09 バニラ味
テスト直前の夜。時計の針はすでに深夜十二時を回っていた。
机に向かってペンを走らせていたものの、集中力が切れて頭が重くなってきた頃、スマホがブブッと小さく震えた。
水瀬からのLINEだった。
『一ノ瀬くん、起きてる? 勉強進んでる?』
『起きてるよ。でもそろそろ集中力が限界かも……』
『実は私も! 頭がクラクラしてきたから、息抜きにちょっとだけ近所のコンビニ行かない?』
『えっ、今から?』
『うん! 夜風にあたりたいし、アイス買いたい気分。ダメ……かな?』
画面越しの不意の誘いに、ドクンと胸が跳ね上がる。
深夜に二人で会うという少し背伸びした特別感に、視界の端からすーっと薄いモヤが広がっていくのを感じた。
『わかった。すぐ行く』
上着を羽織って静かに家を出ると、ひんやりとした夜の空気が火照った顔に心地よかった。
指定されたコンビニの前につくと、すでにかわいらしいパーカー姿の水瀬が待っていた。
「あ、一ノ瀬くん! 来てくれてありがとう」
水瀬は少し寒そうに袖をギュッと握りしめながら、嬉しそうに微笑んだ。
二人でホットドリンクとアイスを買い、コンビニの前のベンチに並んで座る。
静かな夜の空気の中、水瀬がふと思い立ったように俺を見た。
「ねえ、一ノ瀬くん。今回のテスト、どっちが点数高いか勝負しない?」
「え、勝負?」
「うん! 負けた方は、勝った方の言うことをなんでも一つ聞くこと。……どう?」
悪戯っぽく微笑む彼女の瞳を見て、俺の負けず嫌いに火がついた。
「いいよ、乗った。負けないからな」
「ふふ、言ったね! じゃあ約束!」
深夜の街灯の下、二人で指切りを交わした。




