34
"できたぁ! すごいやカイト! コロたち、大きくなって強くなったよー!"
コロマルは大はしゃぎしているが、僕はまた間違ってしまったんじゃないか?
ステータスを確認したし、目の前のスライムが繋がりからもコロマルであることは確かだ。
ヒュージスライムとなり、強くなった。
13歳の僕が、手のひらを合わせて両腕で丸を作ったくらいの直径から、指先が少し離れるくらいまで大きくなった。
でも……。
「プ、プルリンはどこにいったの……? もしかして僕、あいつを犠牲にしてしまったんじゃ?」
自分のしでかしたことが怖くて、震える声で尋ねる。
プルリンの命を糧にして、コロマルを成長させたんじゃないか……そう考えるのが自然だろう。
"んー? プルリンはねぇ、コロと一緒になったみたい! 大丈夫だよカイト。コロたちは嬉しいんだから。これはね、コロたちが望んだことなんだぁ"
あっけらかんと答えるコロマル。
強くなることが望みで、それを僕が叶えてくれた……そういうことらしい。
親方の言葉――テイマーとしての覚悟か。
従魔はテイマーにとって宝に等しい。大切な存在だ。
命じれば、主人のためにその身を差し出す。僕もまた、従魔のために体を張る。まさに、一心同体の関係。
コロマルが言っているのは、従魔同士も強くなるためならば、お互いのために協力する……そういうことだろうか?
"ねえカイト、もっと大きくなれるかなぁ? オークなんかよりもずっとずーっと大きく! さっきのカイト、悲しそうだったよ。だから、コロたちがやり返してあげる!"
気持ちは嬉しいし、頼もしいけれど、僕の召喚枠は2だ。
期待に応えてあげたいのは山々だが、これ以上は難しい……よな?
【名 前】 カイト・フェルト
【適 性】 スライム超特化テイマー
【レベル】 12
【魔 力】 10/12
【筋 力】 23(8)
【防御力】 23(8)
【召喚枠】 1
【スキル】 テイム、モンスター鑑定
自分のステータスを見てみると、ヒュージスライムになっても加算される数値は二倍のようだ。
それよりも……。
「嘘でしょ? 召喚枠が余ってる!」
夢でも見ているのだろうか。そんな都合のいいことあるわけない……なんて思ったら、まさしく都合のいいことが起きていた。
テイムに使う魔力は1。つまり、あと10回も合体できる。
レベルが上がれば、魔力の最大値は増えていく。
魔力は体を休めているとき、とくに寝ている間が一番効率よく回復する。
もし無限に可能なら、明日になればまた同じように森に来て、どんどん合体させていって……僕は恐ろしい早さで強くなれるということに……。
「コロマル、どれくらいまで大きくなれるの?」
"えーっ? カイトが分からないならコロも分かんないよー?"
まあそうだよな。やってみるしかないか。
少し重くなったコロマルを抱えて、再び走りだす。
テイムして合体。
テイムして合体。
コロマルがどんどん大きくなっていく。
テイムして合体。
テイムして合体。
抱えるのが難しいほどの大きさになってしまった。
地面に降ろして、一緒に走る。
そして、12体のスライムをテイムし、全ての合体が終わった。
自重で半球状に潰れてしまっているが、コロマルの頭頂部は僕のへそ辺りまで達している。
この巨大な姿をスライムだって説明したところで、誰が信じるだろうか。
合体してくれとお願いしたら、みんな少しの躊躇もなくコロマルと体を密着させ、一つとなった。
怖いとか、嫌だとか、そんなマイナスの感情を抱いていた者は一人もいない。
むしろ、ワクワクしていたり、嬉しそうだったり、これを待ってましたと言わんばかり。
モンスターにとって、強くなることはそれほどに価値のあることなのかもしれない。
だからこそ僕も、迷いなくお願いできた。
「今日はここまでだね。もう魔力が無くなっちゃったよ。ふぅ、ヘトヘトだぁ」
魔力を使うのはとても疲れる。
体から力が抜け落ちていくような感覚だ。
さて、コロマルはどうなったかな?
【名 前】 コロマル
【種 族】 ヒュージスライム(12)
【レベル】 1
【魔 力】 2/2
【筋 力】 2(12)
【防御力】 2(12)
【スキル】 なし
これがレベル1のステータス?
スライムだったら、レベル12なのと同じ。
移動する速さも、僕が歩くのとほぼ変わらない。
合体するにつれヒュージスライムの横の数字が増えていたから、僕の予想は正しかったみたいだ。
こんなことができたのも、おそらく超特化のおかげだろう。
レベルが上がればどうなるのか確かめたかったが、時間を忘れて駆け回っていたので空が暗くなり始めている。
そろそろ森が危なくなる頃だ。
「僕ら、本当に最強になれるかも!」
前に進んでよかった。
僕はまた、僕を好きになれそうだ。
"あははっ、カイトは最初からそう言ってたよ?"
何を言ってるの……と、いった感じで、コロマルが首を傾げるように体を横に折り曲げる。
「ふふっ、そうだったね。さて、そろそろ帰ろうか。パパとママにコロマルを紹介しなきゃ!」
"パパさんとママさんかぁ。えへへ、楽しみだなー!"
森を後に、街中を歩く。
白い石畳は茜色に染まり、夜の訪れを告げる街灯に照らされている。
僕の後ろを、コロマルがズリズリと這いながらついてきて、そのコロマルを見た人々がギョッと目が飛び出しそうなくらい驚いていた。
ママとパパはどんな顔をするだろう?




