2-6
間もなく頂上に着く少し前に小さな広場があり、一同はそこで体力、魔力の残量を確認するのと同時に封印の手順をおさらいする。
「……睡眠の魔術はいつでも展開できる状態だ。射程距離に入ったら俺はこれを
発動する。眠った事を確認したら龍麗とレイファが攻撃を仕掛ける。攻撃をし
たところにスーミン様が更に畳みかける。俺の予想ではこの辺で目が覚めると
思うんで、レイファが脱力剤、龍麗が中和剤を使う。オルロの話では脱力剤の
力を上回るやる気が出るとか……いまいちピンとこないが。攻撃力が上がって
いるところにスーミン様が攻撃する。俺はその間、その場の展開に合わせた魔
術を使いますんで。流れはこんな感じだが、なにか質問は?」
「はい!」
「龍麗。なんだ」
「魔術のストックって一つだけなのですか?」
「そうだ。詠唱を留められる時間はそう長くないんだ。できなくもないが、一度
に複数の魔術の詠唱をストックすると、どれも中途半端な結果になっちまう。
ましてや、土壇場の時に魔術が展開されなかったら困るだろ?だから、俺もス
トックはしたいんだが、一つまでだ。これでいいか?」
「ありがとうございます」
「他にないなら、そろそろ行こうか」
アラニ・カラミッドがいると思われる巣穴に近づく前に睡眠の魔術の詠唱を行い、それをストックする。回復もストックしておきたいのだが……理由は先の通り。
「では、作戦を決行する。みんな、無理は絶対にしない事。いいな」
「「「はいっ」」」
巣穴に近づくと、邪竜の寝息が体中を震わせる。規則的な地震のようなものだろうか。一歩ずつ確実に近づく一行。睡眠の魔術の射程に入った事をニクスが合図をすると、レイファと龍麗はそれぞれ薬を取り出しいつでも投げる準備はできている。シエ・スーミンも剣を抜き、二人の攻撃が終わるのを静かに待つ。
(3……2……1……)
指でカウントダウンをし、タイミングを知らせるニクス。最後の指が折り曲がったのと同時にニクスの魔術が展開。白い煙がぼわんと噴き出し、邪竜を更に深い眠りへと誘う。
そこへすかさず二人が薬品を投げる。先に効果が表れたのは脱力剤で、体に重りがついたかのようなだるさがまとわりつき、次に活力が漲ってくるという不思議な感覚に戸惑う一行。確かに脱力感はあるものの、それを上回る力というのも付加されているということが実感できた。力の付加を確認した後、流れる体裁きで邪竜に近づき、二人同時に攻撃を仕掛ける。
「破っ!」
「闘技! 破竜撃!」
渾身の力を込めた龍麗の掌底と、闘気を練り込んだエネルギー弾を撃ち込むレイファ。どれも至近距離で受けたらひとたまりもない技だ。両脇を攻撃され、激痛に吠える邪竜。そこへ更にシエ・スーミンの斬撃が舞う。
「一刀に伏す!」
迷いなく放たれた斬撃は鱗を貫き、悲鳴を連鎖させる。悲鳴を上げている間、ニクスは束縛の魔術を展開。自由に動かすことを許さない白い手が四肢を掴む。
「ぬ……ぬぐぅ……な、なんだ……」
「お目覚めですか?邪竜さん。もう少しばかし大人しくしててもらえます……
か!」
さらに魔力を注ぎ込み、四肢を掴む力を強くする。巨大な体をもってしても、ニクスの魔力の前では指を動かすこともできなかった。
「まだわたし達の攻撃は終わってませんよ。龍麗さん」
「うんっ」
二人が放った技から繋ぐ同時蹴り上げ。覇気によって強化された足で蹴り上げられた邪竜は四肢を動かせないまま宙に浮く。ふわりと浮いた体はそのまま重力に逆らうこともなく地面に落ちていく。
「ぐぅう……小癪な……」
