8ピクルス.うどん作りのふみふみは楽しい
「これからうどんを作る。マリエッタでもできそうな作業があるから一緒にやろう」
「それはぜひやりたいわ!」
「生地をこねる所までは私達でやりますので、見ていてください」
「まずは塩水から作る。粗塩があるから、それを入れる。サラサは木鉢に小麦粉を入れてくれ」
「はい」
「塩水を3、4回に分けて回し入れ、素早くかき混ぜてそぼろ状にする」
「できました」
「こねるのは力がいるから俺がやろう」
そぼろ状だった生地が、あっという間に1つの大きな塊になる。厳密には違うけど、パンの生地もこんな感じで作るのかとあたしは思った。
「清潔な布巾と板があるから出してくれ」
「はい」
サラサが布巾と板を出し、ヒジカタが生地を包んで板の上に乗せた。
「マリエッタの出番だ。俺が見本を見せるから、真似して生地を踏んで欲しい」
「分かったわ」
手本を見た後、足の裏全体で生地の中心から外側へまんべんなく踏んでいく。あたしはまるで、ダンスを踊っているような気持ちになった。
「上手だな。1度折りたたむから、降りてくれ」
「何度も繰り返すのね」
「そうだ。『コシ』を出すのに重要な事なんだ」
その後も、踏んでは折りたたむ作業をやるので、終盤はへろへろになっていた。
「大丈夫か?そろそろよさそうだから、仕上げをしよう」
そう言ったヒジカタは、あたしを持ち上げて、生地の上に落とした。急な行動にドキドキする。
「何するのよ」
「この方が、体重をかけられるから楽だろう。子供でもそうしてるぞ」
「確かに疲れていたから助かるわ」
数回ほど生地にあたしの全体重をかけて、ようやく熟成に入った。
「マリエッタは休んでていいぞ。お疲れさま」
「生地を踏むのは、中々楽しかったわ」
熟成した生地は、サラサによって再び伸ばされた後、細長く切って茹でられていた。ヒジカタは煮干しや昆布をベースとしたつゆを作っていた。
「そろそろできるから、着替えてきたらどうだ。昨日の服が乾いたんじゃないか?」
「確認してまいります」
朝早くに洗濯したので、服は乾ききっていた。寝間着から着替え、食卓についた。
「寝間着姿で忘れていたが、昨日までは洋服を着ていたのだもんな。こっちの方が違和感あるなw」
「そんなすぐなじんでた?」
「ちゃんとしたのを着れば、和装美人になれると思う」
「お嬢様は本来、美人なのです。小さな頃はお肌も綺麗で体形も普通でしたから」
「そうか。なら、ここにいたらいい。潮湯も効果があったのだから」
「あたし、健康な体になりたいわ!」
うどんを食べながら、そう決意した。
「この後、近所からお古をもらいに行こう。女物なら調整も少ないし、着物はいくつかないと困るだろう」
「助かります。早速行きましょう」
後片付けを済ませてから近所を回り、いくつか着物や寝間着などをいただいた。
「見ない顔だけど、どこから来たの?」
「うわさに聞く、外国人という人達かい?」
「旅行のつもりが、災難だったねぇ。お古ならいくらでもあるから持っていきな!」
声をかけた人達は皆、あたし達に興味津々で様々な質問をしてくる。話を聞き終わると、お古を用意してくれた。
「皆優しいから、たくさんもらえてよかったな!」
「感謝してもしきれません」
「毎日選んでもいいくらいね!」
「以前の贅沢癖はおやめください。タクアン国の人々は、奥ゆかしいのですよ」
「…分かったわ」
あたしはハンバーガーだけでなく、服も同じくらい好きで1日に何度も着替えていた。服の色やデザインによって、スタイルが変わるのが面白いからだ。サラサにとっては、その分洗濯するハメになるので、たまったもんじゃないが。
「サラサが毒づきたくなるのもうなづけるな…」
「他のご令嬢も似たようなものよ」
「俺、漁師でよかった。侍女なら耐えきれなかった」
「ヒジカタさんには無理でしょうね」
ヒジカタが侍女だったら、すぐに逃げ出している所が想像できて、あたしは思わず笑ってしまった…。
9ピクルスへ続く…
読んでいただきありがとうございます!
小話⑧今回の話は私の実体験を元にしています。小学生の頃、公民館でうどん作りをした事があります。その時に低学年だった私は、マリエッタのように上級生の方に持ち上げられて生地を踏んだりしてました。楽しかったです!
今の子供達も、地域行事でうどん作り体験ってあるんですかね?




