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最弱スライムテイマーは超特化の力で最強へと至る  作者: 伊藤ほほほ


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 一夜明けて決戦の朝。


「行ってくるねー!」


「ちょっとカイト! なんでスラちゃんたちを連れてくのよ! せめてコロちゃんだけでも置いてってよ。ね、いいでしょ?」


「ダ~メ! 今日は一緒なの! 帰ったらまたお掃除でも洗い物でも手伝ってあげるから!」


「そんなぁ……カイトのいじわる!」


 今日はスラマルとコロゾーを抱いて学校へ向かう。

 追い縋(すが)ろうとするママを振り切って、走りだす。

 家の裏へと周り、倉庫から槍を回収。ラビちゃんの家を横目で見ながら通り過ぎて、大通りに入る。

 ここから学校までは一直線だ。


 ラビちゃんと会えなくなって、もう一週間になる。

 何か進展があったかなと気になって、実は昨日ラビちゃん家(ち)にオーク肉を届けたとき、おばさんに聞いてみたんだ。

 でも、領主様のところで保護されてから音沙汰がないんだってさ。

 手紙を送っても返ってこないみたい。そりゃおばさんも不安になるよね。夜も眠れないし、食事も喉を通らないらしい。

 ぱっと見ただけで目の下に青いくまがあるって分かったし、精神的な疲労からか少しやつれてたように感じたよ。

 おじさんも領主様のお館に直接行ってみたらしいんだけど、門前払いで帰されたんだって。

 このまま王都に行くまで会えないなんてことないよね?

 ……ラビちゃん、泣いてないといいけど。


 なんて考えてたら、あっという間に学校だ。

 テイマーになる前の僕なら、ラビちゃんと競走しながらでも30分はかかっていた。それが今では軽めに走って20分くらい。

 疲れにくくなったし、力もついた。強い弱いに関係なく、これはテイマーのメリットだろう。

 自分がなってみて初めて分かることだけど、テイマーも悪くないんじゃないかな。

 世論はサモナーしか認めないような雰囲気だけど、今の僕がサモナーでもテイマーでも好きな方を選んでいいよと言われたら、迷わずテイマーを選ぶ……かもしれない。

 ……やっぱり嘘。サモナーを選ぶだろうね。


「関係ないことばかり考えちゃうな」


 どうしてだろう。学校がいつもより大きく見える気がする。

 異様なプレッシャーを放っていて、校舎から立ち昇る蒸気みたいなもやが揺れている感じ。

 空も暗雲が垂れ込めて、どんよりと暗い。

 思わず校門の前で立ち止まってしまう。

 次から次に僕を追い越していく他の生徒の背中を見送っているうちに、学校の大時計がカランと音を鳴らし、授業が始まる5分前を教えてくれた。


 おそらくだけど、僕はザンブを見たくもないし、話しかけられたくもないんだと思う。

 怖くなんてないさ。ただ、昼休みに行われる決闘を前に、苛立ちとか不快感とか、そんなので精神を乱されたくないだけ。

 ……いや、正直に認めなきゃね。ここまで本気でやったからこそ、負けることが恐ろしくてしょうがない。


 尻尾を巻いて逃げるなら今だ。たった一週間の努力なんて誰でもできる。

 スラマルとコロゾーっていう最高の仲間がいるんだから、影に隠れてゆっくり強くなっていこう。

 決闘なんてしらばっくれて、ザンブに負け犬だ奴隷だと言われようとも、床に頭を擦り付けて謝ればいいだけじゃないか。

 ……なんて、そんなふうに考えられたらどれほど楽なんだろう。いまさら振り上げた拳を下ろすつもりはない。


「ふぅ、勝つぞ!」


 深く吸い込み、肺の中の空気を一息で吐き出す。

 校門を潜り抜けると、さっきまで魔王が住んでいてもおかしくないほど恐ろしい雰囲気だったのに、いつもの学校に戻っている。

 空は青く透き通っているし、お日様は世界を眩しく照らして色を与えている。


 急いで教室へと向かい、扉を開けた瞬間にザンブと目が合った。奴はニンマリと嫌らしい笑みを浮かべている。

 あの反応速度だ。僕が逃げたんじゃないかと教室中に意識を張り巡らせていたに違いない。

 何か言いたげではあったが、すぐに授業が始まった。

 僕は来てやったぞ。人を小馬鹿にした余裕の顔も昼までだ。オークごとぶちのめして、吠え面をかかせてやるから待っていろよ。


 時計の針が回るたび、心臓の鼓動が早くなる。――ドクン、ドクンと、爆発を待つ時限爆弾になった気分だ。

 心を落ち着けようと必死で、授業なんて何も入ってこない。

 机の上に座らせたスラマルとコロゾーが教科書を開いてくれているけど、文字を追う目が滑ってしまう。


 そしてついに、午前の授業の終わりを告げるチャイムが鳴った。

 僕にとっては、試合前のゴングと同じだ。

 視界の端に追いやって、見ないようにしていたザンブ・ヨークシャーがのっしのっしと近づいてくる。

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