邪竜が口を開き、大きく息を吸い込む。これは少しまずい。そう感じ取ったニクスは急いで防御の魔術を展開。みんなに一か所に集まるよう呼び掛ける。
「溶けてしまえっ」
勢いよく吐き出された火炎は、ニクス達目掛けて飛んできた。それを迎え撃つニクスの額には焦りが浮かんでいた。しかし、ここで集中を切らしてはいけない。前方の防御壁に魔力を注ぎ込み、火炎を弾く準備をする。
「はっ!」
きんとした音と同時に透明なガラスのような壁が現れた。それは楕円形になっていて、受けたものを左右に受け流す構造をしていた。
「き……きますっ! ニクス様!」
「大丈夫だって……心配しなさんな」
火炎が着弾すると、きれいに左右に受け流されていく。ニクスもその結果にほっとはしているが、ここで集中が途切れてはこの防御壁が一瞬で消え去りあっという間に蒸発してしまう。火炎がなくなるまでニクスは油断ができない状態だ。
「もう少しです。ニクス様」
火炎が途切れて見えたのは、邪竜のなにかの塊だった。それが何かだとわかるまではしばらくわからなかった。
「し……しまっ……」
防御壁に意識を集中していた分、四肢を繋ぎとめる鎖の力が弱まり邪竜がこちらに迫っているのに気が付かなかった。そして、四人の前に現れたのは邪竜の尻尾だった。避けられるはずもなく、防御壁を砕き勢いそのまま直撃する。
尻尾の直撃を受け、壁に激突する四人に邪竜は追い打ちをかけるかのように体を起こし、その体で押しつぶそうと倒れてくる。
「っ……避けろ!」
体に残る衝撃をなんとか堪え、それぞれが緊急回避を行う。なんとか下敷きになることは免れたが、肉体的ダメージが大きく立つことさえままならない。匍匐前進で少しでも距離を取ろうと試みるが、邪竜はそれすらも許さない。
「間に合えっ」
高速で詠唱した応急処置の魔術。一人にかければ治癒力は高いのだが、複数にかけると代わりに治癒力は劣ってしまう。だが、回復をしないよりはましだ。ニクスは紡いだ魔術を全員に展開する。小さな光が体を包み、癒す。ごく僅かではあるが手足の痺れも取れ、足に力が入るようになった。全員その場から退避し、オルロが調合してくれた回復薬に手を伸ばし、口をつける。どろどろとした液体が喉元を通過する。一気に飲み干し、瓶を投げ捨てる。口当たりは最低だが回復効果は最高だった。
「俺もちょーっと立て直しますかね」
魔力の回復を図るため、ニクスは瓶に手を伸ばす。こちらはやたらとさらさらしていて、液体ではあるのだがまるで粉末のような口当たりだった。一気に飲み干し、じわりじわりと魔力が回復していくのを感じている。
「さて……と。これからどうしますか」
今は邪竜の右手、右足、左足、左手の順にニクス、龍麗、レイファ、シエ・スーミン。また一か所に集まるのは一つの作戦ではあるが、危険が伴う為却下。この状態でもできる作戦がなにかあるはずだ。ニクスは必死に頭を働かせる。
「わたしが出ますっ!」
作戦を考えている最中、飛び出したのはレイファだった。ただ闇雲に飛び出したわけではなさそうだが……。
「やぁっ!」
さっき龍麗が放っていた掌底。たった一回見ただけで完全に型を模倣し、放っている。
「ぐぅ……お、おのれ……」
「ぼくだって!」
今度は二人同時に掌底を叩き込む。凄まじい闘気が邪竜の横腹をノックする。連続で叩き込まれた掌底で体制を崩す邪竜に対し、ニクスは再び拘束の魔術を展開。今度はミスをしないよう意識の向け方に注意する。
「くっ……小賢しい真似を」
「はぁっ!」
シエ・スーミンは邪竜の顔目掛け剣を振り下ろす。当たる寸前でかわされるも、そこから剣の角度を変え、邪竜の目の横を薙ぐ。
