる薬
も調合しておきましたので、お持ち下さい」
オルロがテーブルに並べた瓶の数にも驚くが、今回メインで使用する薬品以外にもこちらのことも気を遣った薬品も用意してくれていた。長丁場になっても使うタイミングを間違えなければ優位に戦うことができる。
「余計な気を遣わせてしまってすまない。オルロ」
「い、いえ。あれだけたくさんの素材を採取していただいたので。これくらいし
かできませんが……」
「いや、十分だ。では封印の準備にかかろうか」
「あ、ちょっと待っててください」
オルロが調合室からなにやら持ってきて、シエ・スーミンに手渡す。
「ガルディラの鱗が少し余ったので、アクセサリーを作りました。少しではありますが、魔力を含んでいるので何かの力から守れるかもと思いまして」
深い青色のそれは、時々白みがかったりとあの時に見たものがそのまま反映されているよう。鱗だけでも生きているような錯覚を覚える。一つを手に取り、首元に着けてみる。
「……ふむ。中々綺麗なものだな」
「お似合いですよ。え、ぼくらの分のあるんですか」
「はい。どうぞ、身に着けてみてください」
各々が鱗のアクセサリーを身に着ける。堅物なイメージの鱗もこうしてみるとおしゃれなものに変化する。
「こんな素敵なもの……有難うございます」
「お守りにしますね。どうも有難うございます」
身支度の確認をし、シエ・スーミン達は本来の目的である邪竜アラニ・カラミッドの封印へと向かった。
「皆さん。私は準備があるので、少し遅れて行きます。先に向かっていて下さ
い」
オルロが研究所の入り口で大きく手を振る。龍麗とレイファはオルロが見えなくなるまで元気に手を振り続けた。オルロも負けまいと手を振り続けた。
「……私にもできますよね……きっと」
誰に向けられた言葉かはわからないが、その言葉は薄暗い廊下の中に吸い込まれていった。




