5ピクルス.サラサの嘘と秘密
「港に着いたぞ。手を引いてやるから、すき間に落ちるなよ」
「私が先に降りた方が、お嬢様を支えられると思いますがよろしいでしょうか?」
「それで構わない」
1週間振りに陸へと降り立った。硬い地面にどこか安心感を覚えた。
「揺れる心配がないっていいわね!」
「本当にそうですね。私も少しトラウマになりました…」
「幸か不幸か、しばらくは海を離れて、ここにいるようだろ?お金がなくては故郷には帰れないし」
「仕事には、ぜひ私をご用命ください。損はさせませんので」
「その間、マリエッタはどうするんだ?」
「あたしも手伝おうかしら。待っていても暇だし」
「お嬢様は『白馬の王子様』でも探してください。足手まといになるだけです」
「それ、おとぎ話じゃないのか?まじで信じてるの?」
「現実にはいないですって!?嘘よ!何の為にあたしは国を出たわけ?」
「旅行の理由、それだったのか…」
「お嬢様を連れ出すには、これが最適解です。今までのマリエッタ様は、寝ても覚めてもハンバーガーをむさぼり食ってるだけの、ニキビモンスターでしたから」
「サラサの毒が強烈じゃないか?今のマリエッタは、そんな感じじゃないだろ」
「確かに今は荒れた肌が少し落ち着き、ふくよかとは言いがたくなりましたね」
「鏡はないのかしら。あたし、どうなってるの?」
「家にはあるぞ。あと少しで着くから、見てみるといい」
船を降りてから、あたし達はずっと歩き続けていた。最後の船での食事に特製ハンバーガーを食べて以来、何も口にしておらず、疲労と空腹でしんどかった。ちなみに、大好物だったハンバーガーが、なぜか重く感じて食べきれなかった。残りはサラサが美味しくいただいている。無理してでも食べておけばよかったと思った。
「頑張ったな。ここが俺の家だ」
「平屋なのですね。母屋と離れがありますね」
「古い家特有だからな」
「あたしの屋敷は3階建てよ」
「広そうだな」
「部屋の数が毎日違うのよ」
「それはお嬢様が把握していないだけで、数は変わりません」
「冗談のつもりで言ったんじゃないのか?」
「至って大真面目です」
「そうか。立ち話もなんだから、中へ入ってくれ」
「お邪魔するわ」
「失礼します」
家の中へ入ると、サラサが玄関で靴を脱いだ。
「お嬢様もこれより先は靴をお脱ぎください。タクアン国では、家の中は土足厳禁です」
「分かったわ」
ヒジカタに案内されて、居間の座布団に座るよう促される。
「本当に外国人か?初めて来たのに、文化をよく知ってるな」
「確かにそうよね。何でも知ってるから、まるで来た事があるみたいだわ」
「『初めて来た』のはお嬢様だけで、私は違います」
「だから詳しいんだな」
「ただ、訪れたのは久しぶりなので、最近の情報は知りません」
「ずっとローズベルト家にいるもんね」
「ええ」
サラサは過去を話し始めた。
「私はタクアン国とピクルス国のハーフです。タクアン国で生まれ育ちました。母の実家に行く為にピクルス国を訪れましたが、実家に着く前に両親は事故で亡くなりました。私は奇跡的に無傷だった為、現場に居合わせた人が孤児院に連れて行き、大人になるまで過ごしました。その後、ローズベルト家へ奉公する事が決まり、お嬢様の世話を任されました」
「初めて聞いたわ。サラサの事、何も知らなかった…」
「お嬢様に話すつもりはありませんでした。侍女の出自など関係ないのですから」
「下の名前しか知らないけど、フルネームがあるの?」
「はい。ヒジカタさん、紙と筆を貸していただけますか?」
「お安い御用だ」
受け取った道具でスラスラと書いていく。
「私のフルネームは、『山田更紗』と言います」
「急にタクアン国らしさが出たな。字も達筆じゃないか!」
「ペン字も完璧よ」
「侍女ですから、書けねば仕事になりません。筆は久しぶりに使いましたが、体に染み付いているようです」
「そういや俺も名字しか言ってなかったな。貸してくれるか?」
ヒジカタもサラサが書いたとなりにフルネームを書いた。
「『土方悟』だ。字が汚くて読めないかもしれないが」
「ギリギリ読めます。これを期に、練習されてはどうですか?」
「俺にまで毒を吐くなよ」
「サラサが気を許すのは珍しいの。毒づくのはその証拠よ!」
「そう言われても嬉しくねえな。マリエッタと同レベルと言う事だろ?」
「確かに、字はお嬢様とどっこいどっこいです。しかし、ヒジカタさんは、漁師として活躍されているではありませんか。役立たずのお嬢様とは月とすっぽんです」
「相変わらず、けちょんけちょんね」
笑い合う3人の声が家に響いた…。
6ピクルスへ続く…
読んでいただきありがとうございます!
小話⑤サラサの秘密が明かされたので、私の秘密も1つ明かします。執筆活動をしている事を家族は一切知りません。スマホをいじっているだけのゲーム廃人だと思われていますw
いつか結果を出して堂々と活動するのが夢です!