「ちぃ……」
直撃はしなかったが、片目瞼辺りから赤い筋が流れていた。その筋は邪竜の眼球に入り、視界を奪う。片目に赤い筋が入った痛みなのかプライドを傷つけられたからなのかわからないが、地震にも似た咆哮をあげる。びりびりから次第に恐怖へと変わるその咆哮は、心の弱い者は戦意どころか魂をも持ってかれる……。このメンバーでそういった者は見られなかったのは幸運だった。
「ぐ……くぅ……負けるかぁ!」
咆哮が続く中、龍麗が邪竜の顎を目掛け地を蹴る。
「閉じろーっ!」
下顎に拳を受けた邪竜は強制的に咆哮を中断され、閉じた衝撃で鋭い牙がポロポロと落ちた。予期せぬ衝撃に何が起きたか理解するのに時間を要した邪竜は混乱したまま、頭を地に着けた。
「ぐ……ぐぅ……」
その隙にニクスは全体回復魔術を展開し、傷を癒す。完全とまではいかないがそれなりに回復はしているので特に問題はない。さらに全員に防御壁を展開し、いかなる攻撃にも対応できるよう準備。
「これでどうですかね」
「あぁ。十分だ」
ニクスは次に何が必要かを考えながらストックする魔術を詠唱。他の三人はいつこちらに向かってきても迎撃ができるよう構え続ける。混乱から回復した邪竜は低く吠え、頭を低くしたままこちらを睨む。
「これは手練れが数多くいる様子……これは……どうかな」
低く構えたままの邪竜は小さく地を蹴り、そのままこちらに突撃をしてきた。速度がある為、避ける事は難しいが個人の防御壁によって衝撃は緩衝される。しかし、完全に緩衝とまではいかずそのまま壁に打ち付けられてしまう。
「ぐっ」
内臓から空気を絞り出されたような感覚に陥り、一瞬呼吸ができなくなる一行。呼吸ができる頃には邪竜の首は後ろに反り返り、宙へ放り出されていた。天地が逆に映る視界。外傷は特に深くはないのだが内部へのダメージが大きく、また体制が崩されてしまった。
「くそっ……」
「こいつ……」
「結構……手強いですね」
「これも……修行です……」
意識がもうろうとする一行に、遠くから聞き覚えのある声がやってきた。どこかふわふわしていて悲しそうなその声……。
「この声……まさか」
「はぁはぁ……みなさぁん……お、お待たせしまし……ふぎゅっ!」
数時間前、確か彼女の後ろにあるドレープの色は紫色のはずだった。それが、今目の前にいる彼女の後ろにあるドレープの色は燃えるような赤い色をしている。そして、頭から小さな角を生やし、その姿はまるで……。
「お、オルロ……なのか? どうしたその恰好は」
「角なんか生やして……まるで竜じゃねぇか」
オルロは新たな力を自らに宿し、ここまでやってきた。まだ自信のない自分を奮いたたせ、みんなの力になろうと。
「お待たせしてすみません。わ、私もお手伝いします」
「貴様……さては俺を封印した錬金術の末裔だな……貴様は……必ず殺す」
「そ……そうはさせないのです! ご先祖様。私に力を貸してください!」
杖を高々と掲げ、その先端が小さく光る。なにやら空間が歪み、そこから何かが出てきた。
「いたっ」
「うっ」
「きゃっ」
「うおっ」
「ふぎゅっ」
がらんがらん……
落ちてきたものは鈍色のたらいだった。それも邪竜にではなく一行の頭上に落ちた。
「い……いったぁい……」
「……」
「うーん……」
「……ってー」
「ふぎゅう……」
たらいの粛清を受けた一行は頭上に星が見えたと口々に言った。頭がぼんやりと霞がかった状態から全身を何かが駆け巡った。
「……なんだこれは」
「ち、力が……」
