第6話 指導的暴力
う〜ん…
背中が痛い…
お腹も痛い…
何でこんなに痛いんだ…
何か忘れてるような〜
「はっ!」
暗い世界から抜け出すと俺は一気に目を覚ました。
そうだった気絶していたんだった。
あいつの勘違いのせいで腹を殴られるわ、蹴られるわでとんでもない目にあったわ。
「あっ起きたのね!」
起き上がった俺に気づいたセリンは駆け寄り心配してくれた。
「どれぐらい寝てました?」
「1時間ぐらいよ、ごめんなさいシェルの攻撃痛かったでしょ」
「私は普通にやったわよ!」
何が普通なのか…
嘘つきじゃん…
あの時の顔ヤバかったし…
眉間にシワがきちんとあったし。
「っていうか何の用事で内に来たの、客なんでしょ?」
「コルさんに助けてもらったの…だからお礼として」
「助けてって…何処に行ってたのよ」
「雪山方面の森よ、あそこの木の実を取りに行ってたら襲われちゃって」
「何で1人で行くのよ…姉さんは戦闘能力が皆無なんだからそんなとこに1人で行っちゃだめでしょ!」
「…ごめんない」
「ったく、お陰で家が滅茶苦茶よ!」
それはアンタがやったことだろ。
俺が魔法を放って壊したところもあるけどそうさせたのはアンタだから。
「父さんがいたら大変だったわ…今修復中だから…感謝しなよね!」
何にだよ…
「もうシェル、家が滅茶苦茶なのは貴方のせいでしょ?人のせいは良くないわよ」
「せいにしてないわよ、実際そうでしょ!コイツの魔法のせいで壁がダメになったんだから」
「そうさせるようにしたのは貴方でしょ、コルさんは悪くないわ」
自分で壊した壁や戸はどうでもいいのだろうか。
魔法を放つ前にアイツの拳で壊れた所があるのに、そこは触れないのか。
「もう、折角お礼できたと思ったのに…」
「別にお礼するほどのもんじゃなかったでしょ、逆に感謝して欲しいぐらいよ!アレぐらいで風呂やご飯まで貰うなんて」
「でもそのお礼も帳消し以上になっちゃう位の事を貴方はしちゃったから…そうだシェル、コルさんをここで鍛えてあげさせたら?」
え?
「はぁ!?何で私がコイツにそんな事を…」
「お詫びとして…ね!」
セリンは片目を閉じ両手を合わせながらそう妹にお願いをした。
正直そんな事をしなくても…
ここで断ろうとすれば妹の方が怒るんだろうな…
っていうか何言っても怒らて殴られそうだからもう流されるしかない。
また気絶したくないし…
「分かったわよ!姉さんのお願いだから聞いて上げる、来なさい!」
「え…今から」
「早くしなさい!」
「はい…」
この建物の中で1番大きな部屋へと向かわされた。
無駄な物置などは一切存在しなく、少し柔らかい弾性を持つような床だった。
これなら一応倒されても衝撃を吸収してくれて軽い軽傷で済みそうだ。
「さぁ、やるわよ」
「ん?」
鍛えてくれるんじゃないのか…
表情には出さずに心の中で疑問を持つ
「構えなさい」
俺はすかさず過去に一応学んだ通りの型を構える。
「オーソドックスな構えね…」
構えからの指摘してくれるのか
姉からのお願いだからちゃんと指導してくれるということなのか…
「行くわよ!」
「は?」
あの時と同じ様にまた殴りかかってくる。
それを両腕をクロスしてガードする。
指導してくれないのかよ…
あの時は驚きでいっぱいだったけどコイツの攻撃、変だ。
気絶する直前に感じた違和感と似ている気がする。
俺の纏う魔力が抉れるように削れているのか…一体どうやってそうなってるんだ。
ガードに纏う魔力が完全に削られる前に勢いよくふっ飛ばれ、偶然にも何とかダメージも入らなかったと思ったら再び腹に攻撃を撃ち込もうと即座に突っ込んできた。
させるかよ!
両手で撃ち込む腕をガシッと掴む。
けど同じだった。
腕を掴んだ手はそのまま俺の体ごと回り足が地を離れた瞬間に蹴りを入れられた。
「ごはぁ…」
またこれだ…
意味が分からない、何故か俺は回ってるし、そしたらぶっ飛ばされてるしそれを教えてくれよ。
って思ってるそばから向かって来てるし!
寝た状態じゃ満足な攻撃は打てないしどうすれば良いのか分からない。
無理くり身体を捻りながら足を挙げて蹴りを打ち込んだ。
「っ…」
「えっ…食らった?」
魔法でも与えられなかったのに何で手応えがあったのか分からないが前みたいに交わされなくて完璧に攻撃が入った。
なぜ攻撃を完璧に打ち込むことができたのか…無茶な体勢から攻撃を繰り出したから対応できなかったのか、それとも別の何かがあったのだろうか。
「食らってない!」
めっちゃ怒ってるし!
顔怖いし
踏み込んだ足で跳躍して上から俺に蹴りを入れ込むがギリギリで躱すことができた。
「危な―っ!」
「フアッ!」
追撃が止まずに壁際に追いやられて顔面へのパンチが入る瞬間に身をよじって頬をかすめはしたけど回避することができた。
けどどうすればいいのか分からない。
アイツの強さの理由があともう少しで分かりそうなのに分からない。
そうやって苦い顔で見つめると異様な光景が目に映った。
アイツが殴った壁の細かな破片等が周囲を旋回していたのだった。
もしかしたらそれが強さの理由なのかもしれない。




