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【完結済】お肌ボロボロのピクルス国令嬢は、お肌ツルツルのタクアン国市民に恋をする  作者: 眠れぬ夜の小鳥


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9/13

9ピクルス.ヒジカタの過去

「俺は、明日から漁に出るが大丈夫か?」


ある日の夜、ヒジカタからこう告げられた。


あたし達はタクアン国での生活に慣れてきて、サラサが主に家事を担当する事になった。あたしは手の豆が回復したので、細筆で筆記体の練習をしたり、近所の人とのおしゃべりや子供達と遊んで、充実した日々を過ごしていた。


「仕事に復帰されるのですね。お帰りは、いつ頃になりますか?」

「1週間後だ。君達を助けた日は、ちょうど漁が終わって帰る所だったんだ」

「そうだったのね。疲労の所、申し訳なかったわ」

「海での事故は多いから、船乗り達はお互い助け合って生きている。俺も昔、海で溺れて助けられた事があるから、放っておけなかった」

「よい関係性ですね」

「今までずっといてくれたのは、休みだったから?」

「2日間は元々休日だが、漁師仲間から世話するなら休めと言われていた」

「休日返上で付き添っていただき、ありがとうございました。お嬢様もこの国になじんできたので、心配はいらないかと」

「ケガも治ったし、色んな人と話をして文化の違いを知るのがすごく楽しい!」

「そうか。それなら安心して、仕事に励める」


そう言って、彼は早朝に出かけていった。漁師の朝は早いからだろう。


「お嬢様、今日も近所へ出かけるのですか?」

「その予定よ」

「私もお供させていただきます」


2人で近所へ向かった。農家のツネさんの野菜の収穫を手伝う為だ。


「おはようございます」

「ああ、おはよう。今日は、かぶの収穫を手伝ってくれるかね?」

「ええ。あたし達でよければ、いくらでも手伝うわ!」

「腰が痛くて1人では辛くてね。頼んだよ」

「分かりました」


ツネさんは、慢性的な腰の痛みでかがむのが難しい為、あたし達は野菜を引っこ抜く手伝いをしているのだ。


「いつもありがとうねぇ。お礼に持っていってちょうだい」

「ありがとう。ツネさんの野菜は、どれも美味しいから助かるわ」

「そう言われると作りがいがあるねぇ」

「それでは、また手伝いに来ますね。お体に気をつけてください」

「また来ておくれ」


かぶを大量にもらったので、近所に配り歩いた。その中でこんな話を聞いた。


「土方さんが、結婚しない理由を聞きたくないかい?」

「確かに気になるわ。イケてる顔だから、恋人の1人もいないのはおかしいと思ってたの」

「実は過去に恋人がいたのだけど、仕事柄すぐには帰って来ないのが原因で振られちまったのさ」

「『海の男なんて嫌い!』なんて言われたら、面目丸潰れじゃないか。漁師の町なのに」

「それは女性側に原因がありますね。給金の良さに惹かれて付き合ったものの、構ってもらえない事に腹を立てて別れを切り出すなんて。最低です」

「だから、『1人の方が自由だ』って言ってたのね。相手の事を考えなくていいから」


本人から直接聞くべきだったかもしれないが、話してくれなかった可能性が高い為、人づてに聞けてよかった。

帰り道、サラサが口を開いた。


「お嬢様、どうしますか?ヒジカタさんの事は諦めて別の『白馬の王子様』を探しに行きますか?」

「あたしがヒジカタの事を好きだって気づいてたの?」

「ええ。自覚したのは、鏡越しに彼を見た時からですよね?」

「ほんと、どこまでもお見通しね。気持ちすら伝えてないのに、諦めるなんてできないわ。『当たって砕けろ』よ!」

「お嬢様ならそう言うと思っていました。ただ、砕けては恋は叶いませんが」

「そうよね。玉砕前提ではだめよね。どうしようかしら」

「手紙で想いを綴るのもありです。字は私が教えますので、この国の書き言葉で直接伝えるのが有効かと。恋が実らずとも、努力は伝わります」

「早く帰って書きたいわ!」


帰宅したあたしは、サラサに字を教わりつつ、ラブレターを書いた。好きな人に想いを伝わる日が初めて来たのだと、書いているうちに実感してきた。内容はこんな感じだ。


『ヒジカタへ

あたしはあなたの事が好きです。

命を助けてくれた事、この国の文化を教えてくれた事、美味しいご飯や潮湯で心身共に健康になれた事、そして、なによりあなたの顔が好きです!大好きです♡

中々帰って来れなくても、あたしはわがままなんて言わないから、どうかあたしと結婚してください!!

美人になったマリエッタより』


手紙を読んだサラサがこう言った。


「実にお嬢様らしい手紙です。素直な気持ちが溢れていて、素晴らしいです。ただ、もう少し謙虚な方がよろしいかと。『美人になった』は自意識過剰では?」

「前と比べたら、全然違うわよ!書き直す気力もないわ。ここまで何時間かかったと思ってるの?」

「そうですね。再び豆ができてはどうしようもありませんから、このままで渡しましょう」


書き終えたあたしは、机に突っ伏して寝てしまった。サラサがうすいひざ掛けを肩にかけてくれていた。

いつの間にかヒジカタが帰って来たらしいけど、気を遣ってあたしが起きるのを待ってくれていた…。


最終話へ続く…

読んでいただきありがとうございます!


小話⑨最近、「匿名でできる文通サービス」なるものをテレビで見ました。運営に本当の住所と名前を登録しておけば、文通相手には架空の住所と名前で届きます。デジタル化が進む現代において、こうしたアナログに立ち戻るのもいいですよね。


もし、私がこのサービスに登録したら文通相手になってくれる方はいますか?ミミズのような字でよければですけどw

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