第2話 50%の目覚め
眠い…眠い…のに、眠ることができない。逆に少しずつではあるが意識がハッキリしてくるような気さえする。そんな気がするんだ。
「ハァ…ハァ…くそ…何でウォレが…」
汚れた服装は当然の如く薄く寒さを防ぐことはできない。更に手は素手のまま、握り込む行為すらかなりの時間を使うぐらいにマークスの身体は限界を迎えていた。
「逃げるな」
そうやって動きを止めてる間にゆっくりと後ろから厚い雪路を踏みしめながらフィデリは歩いてくる。
「エテンは…俺の恩人だ」
フィデリは語る。エテンという女性は自身にとって何なのかを。
「エテンは俺を見つけてくれた。誰も見てくれなかった俺を…エテンは何の偏見もなく、1人の人間として見てくれたんだ。生んだ親すら分からない、家すらもない、名前だって分からなかった。あの国では1人1人の情報がきちんと管理されてるから俺みたいな存在は異物のようなものだった。」
フィデリは右手に持つ剣を強く握り込む。
「見て欲しかった!異物と思われようとも頑張って強くなれば誰かが見てくれると思ったんだ。けど、そんな俺を街の奴らは更に蔑んだ目で見てきやがった。「異物の存在が」、「汚らわしいくせに」ってな!」
フィデリは深く息を落としてから改めて空気を吸う。
「エテンは光だ!暗く閉ざされた俺の世界を照らしてくれた光!そんなエテンをお前は傷つけた。許せなかった…そんなお前を、そしてエテンをそんな風にさせてしまった俺を…だからお前は俺が殺さなきゃいけないんだ!」
マークスはその話をどこまできちんと聞いていたかは分からない。だが彼自身も聞こうとはしていたのか逃げようとはしていなかった。
「ウォレは…悪くない!」
「ッ!」
反省すらない様子にフィデリは剣を振る。振るう剣撃はマークスの左手首を飛ばし血を吹き出させた。
「ぶおおおおおぉぉぉ!!痛い、痛いよぉー!!」
積雪の中をゴロゴロと転げ回りながら悶絶するマークスは雪で見えなくなった崖の境目を越えて下へと落下していく。そしてそれを当然の如くフィデリは余裕に崖を降りて追いかけていく。
「死なれてもらっては困る、そんな風に死んだらお前は何も反省せずに死ぬことになる。」
「く、来るなぁー!!」
右手を向けてそこから火の玉を放つマークス、フィデリはそんな火の玉を剣で切り裂きながら近づいていく。
「フッ…」
下から上へと逆袈裟切りをしてマークスの身体を斬る。
斬られた勢いで後ろに下がり、勢いが止まった瞬間に再び斬りつけていく。横、縦、斜めとあらゆる方向から斬っていく。
「……くッ…」
マークスに最早、微塵も力は残っていなかった。かろうじて呼吸するだけで精一杯の状況。
身体は左手首を落とした為に血液が更に心臓を通して駆け巡ろうと早く脈打つ。そうやってマークスは気を失う。
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トクン…トクン…心地よい音が聞こえてくる。そしてその音はどんどん大きくなってい気がする、いや実際そうなっている。
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この記憶は…お前は誰だ?記憶が流れ込んでくる。全てではない、断片のような記憶の欠片が脳に流れ込んでくる。そうか…死ぬのか、この身体は。俺の心臓は…意味なかったのか?
また死ぬのか…嫌だ!耐えられない!もう死にたくない!生きたい!
フィデリは倒れたマークスの正面に立つ。右手でしか扱っていなかった剣を両手で持ち上へと上げ構える。
「死ね!」
首に目掛けて剣を振り下ろす。
50%
生きたい…生きたいんだ、自分のために、誰かの為じゃない!俺自身の為に!邪魔をする奴は許さない。誰であろうと、敵だ!
剣は振り下ろされた。2人の周辺に2つの物質が散った。1つは血、もう1つはフィデリが使っていた剣が砕けた破片だった。
「グハッ…馬鹿な…」
フィデリは驚愕した。動ける筈のないマークスが動けたこと、そして剣を砕き自身の身体に傷をつけたこと。
更には己に傷をつけたマークスの姿はそこには無かった。目の前にいるのはマークスが着ていた筈の服を似合わないサイズで着ている1人の少年だった。
「お前は…クッ…誰だ!?」
少年は答えない。目の前にいるのは敵なのだから。宿しているのは排除という名の殺意だけだ。




