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最弱スライムテイマーは超特化の力で最強へと至る  作者: 伊藤ほほほ


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「うわぁ、あいつテイマーなのかよ。しかもスライムってマジ? 終わったわこれ」


「あの子、震えてるじゃない。はぁ、倍率が高いわけね。大穴狙いで賭けて失敗したかも」


「おいスライム野朗! せっかく来たんだ、すぐ負けやがったら承知しねえぞ!」


 おそらく僕が勝つ方に賭けたのだろう生徒が文句を言っている。

 こうなるんじゃないかと予想はしていたけど、居心地の悪い雰囲気だ。

 でも、逆に冷静になれた。緊張してたのが馬鹿らしいや。


「ぶひょほほほ! 地獄へようこそカイトちゃ~ん!」


 レッドゲートの前で、ザンブが余裕の笑みを浮かべている。

 予想通り、オーク用の装備は用意できていないみたいだ。大楯の一つでも準備されていたら、僕らは負けてたかもね。

 それどころか、格好は制服のまま。武器すら装備していない。負けるだなんて一つも考えていないのだろう。

 ……舐め腐りやがって。


「試合を始める前に、本日のジャッジ兼解説を務めていただきます二人の担任であるライル先生よりルール説明をお願いします!」


「ライル・エスカです。勝敗が決まったと私が判断した時点で試合終了とします。今日は、アイテムの使用以外は何でもありのモンコロルール。……では両者、準備はいいでしょうか?」


 片手をズボンのポケットにつっこみながら、ザンブが気怠そうに右手を挙げる。

 僕は深く腰を落とし、槍を右脇に抱えながら、左手で合意を示す。


「――バトルスタート!」


 先生の号令で、試合が始まった。


「出てこいオーク! あのクソ雑魚が俺っちに歯向かったことを後悔させてやれ!」


 ザンブの隣に現れたのはたった一体のオーク。

 どうせ勝てるだろうと踏んで、レベル上げをしなかったのだろうか。

 でも、何が起こるか分からない。油断は禁物だ。

 僕はただ、やるべきことをやる。持てる全てを出し切るのみ。


「行くよっスラマル、コロゾー! 相手は一体だ、位置について待機!」


 二人に指示を出し、相手の出方を伺う。

 ザンブとの距離を保ったまま、スラマルを右へ、コロゾーを左へとゆっくり移動させておく。僕から三歩ほど離れた場所で止まった。


「さあ両者、まずは様子見といったところでしょうか! ライル先生、一般的にはスライムテイマー劣勢かと思われるのですが」


「その認識で間違いありません。まだ適性診断を受けて一週間くらいですからね。カイトくんがどれだけ仕上げてきたかにもよります」


 実況と解説が会場を盛り上げる。


「ぶひょひょひょひょ! ほんとにスライムなんかで挑んできやがった! おいカイト、縮こまってないで攻撃してみろよ? 待っててやるからさぁ!」


 ザンブが右手を前に出し、クイクイッと人差し指を曲げながらかかってこいと挑発。その右隣で、巨大なザンブ(オーク)も鼻息荒く同じポーズをとる。


 こっちにはオークを倒す作戦があるんだ。

 本当は今すぐにでも仕掛けてやりたいし、言い返したいこともたくさんあるけど、ここは我慢しよう。

 ちょっとやそっとじゃ今日の僕の心は乱れないよ。

 慎重に慎重に……。


「てめえら、遊んでんのか? さっさと戦いやがれ! つまんねえ試合見せるんじゃねえよ!」


「オーク一体しか出せないなんて、あのデブも期待外れだな!」


「ザンブ様! カイトなんてちゃちゃっと倒しちゃいましょう!」


 ヤジが辛辣だな。応援してるのは、ザンブ軍団の誰かだろう。

 プライドの高いザンブのことだ。余裕ぶってカッコつけてたみたいだけど、我慢できるはずがない。

 そろそろ動いてくるぞ。


「ぶひょほっ! 分かってますよ先輩方。すぐに終わらせたらつまらないでしょ? 俺っちなりのハンデだったんですがね……。オークちゃん、雑魚カイトとゴミナメクジをぶちのめせ! できるだけ残酷にな!」


「プギィイイイイイイ!」


 ザンブが指示を出すと、興奮したオークが甲高い声で鳴く。

 鼻から蒸気を吹き出して、山のように大きな体が地響きを立てながらこっちへ向かってくる。


「おーっと! まず仕掛けたのは、ザンブ・ヨークシャーのオークだ!」


 大勢の人が見守る闘技場という慣れない環境の中で、一度倒したとはいえ遥か格上のモンスターと対峙しているのだ。そのプレッシャーで、スラマルとコロゾーが怯む。


 安心して、君たちは強いよ。

 あれだけ頑張ったんだ。一歩前に踏み出せば勝つのは僕らさ。


「スラマル、コロゾー、僕を信じろ! 作戦通りにいくぞ!」


"はい、カイト様! 信じておりますとも!"


"このコロゾーとしたことが、空気に飲まれてしまいました。見せてやりましょうぜご主人!"


 二人に気合いを入れると、魂から熱が伝わってくる。

 引き絞った弓の弦みたいに体を歪ませてググッと溜めを作り、体をまん丸に固めながら転がっていく。

 もうスラマルとコロゾーに恐れはない。柔らかい地面を削り取りながら大きく弧を描き、遠回りしながらオークの背後へと向かう。


「うおおおおおおっ!」


 僕も自分に喝を入れて、前のめりに姿勢を低く維持したまま走りだす。

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