14 帰り道[表]
ファミレスを出ると、すっかり日が落ちて秋の冷たい風が通り抜けた。
打ち上げの余韻を残したまま駅に向かう途中、途中で方向が違うやつらが一人、また一人と抜けていき、気づけば俺と水瀬の二人だけになっていた。
「う〜、ちょっと寒くなってきたね」
隣を歩く水瀬が、制服の袖を少し引っ張って肩をすぼめる。
(上着……貸すか?)
一瞬頭をよぎったが、自分のブレザーを脱いで渡すなんてキザすぎて無理だ。
結局言い出せないまま、俺は歩幅を少し緩めて水瀬の隣に並び直した。
そのタイミングで、歩道の内側に入り込むようにしてそっと車道側へと移動する。
「あ、ありがとう。一ノ瀬くんって、さりげなく車道側歩いてくれるよね」
水瀬がこちらを見上げて、無邪気にへへっと笑った。
(気づいてたのかよ……)
見透かされたのが恥ずかしくて、俺は慌てて顔を反対側に向けた。
「……別に。たまたまだろ」
「ふふ、そういうことにしとくね」
水瀬は特に深追いすることもなく、楽しそうに歩道橋の階段を上っていく。
本人は本当に何気なく言っただけなのだろうが、こっちは一言ひとことに心臓を揺さぶられている。
自分の上着のポケットに両手を突っ込み、少し先を行く水瀬の背中を追いかける。
当の本人は、今日が楽しかったことや文化祭の感想を無邪気に話し続けている。
自分がどれだけ俺の調子を狂わせているか、これっぽっちも分かっていない顔で。
「……はぁ」
小さく吐き出した吐息は白い息となり、胸の中に渦巻くモヤと混ざり合って、一瞬だけ視界が白くなった。




