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コロマルを右手に抱えて森の周りを探索。
吹っ切れてしまえば、あとは進むだけ。
足取りが軽い。心が弾むようだ。
少し走れば、スライムはすぐに見つかる。
「……いた!」
今度は新しいダグランス一号を使ってみよう。
コロマルを地面に降ろし、穂先を後ろに、石突を前に。
「それっ!」
勢いそのままに奇襲をしかける。
スライムは弱い生き物だ。今の僕のステータスでは、どの攻撃も致命傷になりかねない。
かなり加減をした突きを放つ。
初めて使うダグランス一号は、不思議と手に馴染む。
まるで、込めた力が少しも逃げずにそのまま伝わるみたい。
丸い石突が叩いたスライムの体表は、ポヨンと揺れて波紋を浮かべた。
「えいっ! たあっ!」
右から左から、赤ちゃんのほっぺたをつつくみたいに攻めたてる。
じゃれてるのと同じ。ほとんどダメージなんて入っていないはず。
しかし、僕の迫力と猛攻に押されたのかスライムが逃げていく。
負けを認めたらしい。
「――テイム!」
こうなればこっちのもの。
成功は必須だ。
「君の名前は、プルリンにしよう! みんなで最強を目指すんだ!」
"はい、ご主人様。このプルリン、誠心誠意仕えさせていただきます"
かしこまった奴だな。
一人一人個性があって、やっぱりスライムは面白い。
さて帰ろうかと思ったけれど、欲が出てしまう。
せっかく仲間になったのだから、スラマルやコロゾーみたいにローリングアタックを教えたり、レベルを上げたりしてあげたい。
"……最強? コロはスライムだよ? 簡単に殺されちゃうんだぁ。弱いって分かってる。……でも、そんなコロが、ほんとに最強になれるの?"
コロマルから、ワクワクした興味が伝わってくる。
強くなれることが嬉しいみたい。パッセの親方が言っていた通りだ。
従魔になってくれたってことは、そういうことなんだな。
僕も覚悟を決めないと。
「なれるさ! これからどんどんレベルを上げて、僕が色々と教えてあげる。そうすれば、ゴブリンだろうがオークだろうが……」
勝てる……と、言いたかった。
でも、言葉が詰まってしまう。
レベルを上げれば強くなる。
僕は超特化のおかげで、他のスライムテイマーと違い二倍のステータスが加算される。
先生も褒めてくれたし、テイマーとしての才能があるのかもしれない。
……でも、負けた。
ザンブが召喚したオークはレベル12。あの自信だから、謹慎中にもっと強くなっていることだろう。
こちらは一からのスタートだ。今まで通りにやったところで追いつけるのか?
"ご主人様、どうされました? ご気分が優れませんか?"
プルリンが心配してくれている。
初日からこれじゃ、テイマー失格だな。
「実はね、僕は一度オークに負けてるんだ。君たちと同じスライムを二人……死なせてしまった……。今度こそ勝ちたい。でも、どうしたらいいか分からなくてね」
従魔と真剣に向き合おう。そう考えたら、自然と自分の失敗を話していた。
怖がらせるかもしれない。戦いたくなるかもしれない。でも、伝えるべきだと思ったんだ。
"う~ん、オークかぁ。オークより大きくなったら勝てるかも! コロも大きくなりたいなぁ! カイト、できる?"
いやいや、大きくするのは無理でしょ。
体の大きさを変えられる能力を持ったモンスターはいるけれど、スライムはスキルを覚えられないし。
空気を入れて膨らませる?
それじゃあ逆に弱くなっちゃうよな。
攻撃を食らったら割れて飛んでいきそう。
どうにか二人の質量を保ったまま巨大化させてやれないだろうか。
スライムは、核を体の中心に浮かべた球状の生物。水滴を垂らしたかのように重力で潰れて、好きに形を変えられる。
……水滴?
「そうか、コロマルとプルリンが合体すればいいんだ! なんて、無理だよね。あはは……」
僕は何を言い出したんだろう。
水滴を思い浮かべたら、葉っぱの上でくっついて、零れ落ちる様子が頭の中に流れてきた。
咄嗟に口にしてしまったけれど、ありえないよな。
"プルリン、合体だってー! やってみよう?"
"はい、仰せのままに"
コロマルがプルリンに近づいていく。
二人が寄り添うように重なりあって……そして、一つになった。
「……は?」
目の前で起きたことが信じられない。
一回り大きくなったスライムが、ポヨンポヨンと飛び跳ねている。
……なんだこれ?
いったい何が起きたんだ?
【名 前】 コロマル
【種 族】 ヒュージスライム(2)
【レベル】 1
【魔 力】 2
【筋 力】 2(2)
【防御力】 2(2)
驚いてモンスター鑑定をしてみると、種族がスライムからヒュージスライムに変わっていた。
それに、レベル1時点でのステータスが2倍になっている。
種族名の横の数字は、2体分ということだろうか。
いやいや、僕は何を冷静に分析しているんだ。
ヒュージスライムだぞ?
スライムの種族にはスライムしかいないはずなのに。
世界の常識が変わってしまった。