「魔力が……溢れてくる」
オルロが一人キョロキョロしているが、他の一同は自らの体の奥底から湧き上がる力に驚いていた。
「あ……ど、どうやら皆さんの力が増したようですぅ……」
あのたらい一つで力が漲るのかは疑問だが、事実体に力が漲っていて今なら一気に叩ける気がしていた。シエ・スーミンは剣の柄を握り直し、こちらに向かって再度飛び掛かってくる邪竜と対峙した。時間差で邪竜の体からおびただしい血液が噴出し、それに続いて地を震わせる咆哮が響き渡った。
「白銀の牙よ!」
ニクスが鋭い氷柱を召喚し、邪竜に向かって放つ。魔法円から無限に現れる氷柱にさすがの邪竜も低く唸る。氷柱が消えるのと同時に龍麗とレイファのコンビネーションが炸裂。
「龍麗さん!」
「任せて!」
龍麗が邪竜を蹴り上げ、レイファが闘気を放ち叩き落す。目にも止まらぬ早業に邪竜は追いつくことができなかった。
「ぐ……生意気な錬金術師め……」
「ご、ご先祖様を悪く言わないでくださぁい!」
ぴかっと光る杖から放たれたのは魔力を凝縮した光弾だった。小さいが数が多いため、避けることは余程のことがないと無理だ。オルロが放った光弾は迷うことなく邪竜に向かって飛んで行った。
「おおおおおっ!」
熱量が高いせいか、着弾したところから白い煙が出ている。そしてその箇所にまた着弾を繰り返し確実に邪竜の体力を奪っていく。頑丈だった鱗も今では嘘のように剥がれ落ち、こちらの攻撃をどれでも通じる状態だった。
「もう一息ですね! スーミン様」
「これで……っ!」
湧き上がる力を剣に込めて振り下ろそうとした時、またあの痛みが襲った。またタイミングの悪い時に痛みが走り、シエ・スーミンは舌打ちをする。すぐにニクスは治癒魔術を展開し回復を試みる。淡い光がシエ・スーミンを包むも、その表情はあまり良くなっているようには見えなかった。
「スーミン様! 大丈夫ですか」
龍麗が肩を貸そうと近寄った時、なにかが目の前を走り、その後龍麗は岩壁に叩きつけられていた。ガラガラと崩れ落ちた岩に下敷きになる龍麗。レイファとニクスが急いで駆け寄る。
「ろ、龍麗!」
「……いい気になるなっ!」
邪竜が体を回転させると、それに続いて尾が遠心力で振り回され、鞭のようにしなり駆け寄ろうとした二人も勢いよく飛ばされてしまった。
「あ……あわわわわ……み、みなさぁん……しっかりしてください」
オルロが杖に力を込め、解放する。やがて集まった光の群れは吹き飛ばされてしまった三人に向かって走り、消えていった。
「……くそっ」
痛みは胸を軸に全身へと広がり、終には持っていた剣が地に落ちてしまう程だった。
「あ……あうぅ……し、しっかりしてくださぁいっ!」
再度オルロは意識を集中させ、光を生み出し今度はシエ・スーミンに飛ばした。すぅっと吸い込まれるように消えるも、やはり改善には至ってないようだ。
「……地脈の力を操作します!」
オルロは地面をノックするように叩き、叩いた個所に杖を突き立てる。また別の個所へ移動しノックをして杖を突き立てるを繰り返す。邪竜が近づいてきているのにも関わらず、同じ動作を繰り返すオルロにシエ・スーミンは出せる声量で逃げるよう促す。しかし、オルロはそれに応じず、黙々と続けている。
やがてぐるりと一周が終わり、今度は円の中心で杖を突き立てる。杖を突き立てた個所が淡い光で繋がれていき、それは光の魔法陣へと変わる。その魔法陣を見た邪竜は何か気付いたようで、速度を上げてこちらに近づいてくる。
「お……オルロ。早く逃げろ」
