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「ただいまー! ごめん、遅くなっちゃった!」
家の外にまでご飯のいい匂いが漂っていた。
靴を脱いで、リビングへ向かう。
「おかえりカイト。パッセさんのところに寄って来たんでしょ? お礼はちゃんと言って……えっと、後にいるのは何?」
ママは今日、ザンブが戻ってくることを知っている。
学校での出来事ではなく、間接的にパッセの親方の話をするあたり、気を遣ってくれてるんだと思う。
それよりも、コロマルを見て時間が止まったみたいに固まってしまった。
ママと僕の身長はほぼ変わらない。いや、ママの方が少しだけ高いか。そんなママの半分ほどまで迫る大きさのスライムがいるんだから、そりゃそうなるよね。
普通のスライムなら膝下くらいだもん。
……あれ、そういえばリビングにはパパもいたはずだけど。
ふとテーブルの方を見てみたら、口をポカンと開けて、ママと同じように固まっていた。
「僕ね、またテイマーとして頑張ることにしたんだ。この子はコロマルだよ。挨拶できるかな?」
コロマルが縦に体を伸ばし、ペコリとお辞儀をする。
張り切りすぎたのかな。パパよりも背が高くなったもんだから、パパもママもなおさらびっくりしちゃってるよ。
「あーっと、なんだ? その、まあ、とりあえず座れや」
パパに促されて隣に座ると、コロマルから視線を逸らさずにママが夕飯を運んでくる。
そして、ママも席につく。
お腹がペコペコだ。この料理を前にして、騒がない腹の虫などいるのだろうか。早く食べろとグーグー鳴っている。
「いただきまーす!」
今日もママのご飯は美味しい!
パリッと皮目が香ばしい鳥のグリルは、ハーブと一緒に揉み込まれていたようで複雑な味がする。
その余韻に浸りながら、蒸した芋をハフハフと頬張れば、口の中に幸福感が広がっていく。バターが塗ってあるんだな。
あー、いけない。勢いよく食べちゃったから、喉に詰まりそう。スープで流し込まないと。
「はぁ、この状態の俺らを見て、よくもまあすんなりと食えるもんだな。たくましいというかなんというか」
「そうね、色々と説明して欲しいわ。パッセさんの工房には寄ったんでしょ? コロマルちゃんは……なんというかその、ずいぶんと大きいみたいだけどスライムなのかしら?」
呆れた顔で僕を見つめるパパとママ。
話したいことがたくさんあったのに、食欲が勝ってしまった。
「僕ね、スライムテイマーではあるんだけど、スライム超特化テイマーなんだ。コロマルの種族はヒュージスライムなんだけど、おそらく超特化が影響してると思う。順を追って説明するね……」
超特化テイマーが他のテイマーと違うところ。
今日、学校でザンブに何をされたか。
パッセの親方とダグラスさんに相談して、前に進めたこと。
そして、森で何が起こったのか。
全て包み隠さず話し終えた頃には、夕飯から立ち昇る湯気がなくなっていた。
「どうりで……スラマルとコロゾーのときもそうだが、頭が良すぎると思ってたんだ。超特化ねぇ、納得いったぜ」
「明日からの学校は大丈夫なの? ママも一緒に行ったっていいんだからね?」
パパが腕を組みながら大きく頷く。
ママは、僕よりも辛そうな顔で心配してくれている。
実は、帰り道で今後について考えていた。
ダグラスさんとパッセの親方に言われたことも踏まえて、自分なりの答えを出したんだ。
正しいかは分からない。
だからこそ、パパとママに相談してみよう。
勝手に行動して間違えるのは、もうこりごりだから。
「パパとママに聞いて欲しいことがあるんだ……」
自分が置かれている状況を打開するために、今後どう動いて何をするべきか。話し終えると、二人とも難しい顔をしていた。
でも、パパはパパなりの意見をくれて、ママは否定はしながらも最終的には納得してくれた。
これで明日も学校に行ける。
ご飯は冷たくなってしまったけれど、ママの料理はそれでも美味しい。
全て平らげて、食器を台所に持っていく。
「コロマルちゃ~ん、ちょっと来てくれる~?」
お腹をさすりながら、パパの隣でソファーに座ってテレビを見ていると、コロマルがママに呼ばれた。
僕には、これから何が起きるか分かる。
……ほらね?
視界の端で、体の中に食器を突っ込まれるコロマルの姿が見えた。




