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鼓動の侵奪者  作者: サンショウ


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第3話 新たなる力と道

 心臓という生物にはなくてはならない臓器、だが大きさからすれば握りこぶし程度のサイズ。

 少しずつだった、移された心臓は新たな宿主の為に機能していたがその一方で止まることのない血の流れはほんの少しのだが元の宿主の色に染めていたのだった。5年という歳月をかけて、まだ若いという事もあるからか成長が早い身体な為に短い期間で彼の色はマークスの身体の半分を占めることになった。

 決定的となったのは2つあり、そのどちらもマークスの弱体化が原因であった。

1つは大量の失血で急速に心臓を血液が通ることにより彼の色が加速的に増幅したこと。

2つ目は意識の喪失、これによりマークスの身体の主導権の力が弱まり復活したのだ。


 

 2人は見合うがフィデリは驚く。目の前にいる少年の傷が直っていることに、斬り傷だけならまだしも、切断した左手首から下も存在している。


 「バカな…切断したはず、なぜ…」

 「……」


 少年は沈黙した後に自身の左手を確認する。左手を何回か握ったり開いたりした。


 「俺じゃないからだろうな…失ったのは俺じゃなくてて()()()だから、そんな傷は俺には関係ない」

 (コイツは…危険だ!俺の血がそう叫んでいる!)


 フィデリは剣を振るう。傷を負おうともそれを気にせず少年に襲いかかる。

 少年から見て左上から振り下ろされる剣を左腕で受け止める。


 「っ!」

 「やっぱり…俺を殺すか」

 

 剣を止められた事により動揺するフィデリは少年の一言によりその剣に更に力を込める。持ち手の柄は軋む音を出す程に強く握り込んでいた。


 「なぜ、斬れない…」

 (刃折れの剣であろうと当たってる部分は無傷の刃だ。切れないバズが…)


 剣を再び振り上げ様々な方向から斬ろうとするが…


 (なぜ、なぜ、当たらない!)


 止められてるわけでもない、しかしそれ以上の屈辱として全ての攻撃をかわされている。


 「なるほど…やっぱりな、お前の声は聞こえてたよ。異物として生きてきた故か、お前の動き…なってねぇんだよ!」


 言葉の終わりと同時に急所へと攻撃を叩き込む。一撃ではなく複数の攻撃がフィデリを襲った。


 「グハッ…お、重すぎる」

 (その小さな体格でなんで…)


 フィデリは知らなかった。彼自身は才能ある原石だったが現在はその名の通り原石止まり、まともな勉学を受けなかったためか魔力の扱いすらも分からないでいる。

 魔力を扱うというのは魔法だけではない。身体に纏うことで肉体の強度が増すことはもちろん、スピードなども上がったりする。


 攻撃を食らいその都度態勢を崩すが必ず起き上がり再び攻撃を繰り出してくる。何度も、何度も、何度も崩す。

血まみれになっているにもかかわらずその眼はやられる前と変わらぬ眼であった。


 再び立ち上がり攻撃してくるがもう何回繰り返しているのか分からなくなった少年は目を閉じる。

 少年にも心はある。無慈悲に殺り続けるほど心はイカれていない。


 「もう死んでくれ」


 繰り出した拳は半壊した剣を全壊させ胸を貫いた。体力の限界だったか既に限界を超えて動いていたかこの一撃で崩れずにいた意識は崩壊を迎え、彼の瞳から生気が消えた。



 貫いた俺の腕から肩にかけて彼はもたれかかった。故意ではない、もう死んでいるから倒れようとしてそうなったのは当然のことだ。

 俺は胸から自分の右腕を抜き背中を持ちながら雪の上へと仰向けで寝させた。

彼は俺を殺そうとした、だから俺は彼を殺した。もう俺自身を失いたくなかったから。

 そう思いながらも俺は自分の身体があることを再確認した。ペタペタと無言で全身を触り次第に笑みが浮かび上がってきた。


 「ふふっ…ふはははっ…ふははははっ!!」


 俺は生きている!もう一度生きていけるんだ。喜びはそれだけは終わらなかった。肉体の方にも変化が起きていた。

 

 「素晴らしい…この肉体は、身体の奥底から魔力が溢れてくるようだ!」


 拳を握りしめながら魔力を体外へと放出する。あれから5年が経ったがあのまま成長しても今の状態にはなる事は無かっただろう。それ程までに今の肉体は素晴らしかった。この身体の元の持ち主の膨大な才が俺の肉体へと還元されメリットしかないようだ。しかもまだ50%だ、完全にこの身体をものにした時、俺は一体どこまで強くなれるのか。


 「楽しみだ…」


 だからこそ強くならなければならない。1日でも早く身体を完成させることが、俺を守る事になるのだから。

 ふと思い出した、足元に倒れているこの人が言ったこと。「お前は誰だ?」…か、誰なんだろうな。もう両親の顔も、妹の顔も名前も、はたまた自分の名すら覚えてない。


 「名前…考えないとな」


 自分の件を後回しにして俺は天候が悪くなる前に積雪の山を歩いていく、行く当てもないままに。

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