「もう……私は逃げません! 皆さんを置いてなんて尚の事できませんっ」
オルロがシエ・スーミンを担ぎ、その魔法陣まで引きずっていく。少しずつではあるが確実に近づき、ようやく円の中心に運ぶことができた。円の中心に置かれたシエ・スーミンはあることに気が付いた。さっきまで全身を支配していたあの痛みが消えていたのだ。
「なんだこれは……」
脱力剤の効果はまだある筈なのだが、その効果を感じない代わりに更なる力が奥底から湧き上がっているのがわかる。
「忌々しい錬金術師の末裔め……ここで終わりにしてやるっ!」
「やかましいぞ」
気力も万全になったシエ・スーミンがオルロの前に立ち、庇う。オルロが剣を拾いシエ・スーミンに手渡す。手に馴染んでいるはずのものなのが、一段としっくりくる。じっくりと握り直し、呼吸を整え剣を横にして構える。迫る邪竜に向け薙ぎ払う。タイミングが早いと思われた剣からは覇気が刃となり、飛んでいく。
「沈めてみせるさっ」
「黄金の力よっ!」
オルロの掛け声と共に邪竜の足元に魔法陣が浮かび上がり、四肢の自由を奪う。金色の光に包まれた邪竜はまるでこの山に吸い込まれていくかのように沈んでいく。
完全に沈んだことを確認したオルロは、再度詠唱を行い沈んだ場所に強力な魔力の網を張り巡らせた。無理にこの網をこじ開けようとすると魔力により手痛い反撃を受けることになるらしい。詠唱が終わったオルロは杖で地面を強く叩いて、完了の儀を終える。急に静かになったと不思議に思ったのか、瓦礫の中から吹き飛ばされた三人が顔を覗かせる。
「す、スーミン様……え、これって」
「こりゃあたまげた……」
さっきまでそこにいた邪竜がいなくなっていて一瞬何が起こっていたか理解ができなかった。ただ、そこにあるのは自力で立っている二人の姿だけだった。
「ま……まさか! スーミン様!」
「……あぁ。邪竜封印、完了だ」
遅れて顔を出したレイファを無理やり立ち上がらせ、喜びをわかちあう龍麗。レイファも何が起きたかを理解するまでに時間は必要だったが、龍麗の喜びようと邪竜がいなくなっている状況から全てを導き出すと、龍麗と同じよういやそれ以上に喜びを感じていた。
「ぐっ……」
「! スーミン様」
喜んでいるのもつかの間、シエ・スーミンが苦しそうに胸を抑える。ニクスとオルロは今できる最高の治癒魔術を展開し、放つ。二人の魔力がシエ・スーミンの彼女に吸い込まれていく。
「はぁ……はぁ……」
「スーミン様。大丈夫ですか」
「あぁ……なんとかな……しかし、あまり長居はしない方が良さそうだ」
「わ、わかりました。ちょっとだけ待っててください」
そう言ってオルロはなにやらぶつぶつと言い出し、杖を高々と掲げた。杖から光が次々と現れ、徐々に扉の形を作っていく。
「お待たせしました。これをくぐれば私の研究所まで行けます……たぶん」
「おい、多分ってなんだよ。頼りないな」
「ふぎゅう……座標は間違いないはずなのですが……そう言われると自信がなく
なります」
「い、いいから。今はスーミン様の回復が先決です。急いで戻りましょう」
後ろからぐいぐい押す龍麗。レイファはシエ・スーミンに肩を貸し少しずつ扉に近付いていく。
「……すまない。レイファ。こんな情けない姿で」
「何を仰っているのですか。私たちはパーティーじゃないですか。力を併せてこ
そですよ」
「……そうだったな。感謝する」
「礼には及びません。あ、足元気を付けてくださいね」
レイファとシエ・スーミンが扉をくぐると、その扉は解れるようにして消えた。扉の無くなった邪竜の住処に静寂が訪れた。




