15 帰り道[裏]
ファミレスを出ると、すっかり日が落ちて秋の冷たい風が通り抜けた。
賑やかに駅へと向かう途中、一人、また一人と離脱していき、気づけば私の隣には一ノ瀬くんだけが残っていた。
「う〜、ちょっと寒くなってきたね」
そう言って制服の袖を引っ張ったのは、寒さのせい半分、二人きりになった動揺を隠すためが半分。
隣を歩く一ノ瀬くんは相変わらず無口で、でもすっと自然に車道側へ立ち位置を変えてくれた。
「あ、ありがとう。一ノ瀬くんって、さりげなく車道側歩いてくれるよね」
顔を見られないようにへへっと笑ってみたけれど、見上げた横顔の近さに息が詰まる。
「……別に。たまたまだろ」
そっぽを向く彼の耳が、ほんのり赤い。
黙ると自分の鼓動が夜風に響いてしまいそうで、私は歩道橋の階段を上りながら必死に今日の思い出を喋り続けた。
(私、なんでこんなにドキドキしてるんだろう)
ただの友達なら、こんなに息が苦しくなるはずがない。
目を背け続けていた胸の奥のなにかに、もう誤魔化しは効かなかった。
「……はぁ」
吐き出した息は白い霧になって夜に溶け、隣を歩く一ノ瀬くんの横顔を一瞬だけぼかした。
すれ違う街灯の光に照らされて、冷たい風のせいにして隠した私のほっぺは、きっと彼よりずっと赤かったと思う。




